『人生の経営』

 ソニーの経営トップを10年にわたり務めた出井伸之(いでいのぶゆき)さんがお亡くなりになりました(84歳)。デジタルや通信分野を推進するとともに、映画や音楽、ゲーム機などエンターテインメント分野にも力を入れ、現在のソニーの基礎を作りました。インターネットがもたらすインパクトをいち早く予見し、デジタル化を推進した先見性は見事でした。しかしキャリア終盤には、家電事業部門の業績不振の責任を問われ、退任しました。「プレイステーション」、パソコンの「VAIO(バイオ)」、犬型ロボット「AIBO(アイボ)」はヒット作となりました。出井さんの経営で印象的なのは、ソニーというブランドの確立でした。常にカッコよさを求め、ソニーらしさとは何かを考えていました。これはかつての日本の製造業では見られなかった視点です。

 「上席役員14人を飛び越えて社長に就任!」と騒がれたソニーの初のサラリーマン元社長・出井伸之さんの最新刊が、『人生の経営』(小学館新書、2022年4月)です。いまや1兆円企業となったソニーの変革を主導した元CEO・出井伸之さんによる、初のキャリア指南書でしたが、これが遺作となりました。84歳にしてベンチャー企業「クオンタムリープ」を率いる現役経営者である出井さんは、「人生の経営」についてこう説きます。「自分の人生は会社のためだけにあるわけではありません。自分はどうありたいか、どういう人生を歩みたいかを決めるのは自分自身です。つまり、自分の人生を“経営”するのは自分なのです。」そう、「人生のCEO(最高経営責任者)はあなた自身」なのです。その上で出井さんは、どのように人生を経営していくか、出井流指針を示しておられます。「定年という考え方をやめる」「社内転職に挑戦する」「左遷だって糧にする」「キャリアを生かせる場所を探す」「地方やベンチャー、アジアに目を向ける」など、出井さんがソニーで学び、自ら切り開いてきた、会社にも定年にも縛られない生き方から、大きなヒントを得ることができます。

 出井伸之さんは、ソニーCEOを退任した後、69歳で新たなベンチャー企業「クオンタムリープ」を立ち上げました。財界活動に精を出したり、顧問や相談役といった肩書きで会社に残る経営者が多い中、なぜ新たな挑戦をしたのでしょうか?それこそ、「人生のCEOは自分である」という出井さんの信念によるものでしょう。84歳になった今も、現役経営者としてアクティブに活動し続けられる出井さんの姿勢や言葉から、多くのビジネスマンが勇気をもらうことでしょう。もう一度、次の言葉をかみしめてみましょう。 

 さらに、出井さんの歴史に関する言葉には、まさにその通りだな、と感銘を受けました。♥♥♥

 僕は最近、企業で働く人々がグローバル化に対応していくためには「歴史を知る」ことが重要ではないかと、痛切に感じています。必要最低限の条件と言い換えてもいいかもしれません。石器時代から日本の歴史を勉強し直すのは大変ですが、少なくとも直近の歴史だけは知っておくべきです。歴史という軸を持たないと、現在我々がどこにいるのか、どこに進んでいけばいいのかわからなくなってしまうからです。(p.112)

 若い人たちには歴史を学んでほしいと思います。今、自分たちはどこに立っているのかを歴史の中での日本という視点が欠けていますし、現代史をきちんと教えていません。(p.139)

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