「のぞみ」30周年

▲新幹線の最新車両N700S

 2022年3月14日に、JR東海が、満を持して新幹線「のぞみ」を世に送り出してから30周年を迎えました。今や東海道新幹線の大動脈として定着しましたね。私も移動でいつもお世話になっています。新幹線の何よりの魅力は、「揺れない」ことです。時速300キロ近くで走っているにもかかわらず、トイレに立っても平気で通路を歩くことができます。私がいつも利用している伯備線の特急「やくも」などとはえらい違いですね。じっと立っていることもできませんから。必ずよろけてしまいます。「新幹線開業50周年特別企画」として、交通新聞社『全国時刻表』(2014年)の9月号・10月号に、最近お亡くなりになったトラベルミステリーの西村京太郎先生が、「あの時の新幹線は」(前編・後編)と題して寄稿しておられます(西村先生の資料は全部取ってあるんです。「西村鉄」の八幡らしいでしょ?)。その中でも「揺れない」ことを絶賛しておられました。

 もう一つの新幹線の素晴らしさは、揺れないことである。若者は、運動神経がいいから、あまり感じないだろうが、これから老人が増えれば、これがやたらに有り難いのだ。地方を走る私鉄や第三セクターの列車に乗ると、昔から列車はこんなに揺れるものだったのだと、再確認することになる。それでも若者は、平気で揺れる通路を歩けるが、老人はつらい。実は、これは困った問題で、今後は、地方が当然老人が多くなるから、地方の鉄道ほど、揺れない方がいいのである。どうだろう。地方の鉄道は無理して150キロに挑まずにスピードをおそくして、揺れを少なくしたらと考えるのだが。とにかく、新幹線に乗りかえたとたん、私でも、こんなに揺れないのかと感動してしまうのである。スピードを高めるのも結構だが、300キロで走行していても、老人が平気で通路を歩けることにも、熱心であってほしい。 (西村京太郎)

▲N700Sの車内

 新幹線の車両はただ速ければいいというものではありません。騒音の抑制、乗り心地の向上など、クリアしなければならない問題が山ほどあります。加えて東海道新幹線は、ほかの新幹線に比べるとカーブが多く、ATC(自動列車制御装置)などを含め、地上設備の改修も必要不可欠です。最高速度は今では285キロに達し、東京―新大阪間は最短2時間21分となり、1時間で12本という通勤電車並みの本数となっています。世界に類を見ないダイヤの進化の陰には、幾度に渡る車両更新から、車内清掃の効率化まで、秒単位に及ぶ時間短縮の積み重ねがありました。新幹線の大雑把な歴史を振り返っておくと次の様になります。

0系(1964年~時速210キロ)⇒100系(1985年~2階建て車両も)⇒300系(1992年~「のぞみ」時速270キロ「名古屋飛ばし」で話題に)⇒500系(1997年~時速300キロ)⇒700系(1999年~速さと快適さを両立)⇒N700系(2007年~車体傾斜システム)⇒N700A系(2013年安全面に進化)⇒N700S系(2020年~)

 「のぞみ」という名前の由来はご存じでしょうか?東海道新幹線最速列車の愛称については、「お客様に親しみを持っていただけるような、聞きやすく、分かりやすい名称を前提」(JR東海)として、学識経験者や社内関係者をメンバーとする選考委員会を開きました。最終的に「きぼう」「たいよう」「つばめ」などが残ると、学識経験者として招かれた作家の阿川佐和子さんが、父で同じく作家の阿川弘之さんの言葉を披露しました。「昔から日本の列車名には大和言葉が使われている、と父が申しておりました。<きぼう>を大和言葉にすると、<のぞみ>ですね」(「読売新聞」朝刊、2010年6月17日) これを受け、「300系が未来にかける当社の夢と大きな期待を担ってデビューする列車であり、お客様にとっても夢と希望に満ちた列車となるよう」(JR東海)という願いを込め、阿川佐和子さんが提案した「のぞみ」を受け入れる形で決定したのです。

 2007年7月1日、N700系がデビュー。半径2500メートルのカーブでも時速270kmで通過できるよう、車体傾斜システムを採用しました。車体をたった1度傾けるだけで、さらなるスピードアップが実現し、東京―新大阪間は最速2時間25分の運転となりました。さらに山陽新幹線内は、時速300km運転も可能になりました。

 2013年2月8日、N700A(AはAdvanced」の頭文字)がデビュー。最高速度を時速285kmに引き上げました。その後、2017年3月4日のダイヤ改正で、すべての「のぞみ」「ひかり」の定期列車をN700Aに統一、2020年3月14日のダイヤ改正で、東海道新幹線の全列車をN700Aに統一することで、時速285km運転が可能になり、1時間あたり最大12本が設定できるようになったのです。同年7月1日には、最高性能を持つN700S(SはSupreme」の頭文字)がデビューしました。私はこの最新車両の「のぞみ」に3回乗りましたが、最高に静かで快適です。⇒私の紹介はコチラです

 静かな車窓からの「美しい眺め」新幹線の魅力の一つです。私はいつも東京へ行く時は左側の窓際を、帰りは右側の窓際の席を取ることにしています。「新富士駅」付近から眺められる富士山の景色が最高なんです。今日もそびえ立つ富士山の美しい山肌を見ることができました。

▲2022年2月25日八幡撮影

 JR東海は「のぞみ」のデビュー以降、16両編成の定員を1,323人に統一して、ビジネス客向けに利用しやすい環境を整備していきます。輸送人員は1992年度の1億3000万人から1億7000万人前後に増加しました。このうち「のぞみ」は、運行本数の約6割を占めています。現在、東海道新幹線における“最大のゆとり設備”といえるのは、コンセントでしょうか。700系の増備途中から一部の席に設置し、N700系ではグリーン車全席と普通車の窓側席、最前部と最後部の全座席に拡大、最新のN700Sでは全席装備となりました。コンセント設置当初はノートパソコンの充電に重宝していましたが、現在はスマートフォンの充電で使う乗客が多く、東京から京都に着くころにはフル充電も容易になっています。

 「のぞみ」が登場して30年。これからも大都市同士を結ぶ大動脈、人々の夢と希望と未来への架け橋、旅の思い出を作る東海道新幹線のエース列車として、光り輝き続けることでしょう。♥♥♥

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