追悼・坂井泉水さん

 2007年5月27日、今から15年前の今日、授業から帰ってきたばかりの私のパソコンに「先生、大変です。坂井泉水さんが亡くなりました」と同僚からメールが入っていてビックリ仰天。彼女の歌が好きだっただけに大ショックでした。坂井泉水さんは、病気治療(子宮頸ガン)で闘病生活を送り、入院先の病院の手すりに乗っていて3メートル下に転落、病棟脇の非常階段で倒れて亡くなっているのが発見されました。脳挫傷でした。40歳の若さでした。今日は命日ですので、坂井さんの活動を振り返ってみたいと思います。

▲東京での追悼展にも行ってきた。「Zard Gallery」

 坂井泉水さんの活動の集大成『ZARD CD&DVD COLLECTION 〜永遠のスタンダード・ナンバー〜』(アシェット)が、2017年2月8日に創刊され67号まで発刊されました。私は全部揃えています。2020年に「NIKKEIプラス」から発表された「10代から60代に聞いた、今こそ聴きたい、元気になれる歌15選」では、ZARD「負けないで」が総合第2位にランクされるなど、不朽の名曲の数々(16年間の活動で155曲)は、今もなお世代を超えて色あせること無く受け継がれています。16年間の歌手生活の中でテレビ出演はたったの7回です。「テレビに出なかったのは、彼女が極度に緊張してしまい、良さが伝わらないと考えたから。それに何より、曲作りに力を傾けていたから」長戸大幸プロデューサー。コンサート活動もほとんどしていません。それなのになぜにこんなにも長きにわたり、ZARDの楽曲は愛され続けるのでしょうか?

▲東京・町田市で開催された「心に響くことば展」

 その答えは2004年のライブツアーのMCで坂井さんが語った有名な言葉に見ることができます。「私はいつも本当に言葉を詞を大切にしてきました。音楽でそれが伝わればいいなと願っています」I have always treasured words from the bottom of my heart. I would like to send my messages to others through my music.普通の人の傍らにある喜びや悲しみを自分らしい言葉で、そして音楽を通して表現していきたいというのが彼女の思いでした。そのことは、2020年にNHKBSプレミアムで放送され大反響を呼んだ、ZARDスペシャルドキュメンタリー番組「ZARDよ永遠なれ 坂井泉水の歌はこう生まれた」でより一層はっきりとしました。この番組はデビュー30周年となる2021年2月10日に、特別編集版でパッケージ化されて発売されました。ぜひご覧いただきたい貴重な映像です。また昨年の6月に、東京都・町田市の町田市民文学館」で開催された「ZARD坂井泉水 心に響くことば展」に史上最大規模で展示された直筆歌詞や資料でもそのことははっきりと感じることができました。もちろん「色鮮やかなメロディー」「こだわり抜いたサウンド構成」「唯一無二の歌声」「心くすぐられるビジュアル」(=美人)など人気の秘密はいろいろあるのでしょうが、わたしが一番の魅力と考えるのは、やはり坂井さんが大切にしてきたと公言している「歌詞」です。一切の妥協を許さず、レコーディングでは20回でも30回でも歌い直したといいます。

 彼女の楽曲で最も有名なものは、やはり「負けないで」でしょうね。2014年から高等学校英語の教科書「MY WAY English Communication Ⅱ」(三省堂)にも採用され、初年度でも全国約400の高等学校で採用されました。1995年1月の阪神淡路大震災や、2011年3月の東日本大震災の際に多くの人々を励ましたこと、1994年には選抜高等学校野球大会の入場行進曲に採用されたこと、坂井さんが言葉にこだわり、制作に全精力を注いだことなどが、何度も何度も書き直された直筆の歌詞とともに伝えられています。「約20年間も色あせることなく、今もって若者の間で、“人生の伴奏歌”として歌い継がれてきています」というのが採用理由だったそうですが、実は、作った坂井さん本人の意図とは全く異なるものでした。歌詞をじっくりと読んでみればはっきりしますが、「男女の恋愛の世界観」を詠んだ歌であることが一目瞭然です。「事情があって遠く離れてしまった女性の『失恋の歌』」寺尾 宏ディレクター)です。元カレを遠くから見つめて応援する女性の心を描いています。彼女の多くの楽曲に出てくる女性像はほぼ一貫しているんです。その失恋ソングがなぜ「応援歌」に定着してしまったのか、に関しては私なりの推論をコチラに書いていますので、興味のある方はご覧ください。

