国鉄色の特急「やくも」

 プロジェクションマッピングでリニューアルした「しまね海洋館アクアス」を見学した後、JR波子駅(いつもは遠足の観光バスで玄関まで連れて行ってもらっていたので、「アクアス」から結構歩き甲斐がありました!)から2時間も(!)普通列車に揺られてやっと出雲市駅に着いたら、 クリーム色と赤色のラインが入った「国鉄色」をまとった特急「やくも」号がホームに待っていました。「やくも号」運転開始50周年(1972年~)を記念した企画で、待望の新型車両が導入される2024年春以降(⇒273系新型車両の導入についてはコチラに書きました)まで、1日2往復する電車です。私は今回偶然、この特別なリバイバルやくも」に乗ることができたんです。国鉄色になったのは、定期運行している特急車両として本州で最も古い、旧国鉄時代の381系を使った1編成(6両)です。今後、上下やくも8、9、24、25号として運行されます。

 コロナ禍でJR西日本も苦労されており、県外の観光客の方々だけでなく、地元の方も懐かしいやくも号に乗っていただき、JRを盛り上げていただきたいものです。今ある当たり前の光景が当たり前でなくなる前に、しっかり乗っておきたいものですね。車内案内の際には、懐かしい鉄道唱歌」のチャイム音が流れてきました。昔のやくも時代が懐かしく想い出されたことです。検札に来られた車掌さんと、昔の思い出を語り合っていました。

 この381系車両の塗装工程が公開されました。まずは車体全体に下地を塗り、続いて車両全体に赤色2号を塗装、赤色を残す部分のみを保護し、その上から、クリーム4号を塗装します。最後に保護していたカバーを外すと、クリーム色と赤色ラインのコントラストが美しい国鉄色塗装が完成です。

 この懐かしい国鉄色塗装の特急「やくも」リバイバル車両の貴重な写真を撮ろうと、鳥取県(特に、名峰大山」をバックに菜の花畑が重なる絶景スポット)では全国から熱心な「撮り鉄」の人たちが殺到して、特に週末などはズラーッと県外からの迷惑路上駐車が多くて、近隣住民の人たちが迷惑している、という報道もなされました。「ちょっと複雑で。来てもらうことや、写真を撮ることは悪いことじゃないですけど、節度ある行動・マナーをしてもらいたい」JRでも、社員が巡回して注意喚起をしたり、黒坂警察署にお願いしてパトロールの強化をしてもらっているそうです。行きすぎた撮影は控えたいですね。

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 特急「やくも」号は、山陽新幹線が岡山開業した昭和47年3月に、陰陽連絡のエースとして登場しました。当時伯備線はまだ非電化だったので、大出力で山岳路線に対応した181系特急型気動車が投入されました。食堂車、グリーン車を含む堂々の10両編成。外観はもちろん赤とクリーム色のツートンカラーの「国鉄特急色」です。この「やくも」の初代車両が、岡山県・JR津山駅近くの「津山まなびの鉄道館」に展示されています。私も感慨深く見学してきました。

▲「津山まなびの鉄道館」に展示される初代181系特急気動車

 昭和57年に伯備線は電化され、使用車両がカーブでも高速走行を可能にした「振り子」式の381系電車に代替わりしたものです。振り子電車である特急「やくも」(381系)が実際に導入される前と後では、所要時間が全く異なっていました。

1972年(振り子登場前、気動車時代)
岡山10時43分→出雲市14時20分(所要時間3時間43分)
出雲市14時50分→岡山18時22分(所要時間3時間32分)

2021年(381系振り子電車)
岡山11時05分→出雲市14時12分(所要時間3時間7分)
出雲市14時33分→岡山17時39分(所要時間3時間6分)

 電車と気動車の違いもありますが、ご覧のように30分近くの時間短縮になっているのです。381系電車のおかげで、半径400mのカーブでも本来の制限速度から+20km/hまで出すことが可能になり、直線でも曲線でもスピードアップが図られ

▲洗面所のエチケット袋

ています。しかし、この振り子機構には致命的な欠点がありました。とにかく乗り物酔い(=吐く)しやすいのです。振り子機構には、「振り遅れ」や「揺り戻し」と呼ばれる自然慣性では出ない不自然なローリング運動が発生します。具体的には、カーブを曲がると、中の振り子のころが一気にそっちへ傾き、ある程度まで傾いていた車両が一気に傾くのです。このことから、特急「はくも」などという不名誉な名前がつけられてしまいました。車内の洗面所には、「エチケット袋」(通称「ゲロ袋」)が常備されています〔笑〕。

 この381系「やくも」号は、製造からまだ25年程度(2006年当時)ということもあり、2007~2011年にリニューアルを実施します。国鉄型車両なのでトイレなど色々な設計が古いのですが、経年度数でいうとそこまで古い車両でもなく、まだまだ使えるので車内のリニューアルに着手しました。例えば、座席を「サンダーバード」と同じものへ交換したり、洋式トイレを新たに設置したり……その結果、「やくも」「ゆったりやくも」へと進化しました。車内は今どきの車両のように綺麗になったのですが、肝心の「振り子機構」は残念ながらそのままですので、これまでの「はくも」という俗称もそのまま引き継がれ、「ぐったりはくも」へとグレードアップしたわけです…〔笑〕。

 同じく381系を使っていた関西圏を走る特急「くろしお」は、2021年現在、全列車が新しくなっているのですが、381系がまだ在籍していた頃は、「げろしお」などという身も蓋もない名前がつけられていました〔笑〕。現在の振り子電車はそれを抑えるため、コンピュータがカーブを検知するとゆっくりと角度を変えていき、カーブが終わるとゆっくりと元に戻るようなシステムが作られています。JR九州の特急「ソニック」や、同じくJR西日本の283系「くろしお」でも、この新しい「振り子機構」が用いられていますね。♥♥♥

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