仕事と趣味の違い

 「仕事」「趣味」の違いについて、スイス人のカール・ヒルティが、一所懸命にやった途端に面白くなるのが「仕事」で、やっているうちに飽きてくるのが「趣味」なのだと言っています。まさにこれが判別式だと思います。

 例えば、私は若い頃、将棋が好きでよくやっていました。将棋本をむさぼり読んで、相手を見つけては対局して、コンピューター将棋ソフトにものぼせてやっていました。学園祭の将棋大会に出場したり、定期考査の期間中には、好きな先生方が集まってトーナメント大会をしょっちゅう開催していました。けれども、いくら好きだと言っても、3日も4日も続けてやっているとさすがに飽きてしまいます。また、40代以降はマジックにのぼせて、作品を大量にアメリカから取り寄せては演じていました。解説動画や説明書と悪戦苦闘しながら手順を覚えていくのは、何よりも楽しい経験でした。でもいくら面白いからと言って、それを1週間ぶっ続けでやれるかというと、ちょっと無理ですね。つまり、私にとっては、将棋もマジックも「趣味」以外の何物でもなかったということなんです。

 ところがこれに対して、英語のほうはどうかというと、二ヶ月でも三ヶ月でも、三年でも五年でも、あるいは四十年以上も平気でやってこれました。辞書一つ引くだけでも、その奥深さに感動したものです。そしてやっているうちにどんどん面白くなっていって、さらに勉強しようという意欲が湧いてきました。故・竹林 滋先生(東京外国語大学名誉教授)のお導きで、若い頃から辞典の編集にも携わらせてもらい、英語への興味・関心はますます深いものになっていきました。英語を勉強しない人には絶対に分からないであろう独特の楽しみ、言うに言われぬ喜びを味わうようになっていきました。最近は、その成果をさまざまな形で、全国の先生方や若い先生方に提供して、ご恩返しをする毎日です。これこそが、ヒルティの言う「仕事」なんです。

 ある事に一所懸命になって自分を沈潜させてみたり、身も心もくたくたになるくらいに全力投球をすることで、面白さが出てくるもの、それが「仕事」なんです。本当の「仕事」と言えるようなものを持ったことがない人は、このような面白さ・喜びは味わったことがないはずです。職業を次々と変えて転々とする人がいます。彼らは何かをやってはすぐに飽きて面白くなくなり、また次のことをやり、また飽きて次へということを繰り返していきます。これでは「仕事」をしているとは言えない、とヒルティは言っているのです。

 「仕事」を楽しみとして感じることができるのは、精一杯仕事をやっているだからこそです。嫌な思いをしたからと言ってすぐに辞めてしまうようでは、決してこれら無上の楽しみは味わうことができないでしょう。辞めてしまうのは、その人が「趣味」としてしかそのことに関わっていないということです。「石の上にも三年」という古い諺がありますが、それくらい辛抱しなければ何事も報われることはありません。♥♥♥

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