 私は数ある彼女の名曲の中でも、「forever you」に強い思い入れを持っています。坂井さんの体験そのものが歌詞のなかに織り込まれているのです。

▲『ZARD 30th Anniversary Photo & Poetry Collection THE WAY』(ミュージックフリークマガジン、2021年5月)


   Forever you       ZARD

                 作詞 坂井泉水  作曲 織田哲郎   

若い頃は人一倍好奇心が強くて
いろんな周囲(まわり)の人や家族に迷惑ばかりかけてた
手さぐりで夢を探していた あの日
自分が将来(あした)どんな風になるのかわからなくて ただ
前に進むことばかり考えていた Dear old days

もう泣かないで やっと 夢が叶った
ずっと…forever you
そう あせらずに そう 急がずに 大人になりたい

たくさん失敗もしたけど いつもそんな時
優しく親切だった人達の笑顔が浮かんだ 涙も忘れた
自分で選んだ道だから

もう迷わない 今が幸せだから
ずっと…forever you
そう あせらずに そう 急がずに 愛したいの

それは暖かいあなたに出逢うまでの試練
過去(むかし)に後悔なんてしてない
またとない 二度と来ない 私の青春だから

So stay with me my love forever


 この曲は、ZARDの1995年発売のアルバム『forever you』のタイトルにもなったバラード曲です。主人公の嘘偽りのない気持ちを切々と歌い上げた名曲ですね。主人公が過去に思っていたこと、迷っていた体験は、全て間違いじゃない、過去を否定しない、後悔はない、という内容の歌詞がとても新鮮に響きました。実は、この「forever you」という曲が制作される少し前に、坂井泉水さんのZARD以前のキャリア(グラビアモデル、レースクイーン)についての、あることないことの誹謗中傷記事が、新聞や週刊誌に書かれて、彼女はひどく傷ついていました。坂井さんは、ZARDになる前の自分の仕事については、キャリアの一部だとそのまま受け入れて、当時の仕事を取ってきてくれたスタッフたちにも、感謝の気持ちを忘れていませんでした。ところが、事実ではないデタラメ記事がスポーツ紙に大きな見出しで踊ったときには、涙をこらえきれませんでした。ZARDのスタッフたちに泣き顔を見せたくなかったのでしょう、しばらく化粧室から出てきませんでした。スタッフたちにただ一度だけ見せた、坂井さんの悲しみの涙でした。坂井さんの育ての親で、プロデューサーの、長戸大幸さんが当時を回想して、この「forever you」という曲の誕生秘話を明かしています。これは坂井さんの自伝的な歌詞でもあるんですね。

 坂井はね、記事の内容が事実であれば、グラビアの仕事を書かれても、過去のセクシーな水着の写真が掲載されても、堂々としていました。自分が納得して引き受けた仕事だからまったく気にしていないという態度です。そういう仕事を取ってきてくれたかつての事務所のスタッフに感謝していたほどです。ただね、僕たちはグラビアをやっていたことを興味本位で記事にされることは嫌でしたよ。だから、かつての自分を後悔していないなら、そういう歌詞を書いて歌ってくれ、と坂井に言いました。それでつくったのが『Forever you』という曲です。歌詞には若いころの自分を悔やんでいないこと、夢を探していたこと、手を差し伸べてくれた人への感謝がつづられています。  ―『永遠 君と僕との間に ZARD』(幻冬舎、2019年)

   2004年に敢行されたZARD初にして唯一の全国ライブツアー「What a beautiful moment tour」が、47都道府県の映画館で上映されました。⇒私のレポートはコチラです  私は松江イオンの「松江東宝」でグッズも求めてきました(クリアファイル2種類、ブックマーク)。やはり劇場の音響で聴くと、坂井さんの会場に響く力強い歌声や、バンドの迫力ある演奏が臨場感をもって伝わってきます。♥♥♥

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