水戸岡鋭治先生とN700Sかもめ

 2022年9月23日に部分開業する九州新幹線西九州ルート(長崎新幹線)を走る新型車両「N700Sかもめ」JR九州から公開されました。5月10日から走行試験も始まっています(~6月16日)。西九州新幹線はどの新幹線にも接続しない「武雄温泉駅」「長崎駅」間のみの部分開業です。今後の延伸については国・長崎県・JR九州と、佐賀県との間でまだ意見がまとまっていませんので、とりあえずは博多駅から在来線特急「リレーかもめ」が走り、「武雄温泉駅」の同じホームで在来線特急から西九州新幹線を乗り継ぐ「リレー方式」となります。鉄道雑誌も相次いで、この新型新幹線「N700Sかもめ」を取り上げています(写真下)。西九州新幹線は武雄温泉〜長崎間(66㎞)を速達列車で27分程度、各駅停車は33分程度で運行する予定です。博多―長崎間は現在より約30分短い約1時間20分で結ばれます。今回公開された「N700Sかもめ」は6両4編成が製造され、最高時速260kmで走行します。「それぞれのまちの思いを受け止め、地元の方々や遠くから来てもらう方々に満足な新幹線を提供するため、(開業日の)9月23日に向けて進めていきたい」と、小宮洋二JR九州社長は述べました。

▲「N700Sかもめ」を取り上げる鉄道雑誌

 東海道・山陽新幹線で運転されているN700Sをベースに西九州新幹線用に改良したものです。シンボルマークは、三つの輪に飛行するカモメの姿を重ねました。指定席は通路を挟んで2列ずつで、1~3号車のシートはそれぞれ菊大柄や獅子柄、唐草と異なるデザインにしました。

▲デザイナー水戸岡鋭治先生

 外装には、青柳俊彦社長が揮毫(きごう)した列車名「かもめ」の文字をひらがなで入れ、企業カラーの赤を帯状に引いています。デザインは豪華寝台観光列車「ななつ星」と同じ、工業デザイナーの水戸岡鋭治先生が手がけました。水戸岡鋭治先生といえば、JR九州新幹線800系「つばめ」、特急車両の885系「かもめ」特急「ソニック」「ゆふいんの森」号などJR九州をはじめ、日本全国であらゆる名列車のデザインを手掛けておられます。私は水戸岡先生の大ファンですから、先生のデザインされた全国の鉄道車両にせっせと乗っています(最近では、「丹後の海」「丹後あおまつ」「丹後あかまつ」「チャギントン電車」)。今秋開通したら、すぐ乗りに行ってこようと思っています。

 「JR九州の車両はとがったものだったが、『かもめ』は大人で優しいホテルのようなデザイン」と解説しています。これまでたくさんのJR九州の車両デザインを手かげた水戸岡先生ですが、新幹線車両はとにかく制約との戦いでした。800系の時にはいちからデザインしましたが、今回はJR東海のN700Sを借りて、どこまで変えられるか、というのがテーマでした。それは仕方のない話で、何百両も作るJR東海と違い、JR九州では開業までに24両しか作らないのですから。新幹線は安全快適にそして高速に、静かに走る性能を実現するべく、極限までブラッシュアップされたサラブレッドのような車両設計になっていることから、「少しでもなにか変えようとすると、新幹線のルール、重量、コストの全部がオーバーしてしまう。ですが、ひとつひとつ丁寧に仕事をすることでオンリーワンの車両を目指しました」と話しました。JR九州の青柳俊彦代表取締役社長「車体の基本となる部分にも改良を加えようとすると非常に大変な作業になることから、表面的な箇所にこだわりを持った」と語ります。「JR東海が完成させたN700Sという車両に手を加えていくというのは、難しい仕事でしたが、デザイナーとしては非常に大切な仕事でもありました。数々の制約の中、最後の1%のデザインをどう行っていくか。ここにこだわりました。また、ご利用いただいたお客さまがどこで記念写真を撮ってもすぐに『かもめ』だ、ということがわかるよう、至る所に『かもめ』という文字をデザインしています。制約の中でも表面的箇所やテキスタイルデザインを丁寧に行っていくことで、オリジナリティは十分に出るし、オンリーワンは表現できるはずです。西九州新幹線の乗車時間は短いですが、それでもまた乗りたい、そう思っていただける車両になったと思っています」と、水戸岡先生はN700Sへの強い思いを語りました。『新幹線EX』春号 Vol.63(イカロス出版、2022年)は、その「かもめ」誕生の特集でした(写真下)。

 唐池会長と雑談している時には、最初真っ黒(写真上)と真っ赤の2つのパターンを話したそうです。黒は視認性が低いという意見がありましたが、だいたい新幹線は踏切のない、しかも営業時間帯には人が立ち入らない線路上を走るんだから、黒でもいいじゃないか、と考えましたが、真っ黒がいい、なんて言う人はJR九州には唐池会長しかいないでしょう〔笑〕。結局、白・赤のものに決まりました。かもめの白は純白です。今のところ白はN9.5(日塗規格)が一番明るい白です。「かもめ」はN9.4です。他の新幹線よりも真っ白です。現場では汚れが目立ちすぎ、ホコリがついて雨が降って乾くと、汚れの線が出てしまいます。ここら辺がJRの腕の見せ所です。JR九州のメンテナンス技術を表現するバロメーターとしての白ということです。

 800系の時には、車内に絵があったり、工芸品があったりと、こだわった飾り付けがなされていましたが、予算の限られている「N700Sかもめ」では、叶いませんでした。水戸岡先生は自分たちで絵を貼っちゃおうか、小さな絵をたくさん車内に貼って車内でドーンデザイン研究所の展覧会をやりたい〔笑〕、とおっしゃっておられました。

 「かもめ」車体下部には、JR九州のコーポレートカラーである「赤」のラインを大胆に配色。見慣れたN700Sの印象が一気に変わります。車体横の「かもめ」の文字。筆文字でありながらセンスのいいフォントは、外国人受けしそうなデザインです。これは青柳社長の書かれた文字です。800系の時は「九州旅客鉄道」と落款印を押しましたが、今回は『青柳俊彦』の落款印です。個人の落款印が押してある車両なんて、世界中の鉄道どこを見てもありません〔笑〕。そして車体各所に散りばめられたオシャレな英文字。書体のバランスや字間スペースには洗練されたグラフィックデザイン的な要素がふんだんに取りれられています。観光客のために車両のそこらじゅうにロゴを配置するのは水戸岡流です(⇒私の解説コチラをお読みください)。そして車両前面をご覧ください!自動車に詳しくない方でも一目であの車!?と思ったのではないでしょうか?そう、アルファロメオです。アルファロメオの特徴的なあの逆三角形グリルデザインが「かもめ」に施されています。ヘッドライトもオマージュされているような…?水戸岡鋭治先生は、鉄道デザインのアイデアに自動車のデザインを参考にすることがある、とおっしゃられています。「883系」はイタリアのデザイナー・マルチェロ・ガンディーニのトラックからヒントを得られたそうです。

 水戸岡先生は車両が完成すると、まずは子どもたちを招待します。そして車両に入った瞬間に、子どもたちが車内を喜んで走り回る車両はだいたいヒットするんだそうです。子どもたちが喜ぶ姿を見て、はじめて「これはいけるかも!」と思うんだそうです。子どもたちの感性・知性・情熱を刺激し、豊かな感動経験をさせてあげることが、その子の将来を決めていくのだ、というのが水戸岡先生の信念なのです。♥♥♥

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