「多長根」

 尊敬する故・野村克也さんがワタミの創業者渡邉実樹さんとの対談集『これだけで「組織」は強くなる~戦うリーダーの作り方』(角川書店、平成22年)の中で、こんなことを言っておられました。「長期的」「多面的」「根本的」の三つがキーワードだと思うのです。

 


初めて渡邉さんとお会いしたのは、2009年秋のことでした。その時、渡邉さんは、「一流の経営者、一流のビジネスマンの条件は、長期的、多面的、根本的にものごとを考え、判断できることです」というお話をされました。しかし実際には、多くの経営者がこれと反対のことをしています。短期的なそんとくしか考えない。ものごとを一面的にしかとらえられず、自分以外の立場から見るとどうなるのか、裏側からみたらどうなるのかといった思考回路がない。枝葉末節にとらわれ、本当に重要なことを見失ってしまう。「そういう経営者が大半ではないでしょうか」と渡邉さんがつぶやいた時、私は思わず、「おっしゃるとおり。いや、野球もまったく同じなんですよ」こう言いながら身を乗り出していました。


 大局観の視点を身につけるために大切な考え方とも言われる、3つのことが「多・長・根」。この3つがあれば物事は上手くいくと言われるくらい大切なことです。問題解決のハウトゥーの中でも最も大切なポイントなんです。これは東洋哲学の大家・安岡正篤先生の言われた言葉で、物事を判断する時に、多面的、長期的、根本的に捉えろ!ということです。それでは一つ一つ見ていきましょうか。

①「多」は多面的・複眼的に物事を見ること
②「長」は短期ではなく長期で見通すこと
③「根」は根本に注意を向けること

①「多」:多面的

「多」とは、複数の視点から全体を把握すること。

 物事には表と裏があり、メリットや良い面だけを見るのではなく、裏にあるデメリットやマイナス面も把握することが重要です。表と裏の2つの視点から見て全体像を見る。例えば、大企業で表向きはすごく良い会社に見えるところでも、実は離職率が異常に高かったり、労働環境が悪かったりすることがあります。表面的な情報だけではなく、様々な角度から色々な分析をすることは重要で、そこで必要になっていくるのが多方面での情報収集力。物事を正しく理解し、本質を知るためには複数の視点から全体像を把握することが大事になってきます。人はとかく自分の視点にとらわれがちですが、少し視点を変えると違う景色が見えることも少なくありません。固定した自分の視点だけでなく、一歩ステップバックして、立場の違うさまざまな視点で考えることです。相手の視点、第三者の視点、文化的背景が違う人間の視点、年齢や性別が異なる人の視点、などで考えてみることです。

②「長」:長期的

「長」とは、短期ではなく長期のスケールで考えること。

 目の前の利益やメリットだけではなく、その先を考えることは、視野を広げるために有効で、何かを決める時に、目先のことだけを考えるだけで 判断をするのではなく、もっと先の1年後や、2年、5年、10年を考えても妥当な決断か、という視点が重要です。例えば、ベンチャー立ち上げ1年目の社長と結婚の話が出た時、目先のお金で結婚という決断をするか、数年先の安定が確保できているかを見定める視野のことです。結婚や転職はまさに長期的な判断が大切。結婚なら、愛情か?お金か?転職なら、年収か?将来性か?問題解決は、短期だけに囚われずに、長期的視点を持って判断すべきです。

③「根」:根本的

「根」とは、本質に立ち返ること。

 これが実は一番難しいことで、本質を見抜くこと。本質を見抜くためには、「木を見ずに森を見る」といった「俯瞰」の視点が必須。ただ多くの場合は、「木を見て森を見ず」の状態になってしまう。そんな時は、Why? と問いかけ続けることです。「なぜそれが必要なのか?」「なぜうまくいっているのか?」「なぜ失敗したのか?」本質を見抜くのは「なぜ?」の繰り返しです。例えば、経験も能力もある勢いが若手メンバーが揃っているのに、全く良い結果が生まれていない。その場合の「なぜ?」を考えた時、調整役になっている先輩が全く自分の意見もなく上司の顔色ばかりを伺っているようなチームだった場合、問題は上司の顔色しか見ていない先輩。そのような先輩をチームから外すと自発的な意見が生まれることがある。物事の本質を考えるということです。本質が分かれば、他に応用もできますが、現象だけを見ていては、応用もできず、根本的な改善もできません。現象が出るたびにそれに振り回されることになるでしょう。何をするにしても、何をしているときにも、自分が今それをしている目的は何か、何を目指しているのか、といった根本を意識しておきたいものです。「この問題の本質は何か?」という原点に常に立ち返れということです。

 物事に行き詰まったら、「多、長、根、多、長、根……」(たちょうこん、たちょうこん…)と呪文のように唱えてみましょう。「角度を変えてみたらどうか?」と多面的な角度からの検討を促し、「君の言っていることはよく分かった。では、それを長期的に考えたらどうなるのか?」と追求し、「本当のところではどうなんだ?本質的には何をやりたいのか?」と考え方を深掘りしていく。成功する人、伸びる人は、一面ではなく多面的に、短期に加えて長期的に、枝葉末節に囚われずに根本的に考える。この両者の差はとてつもなく大きいのです。♥♥♥

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