足立美術館19年連続日本一に!

 横山大観(120点所蔵)らの近代日本画コレクションで知られる「足立美術館」(島根県安来市、入館料2,300円)が、米国の日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」の2021年の日本庭園ランキングで1位に選ばれました。2003年のランキング開始から19年連続の快挙です。19年ですよ!国内外の専門家が、日本にある約1,000カ所の庭園を、庭園の質、建物との調和、利用者へのホスピタリティなどを基準に総合評価したものです。2位は桂離宮(京都市)、3位は山本亭(東京・葛飾)、4位は皆美館(松江市)、5位は御所西・京都平安ホテル(京都市)でした。例年の発表は1月頃ですが、今年はコロナ禍の影響で遅れたようです。

 背後の山を「借景」に、人工の滝を組み込んだ庭園は自然と技術の融和が特徴です。19年連続日本一を支えるのは、創設者、足立全康(あだちぜんこう)氏(1899~1990年)の「庭園もまた一幅の絵画である」という信念だといいます。借景の山々を含めた庭園の総面積が約16万5千平方メートルを誇る「足立美術館」は、JR安来駅からバスで約20分の郊外にあります(無料のシャトルバスあり)。 「日本一に選ばれるために庭園を管理しているわけではありませんが、記録が途絶えずほっとしました」と、同館広報係長の菅野綾夏(かんのあやか)さんは言います。彼女は松江北高で私が担任した教え子です。教え子が立派になったのを見るのは嬉しいものです。私はちょっと疲れると、ここへ来て、椅子に座り庭園をボーッと眺めながら心を癒やすのが習慣になっています。

  同館の日本庭園は、昭和43年に地元の実業家、足立全康氏が造園に着手しました。当初は著名な造園家に設計を依頼していたものの、「自分の理想の庭園をつくりたい」と、後に自ら庭師を指揮。約15年をかけ、現在の庭園の基本形を作り上げたのです。枯山水庭や苔(こけ)庭、白砂青松庭、横山大観の絵をイメージした人工の滝「亀鶴の滝」などで構成されます。 「足立美術館」には、美術館としては珍しく庭園部が置かれ、専属の庭師8人が在籍しています。「開館前は落ち葉一つも残さない。全康さんの、一つ一つの積み重ねが大事だという言葉を守っている」 と庭園部長の小林伸彦さん。同館は昭和45年に開館してから一日も休館したことがありません。365日、喫茶部門など庭園部以外の職員も総出で、庭を竹ぼうきで清めることから一日が始まります。雨の日にもカッパを着て掃除をします。徹底した「おもてなし」の姿勢ですね。庭師は午前7時半に出勤し、開館前の手入れを1時間。開館中も、庭木の剪定や植え替えなどで休む間もありません。庭園部は最年長の小林さんを筆頭に、20代まで幅広い年代で庭の手入れにあたります。庭師は経験者やコンクールの入賞者らエリートをスカウトするのではなく、地元の農林高校から採用し、いちから「足立メソッド」を学んでもらうんだそうです。 菅野さんは、「この庭園に合うように技術を身に付けてもらうのです」と話します。例えば、庭園内に約800本ある赤松は、手前の木はつみ取る量を多くし、奥になるとできるだけ多く残し、借景の山々に自然に溶け込む手法を取り入れているといいます。 

 また、同館近くの数カ所にある仮植場には赤松だけでも約400本育てられており、庭園の松(約800本)が大きくなりすぎると植え替えられます。苔にもスペアが準備されているという徹底ぶりです。毎朝、足立隆則館長が写真を撮り、チェックします。植物が大きくなりすぎると、庭の石が小さく見えるため、バランスが崩れていないかの見極めも連日欠かさないという。 これらの取り組みが専門誌では「神管理」と評価され、19年連続日本一につながっています。 「足立メソッド」とは何か?菅野さんによると「館員一丸で、『全康マインド』に基づいた美意識を持つこと」だといいます。そのために剪定方法の工夫や、仮植場があるとのこと。 ランキングで知名度が上がった効果で、国内外から年間60万人を超えていた入館者は、コロナ禍により20万人超まで落ち込みました。ただ、「全康マインド」は今も引き継がれています。小林さんは言います。「全康さんは『一人でも何百人でも、庭を見て感動してもらうのが仕事だ』と話していた。私たちは、自然を生かした庭園が素晴らしいと思っており、それを守るために一生懸命やるだけです」 自然と人工の美が一体化した、世界に例を見ないスケールの独自の景観美が魅力です。自然と人工の美が創り出す景色は、まさに一期一会のドラマそのものであり、一幅の名画を見るような深い感動を与えてくれます。ガラス越しに向こう側の白砂青松庭が望め、自然の木々や滝、石組みなどが、ちょうど床の間にかかる一幅の山水画のように眺めることができます。これがきっかけとなって「生の額絵」も生まれました。私のお気に入りの場所がこの「生の額絵」です。喫茶室「翆」を出て、順路を進んだところにあります。

 足立美術館足立隆則館長は、今回の日本一にあたり、「自然と人工の美が創りだす日本庭園の景色は刻一刻と変化する一期一会のドラマ。(新型コロナウイルス禍で)不自由な生活を強いられる日々が続くが、日本一の庭園の素晴らしさを満喫していただきたい」と、コメントを出しています。♥♥♥

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