TKP

 コロナ禍が始まる前は、私の講演会の会場はいつも「TKP」でした。きれいな会議室で、いつも気持ちよく講演をさせていただいていました(会場使用料が結構高いことを知ってビックリ!!)。都会の駅の近くには必ず赤を背景に白く「TKP」と描かれたロゴマークを見ます。直営会議室数が業界NO.1の会社です。ロゴがあるビルは全国400カ所以上あり、その中に会場となる貸し会議室があるんです。街を歩けばあちこちでテナントのいなくなった商業ビル。夜になれば下の店舗は営業しているものの、上の階は電気が消えて真っ暗になっています。そんな建物を活用できないものかと考え、2005年に「TKP」を起業したのが、河野貴輝(かわのたかてる)社長(49歳)です。慶応大学卒業後、伊藤忠商事に入社した河野さんは、為替証券部を経て、日本オンライン証券(現auカプコム証券)やイーバンク銀行(現楽天銀行)の設立に参画。執行役員営業本部長を歴任し、その後2005年、32歳の若さで、証券や金融とは全く畑違いの「TKP」を立ち上げました。東京都内の駅近にありながら使われていないビルの空間を安く借り、会議室にして企業に貸していきました。会議室をそうじする毎日。ぞうきんがけをしながら、この一拭きが100円、ふた拭き出200円、積もり積もって会議室が貸せるんだ、と自分に言い聞かせます。ビルのオーナーにとっては、金にならなかった空間がお金になるので大歓迎です。オーナー、利用企業、TKPの三者にとってメリットが生まれました。

 株式会社ティーケーピーの社名は「トータルクウカン(空間)・プロデュース」の頭文字と説明していますが、元々は、貴輝(たかてる)、河野(かわの)のパトナーズ。元々は、河野の仲間たち、という意味でした。TKPの社名の由来である「Team Kakumei with Passion」「情熱革命企業」をコンセプトに、貸会議室事業における国内ネットワークの更なる拡充と、海外へのグローバル展開を行っていきます。また、ホテルを始め、資産・事業・人材等の再生ビジネスの展開を予定しており、よりよいサービスを提供し社会に貢献する企業を目指します。「空間再生流通企業」として無から有を生み、イノベーションを通して、 空間を「楽しく」「喜んでもらえる」ように「プロデュース」しています。「貸会議室の革命を目指してきました」と語る河野社長の、「革命」の二文字が、TKPのロゴにつながっています。ロゴのモチーフは、ウジェーヌ・ドラクロワが描いた代表作「民衆を率いる自由の女神」の中で、女神が振りかざす旗をイメージしており、お客様、社会、そして社員をよりよい方向へと導く革命のシンボルを表現しています。ロゴマークの色である「赤」は、モチーフと同様、情熱と革命を象徴しています。

▲東京市ケ谷のTKP

▲札幌市のTKP アパホテルとフランチャイズ契約

▲講演会場 実に美しい

 会社設立から3年が過ぎた2008年秋、リーマンショックが襲います。大手メーカーが「社内研修」などで押さえていた予約が軒並みキャンセル。TKPは大赤字に陥ります。ビルのオーナーたちに賃料の値下げを認めてもらい、会議室のレンタル料を3割下げて何とか乗り切ります。今度は2011年3月11日、東日本大震災。再び大量のキャンセルが出ましたが、貸会議室だけでなく、宴会場も貸す、料理も出す、で単価を上げて乗り切りました。2020年、コロナ禍。3度目のピンチです。予約は全てキャンセルで赤字転落。河野社長は「冬眠しよう」と決断します。レストランなど本業に遠そうな事業から撤退します。契約している全国の施設を、一瞬にしてワクチン職域接種の接種センターに変えることができました。また貸会議室を拠点に、オンラインで社員を結ぶシステムも整えました。現在は、貸し会議室事業の他にも、ホテルリゾート事業、飲料。ケータリング事業、イベント空間のプロデュース事業、コールセンター議業、アパホテルと組みホテルのフランチャイズなど手広く事業を行っています。

 TKPは、2022年2月期第2四半期(2021年3~8月期)の決算を発表しました。売上高は219億円(前年同期比6.9%増)と増収の一方、営業損益は4.9億円の赤字(前年同期は20億円の赤字)と、コロナ禍からの回復がまだ道半ばであることを印象づけました。半年前の2021年2月期の決算説明会上、河野貴輝社長はこう意気込んでいました。「今期は赤字が出ないような体質に持って行けたと思う」。約25億円の営業赤字に沈んだ前期から一転して、今期は7億円の営業黒字に浮上する計画を立てていました。しかし、黒字化は今のところ難しそうな情勢です。10月6日にTKPは通期業績予想を下方修正。当初は春先を底に経済活動が回復に向かうシナリオを描いたが、緊急事態宣言の断続的な発出によって、本業である貸会議室の戻りが想定を下回りました。下期もコロナ禍が長引くことを前提に「ワーストシナリオを想定」(中村幸司取締役CFO)し、営業損益は19億円の赤字となる見通しです。

 貸会議室事業に占める室料収入の割合はおよそ半分。残りは懇親会でのケータリングや、宿泊研修などで使用するホテルの運営といった附帯サービスの収入です。研修シーズンを終えた夏場など貸会議室の稼働が落ち込む時期でも、利益率の高い附帯サービスにより、安定した利益を上げられていました。コロナ禍ではその独自性がかえってあだとなり、外出自粛により貸会議室の利用が減少しただけでなく、附帯サービスの需要も霧散しました。とくに稼ぎ頭だった、ケータリングなどの「料飲」部門への打撃は大きかった。コロナ禍は続きます。しかし、人が集まることができるようになり、経営は黒字基調に戻りつつあります。♥♥♥

▲私の講演風景

 

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