No DQ マッチ

 仕事から解放された今年の私のお正月は、1月4日・5日に新日本プロレス東京ドーム大会のテレビ生中継を最初から最後まで見ました。時間に追われている私には珍しいことでした。この2日間の大会を総括した『週刊プロレス 新日本プロレス「WRESTLE KINGDOM 16]決算詳報号』(ベースボールマガジン社)が発売になっています(写真右)。全てがド迫力の試合ばかりでしたが、中でも特に現・IWGP・USヘビー級チャンピオンKENTA(40歳)に、棚橋弘至(たなはしひろし、45歳)が挑戦した選手権試合がすごかった。前日の前哨戦ではKENTAが持ち出した竹刀を奪うと、何度も無我夢中でライバルに叩きつけ、レフリーの制止も耳に入らず反則負けを喫しました。「明日は一生分の反則をやってやる!」と宣言していた棚橋選手が、どんな試合をやるのかが注目の的で、この選手権試合は「ノーDQマッチ」で行われました。アメリカのWWEなどではよく見られる試合形式ですが、日本では珍しいと思います。「ノーDQマッチ」とは、英語のNo Disqualification Matchの略で、Disqualificationというのは「資格剥奪」や「失格となる理由」などの意味を持ちます。「資格剥奪」がNo、つまり資格剥奪することがない試合ということで、反則規定無し、リングアウト決着なしの何でもありな試合形式のことを言います。竹刀で攻撃しようが、ハンマーで攻撃しようが何でもありなため、どちらかというとヒールにとって有利な試合形式とも言えるでしょう。1つだけ条件があると言えば、ピンフォール(両肩をマットにつけて3カウント)はリング内で行うこと。大怪我は必死の試合形式で、間違いなく死闘になります。

▲写真は新日本プロレスより拝借

 棚橋は、翌1月5日東京ドーム大会で、反則裁定なしの「ノーDQマッチ」KENTAに挑戦。開始のゴングと同時に竹刀で殴り合い、KENTAがリング下から持ち出した伝説の権利証の入ったアタッシュケース、パイプ椅子、ドラム缶脚立(ラダー)とありとあらゆる凶器で殴打し続け、序盤から大荒れの試合となりました。棚橋KNETAの頭にギターを叩き込んで、パイプ椅子上へのスリングブレイド、ハイフライフローと非情の攻撃を仕掛けていきます。KENTAにドラム缶をかぶせパイプ椅子で攻撃、顔面から大流血した半失神状態の相手をテーブルに寝かせると、自身は高さ約5メートルの脚立上を一直線に駆け上がり、決死の覚悟でテーブル上へダイブ、ハイフライフローでテーブルごと真っ二つに破壊、衝撃の「テーブル葬」で3カウントを奪い、大乱戦に終止符を打ちました。およそ45歳の人間のすることとは思えないような大胆な捨て身攻撃でした。悲願のベルト奪回には成功したものの、凶器を駆使した乱戦は棚橋自身のレスリング・ポリシーとは大きくかけ離れており、試合直後は放心状態で、苦悩を明かしていました。

 嬉しいとか、悲しいとか、悔しいとか、何の感情も残ってないです……。ただ……ただあるのは虚無感……。虚しいだけ……。なんで俺、プロレスラーになったのかな。プロレスラーである自分を誇りに思いたくて……ああ……はあ……ベルトは返ってきたけど、どっからスタートすればいいのか分からないです。ああ、藤波さんが好きだったなあ……。ああ、武藤さんに憧れたな。で、今、これか……(苦笑)。ああ……レスリングやらなきゃ……。こってこての60分フルタイムドローのレスリングやりたいよ(と涙声で語りながら立ち上がり、天を仰ぎながら鼻をすすりつつ)ふー(と一息つきながら控え室へ)。

 相手のKENTA「悲しい事言うな」とつづった上で、「俺たちは覚悟を持ってプロレスリングやったじゃないか。今日のお前は最高だった。胸張ってくれ」と呼びかけていました。傷だらけのKENTAはこの試合で、顔面から大流血して敗れましたが、病院で検査の結果、「鼻骨骨折、左股関節後方脱臼骨折、背部裂傷縫合術、左環指腱性槌指」と診断され、1月8日の横浜アリーナでのノアvs新日本の全面対抗戦を欠場しました。

 プライドをかなぐり捨ててつかんだベルトの初防衛戦では、再び理想を追求するつもりです。棚橋がかつて憧れたのは、藤波辰爾武藤敬司のような、こてこてのクラシカルなスタイルでした。しかし、2000年代の暗黒期時代の新日本プロレスを立て直すためには、違うレスラー像を築く必要がありました。「アイコンとしてプロレスを広めるためには飛んだり、アピールしたり、派手な技をやって分かりやすいほうが知ってもらうキッカケになるのかなと。追い求めているものより、捨ててきたことのほうが多いんです。でも、SANADAはそこをうまくミックスできてるんですね」と、自身の理想像に近い存在と認めるSANADAを、次期挑戦者に指名しました。

 KENTAとのハードコアマッチは、US王座に強烈な印象を与えたことです。棚橋「あの試合と対極の試合を1回やることで、USヘビーのイメージをよりフレキシブルにしたいんです。こういう路線なんだとイメージを固めるのは今は違うなと。道具を使ったノーDQルールと、己の肉体とプロレスの高度な技術を駆使した緻密な戦いは対極にあると思うので。それで1回魂を浄化しようかと。これは完全に王者からの逆指名ですよ」と指名理由を説明しました。試合結果については次回で。♥♥♥

カテゴリー: 日々の日記 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中