奥へ奥へと進みなさい

 1300年もの歴史をもつ春日大社(奈良市)で、長年権宮司(ごんぐうじ)を務められた岡本彰夫(おかもとあきお)先生。日本の文化・しきたりについての深い知識と、神さまに使える神職としての長い経験に裏打ちされたわかりやすく優しいことばで、多くのファンを持ちます。岡本先生がつづる東海道新幹線の車内誌「ひととき」の連載エッセイ「奈良その奥から」を中心に、書下ろしを含めて48の掌編を収録したのが『日本人よ、かくあれ』(ウェッジ、2020年)でした。日本を憂う話、神さまと人とのふれあいの話、奈良での日々の話……どれも日本の未来に携えたい話ばかりです。あわせて奈良を舞台に命を削りながら活躍しておられる像作家、保山耕一(ほざんこういち)さん(⇒私の紹介記事はコチラです)の情感あふれる風景写真を多数収めています。命懸けで奈良を撮り続けてこられた映像作家・保山耕一さんの素晴らしい作品が、岡本先生の言葉にぴたりと寄り添って、高い品格に満たされた本書を是非とも日本人全員にお読みいただきたいと思います。弱者への慈しみと強者への戒めなど「箴言」に満ちた名著です。さだまさしさんが、「日本の魂がここにある。日本人全てに読んで欲しい、心豊かな現代の『五輪書』です」と推薦の言葉を寄せ、コンサートでも勧めておられました。さだまさしさんの書評は⇒コチラです

 岡本先生は、広島県福山市の医師会に依頼され、講演に赴きます。和気藹々の裡に終了し、遅い夕食を頂戴して、心地よく宿の部屋へ退散しようとした際、二次会のお誘いを受け、地下のバーへと伺いました。何でもここのバーテンダーは女性で、全国の協議会で金賞を得た人らしい。立ち居振る舞いといい、当を得た説明の内容といい、申し分ない。謝意を述べ、二言三言と言葉を交すうちにどういう経緯でそうなったのかは分からないが、突然彼女が嘆き出します。金賞は頂けるが、どうしても最高位のグランプリには至らない。二日したら京都で大会があるので、心が落ち着かないのだという。岡本先生は、古歌を送り、こんなアドバイスをしました。つまり賞を得られねばどうしよう、もしも落ちたら恥をかく、福山へ帰ってどう言い訳をしようなどと考えるから、萎縮して実力を出せないだけなのだ。だから、この歌をしっかりと胸に刻んで臨みなさい。そして、上へ上へを目指すより、奥へ奥へと進みなさい。これとこれを調合したら、このカクテルが出来るという事にとどまらず、お客さんが寂しそうなら楽しくなるように、悲しそうなら嬉しくなるようなバーテンダーになって下さい、と告げて別れました。二日経って彼女から電話が入り、見事最高賞を授かったという。しかもシェーカーを振っている姿が素晴らしいとの評価を受けたらしい。心さえ変われば、人生は回転して行くものである、と書いておられます。

 「上へ上へを目指すより、奥へ奥へと進みなさい」。いい言葉ですね。本当に大切なものは、いつも奥にあると私たちは知っているのに、ついつい上ばかり目指してしまうのです。私は英語の勉強に関しても、生徒たちにこの言葉を贈っています。答えさえあっていればそれでいい、ではなく、なぜそうなるのかを自分で納得のいくまで徹底的に突き詰める。一つの英文を読むのにも、深く深く言外の意味まで踏み込もうとする姿勢が力をつけてくれます。大学へ行っても、社会人になっても、一つのことを奥へ奥へと探求する姿勢を持ちたいですね。

 思い起こされる生徒がいます。松江北高の卒業生、小峰瞳子(こみねとうこ)さんの高校時代を紹介しましょう。東京大学の薬学部⇒博士課程に進んだ生徒です。在学中は、彼女はとてつもなく英語ができ、「ヘルンをたたえる青少年スピーチコンテスト」で優勝し、駿台模試でも全国一位!を取り、センター試験(筆記・リスニング)も満点を取った極めて優秀な生徒でした。何よりも学校の授業を大切にして、あれぐらい英語のできた生徒を、他に八幡は知りません。模試や定期考査も常に100点満点でしたが、彼女の提出する「テスト直しノート」は真っ赤になっていました。自分で納得のいくまで徹底的に見直した様子がよく分かるノートでした。彼女なりに奥へ奥へと進んだのです。見習いたいものです。♥♥♥

▲センター試験で筆記・リスニング共に満点を取った卒業生小峰瞳子さん(東京大学薬学部)と

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