マット・シューメーカー

◎私、巨人の味方です!

 巨人の新助っ人・先発のマット・シューメーカー投手(35歳)が、変化球を低めに集める変幻自在の投球で中日打線を翻弄しました。180センチ、102キロの男は打っても6回に先制点を呼び込む右前打を披露。これが自身にとって米球界を含めてプロ初安打となり、その後、暴投で先制のホームを踏みました。本職の投球では7回2死まで完全試合ペース。来日初勝利を初完投・初完封で飾りました。自信のあるスプリットなど変化球を駆使して、9回122球を投げきり、散発2安打無四球、3者連続を含む8奪三振の快投でした。

 今季、ツインズから新加入したシューメーカー投手は、2013年にエンゼルスでメジャーデビュー。14年には16勝をマークするなどメジャーで通算46勝を挙げたバリバリの大リーガー投手です。エンゼルスでは18年、大谷翔平ともチームメートで「日本で楽しんで」とアドバイスを受けて来日しました。来日初登板初先発となった4月9日のヤクルト戦では、7回途中5安打2失点(自責1)と好投も打線の援護に恵まれず初勝利ならず。2度目の先発となった4月16日の阪神戦(甲子園)も、6回5安打2失点(自責1)と好投しましたが、またも打線の援護に恵まれずに来日初勝利はお預けとなっていました。

▲エンゼルス時代のシューメーカー投手  ヒゲもじゃもじゃで別人のよう

 獲得にあたって巨人の大塚淳弘球団副代表は、「変化球が多彩」であることを特徴として挙げていました。主な球種は4シーム、スプリット、シンカー、スライダー、カーブの4つ。4シームの平均球速は145キロ程度とあまり速くない一方で、メインピッチのスプリットは特に威力が高い。2019〜2020年は被打率が1割台、空振りも数多く奪うなどまさに決め球として機能していて、34万人超のフォロワーを持つ投球分析家「Pitching Ninja」ことロブ・フリードマンいわく「85マイルのダーティ・スプリッター」。これにシンカーやスライダーを交えてゴロを打たせるスタイルで、吉川尚輝坂本勇人の二遊間を中心に、内野守備が安定している巨人に上手くハマれば好成績を残せるでしょう。ただ気がかりなのは、2020年は28.2回で8被弾、昨年は50.1回で15被弾と、近年急激に一発病の傾向が出ていることでした。それが不振の要因にもなっており、大塚副代表が求める「2ケタ勝てる投手」になれるかは、この点に左右されると言っても過言ではないでしょう。シューメーカーは、日本や日本人と縁の深い選手でもあります。リーグ4位の16勝を挙げて、新人王投票2位に入った2014年オフには日米野球で来日。1試合目で前田健太(現ツインズ)、2試合目は大谷翔平(現エンゼルス)と、後のメジャーで活躍する2人と投げ合い、計10イニングで自責点2と好投しています。しかも、大谷とは2018年にエンジェルスで、前田とは昨年のツインズでチームメイトにもなっています。また、山口俊とは2020年にブルージェイズでともに戦った間柄です。日本人野手とは同じチームになったことはないが、筒香嘉智(パイレーツ)には2020年に逆転3ランを打たれたこともあります。とはいえ通算7打席で安打はこの1本のみと、苦手ではありません。また、青木宣親(ヤクルト)とは16打席で打率.0.71と抑え込んでいます。

 メジャーで実績を残した一方、実は苦労人でもあるんです。2008年ドラフト外でエンジェルスと契約。6年間はマイナー暮らしが続き、2014年にデビューした時は、27歳の誕生日の1週間前でした。2016年終盤には、105マイルの打球が頭を直撃し、頭蓋骨骨折の重傷を負ったこともあります。V奪回に懸ける巨人にとって、技術だけでなく精神面でも投手陣を牽引することが期待されます。ちなみに、大リーグ時代のシューメーカーのトレードマークは、まるでモップのような立派なアゴヒゲ。マイナー時代には、彼のあごヒゲを模したつけヒゲがグッズとして配布されたこともあるくらいです。巨人には「ヒゲ禁止」のルールがあるので、今はヒゲを剃って別人のようです。

 試合後、敵地でヒーローインタビューに臨んだシューメーカーは、「選手冥利につきます。選手として野球をやっていると、大勢のお客さんの前で、特に素晴らしいジャイアンツのファンの前で、こうした接戦、投手戦をできて、なおかつ伝統あるチームのユニホームを着て勝てたというのはとても光栄なことです。ありがとうございます」と第一声。自身の投球内容について聞かれると「長いシーズン、最終的に優勝するのが目標ですけども、そうした長いシーズンの中できょうというのは1試合に過ぎないかもしれませんけど、それぞれの選手がそれぞれの役割、ジグソーパズルのピースとなって、みんなで一つの絵を完成させて勝てたというのは、とてもうれしく思います」と続けました。

▲来日初勝利・初完封をあげたマット・シューメーカー投手

 
 “3度目の正直”となったこの日は、初回から快調にイニングを重ね、5回まで完全投球。だが、この日も途中まで打線の援護がなく0―0のまま迎えた6回でした。無死一塁で入った打席でシューメーカー自ら相手先発左腕・松葉の3球目カットボールを右前打。来日6打席目で初安打を放ちました。2番手右腕・祖父江の暴投により自ら先制のホームを踏みました。メジャー通算46勝のシューメーカーは米国時代にメジャーで8打席6打数無安打、マイナーでも7打席6打数無安打で、来日6打席目の初安打は日米通算でも初安打となりました。偉業達成まであと7人となった7回2死からA・マルティネスに左翼線二塁打を打たれて大記録は逃しましたが、気落ちせずに続く8回は3者連続三振。無失点のまま9回を投げ切り完封勝利をあげました。ゾーンに入っていたので、135球までだったら9回も行かせるつもりだった、と桑田チーフ投手コーチは語りました。

 完全試合への意識については「ピッチャーとしてはノーヒットというのはあまり意識していないんですけれども、当然自分でも分かっていますし。ただ、ノーヒットの間もやることは一緒で、目の前のバッターを1人1人取っていくということを考えていました」とし、「1本目を許した後も、ここで仕切り直してまた1人1人目の前を取っていこうと、そういうふうに思っていました」と冷静に振り返ったシューメーカー。来日初安打についても「先ほど言ったように選手それぞれが自分の役割を果たす。自分もバッターとして打席に立った時はバッターとしての役割を果たせたと思う。それぞれの選手がやることをやって、初勝利だけでなく、最初のヒットも同時に達成できてうれしいです」とどこまでも冷静でした。それにしても印象的だったのは、イニング合間のベンチでは、修行僧のようにフードを被って瞑想に集中していたのに、試合後のヒーローインタビューでは饒舌に派手な身振り手振りを交えて、陽気に語っていたギャップに引き込まれました。

 それでも、完封勝利はエンゼルス時代の2016年7月18日(米国時間)に行われたホワイトソックス戦以来自身2度目です。最後に全国の巨人ファンへメッセージを求められると、「この伝統あるチームのユニホームを着てプレーするのはとても楽しいです。そして、ジャイアンツファンの方がたくさん熱心に応援してくれるので、私たちの目標である優勝するにあたって皆さんの力が間違いなく必要なので、引き続き応援よろしくお願いします」とし、「アリガトウゴザイマス!」と、最後は日本語で締めくくりました。巨人の練習参加時には、「靴屋じゃないよ」とユーモアを交えて自己紹介したそうです。日本食にも適応していますが、カレーだけは苦手だそうですよ。♥♥♥

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