『人生をひらく』

 「日本電産」の創業者である永守重信(ながもりしげのぶ)さんが、およそ半世紀前に同社を創業したとき、荒海に舟を漕ぎ出すがごとく、たった4人で創業を宣言しました。そして今や、日本電産」は従業員11万人を超える「世界No.1の総合モーターメーカー」として知られる大企業となりました。最高の自分をつかみ、悔いなき人生を歩むために、今最も注目される「カリスマ経営者」が語る、渾身の人生哲学書、類いまれなる経営手腕と行動力で、つねに実業界を牽引し続ける著者が23年ぶりに書き下ろした自著が『成しとげる力』(サンマーク出版、2021年11月)でした(写真上)。ベストセラーとなりました(⇒私の詳しい書評はコチラです)。

 そんな経営のカリスマ・永守重信さんの最新刊が『人生をひらく』(PHP研究所、2022年8月、1650円)です。

 本書は、その永守氏がこれまでの経営者人生の中で、幾多の困難を乗り越えることで培った不変の人生観・経営観を「50の原理原則」に集約した、まさに〝永守イズム〟を解説する決定版といえましょう。

 永守氏は本書で、これまでさまざまな失敗や挫折を乗り越えてこられたのは、「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」の精神を持ち続けてきたからだと語ります。その上で、「人生というものは、8勝7敗で勝ち越せばいい」と自らが持ち続けてきた原理原則を説きます。永守氏ほどの経営者でも、すべてがうまくいったわけではなく、次は必ず成功するぞ、と自分に言い聞かせながら人生や経営の勝ち越しを目指してきたことが理解でき、困難に直面したときの心構えを教えてもらえます。

▲永守さんの好きな色・ラッキーカラーは「緑」いつもネクタイは緑です

 このような人生や経営についての原理原則を、「夢の実現」「理念と目標設定」「リーダーシップ」「決断と選択」などの7項目に分けて解説。創業時に取引先の無理難題に応えて信用を得たことや、自分のことを絶対的に信頼してくれる子分を持つことの大切さ、今も毎晩作成している「翌日やることリスト」など、具体的なエピソードや考え方がふんだんに盛り込まれ、経営者から仕事や生き方に迷う若い方々まで、役立つヒントが満載です。

 日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)が定義する「ハードワーキング」とは、長い時間働くことではなく、競争相手に勝てるスピードで仕事をして、結果を出すことができる働き方のこと。このハードワーキングを実践してきたことで、日本電産は今日の発展を遂げたといえる。結果を出すために求められる働き方と姿勢とは?輝く人生を切りひらくために本書をお役立てください。

 私が永守さんの生き方や著書に共鳴する理由は、決して着飾ることなく等身大の自分をそのままさらけ出している点です。周囲から評価されるためにとか、よく見られたいといった理由で、何かを抑えたり、変えたりすることはありません。この点首尾一貫しています。印象的な話を二つほどご紹介してみましょう。

 永守さんは中学2年生の時にお父さんが亡くなり、家が貧しかったので、「自転車が欲しい」と言っても、買って貰えませんでした。友達がズック靴を履いていても、永守さんは裸足でした。そんなある時、同級生の家に行ったら、ステーキとチーズケーキが出てきて、部屋の中ではスイス製の模型列車が走っている。友達に「お前のお父さん、何しとるんや?」と聞いたら、「社長や」と答えたものだから、「社長になったらこんなうまいものが食べられて、こんな立派な家に住めるのか」と子供心に思ったわけです。永守さんが社長になりたいと思った最初の動機付けは、そんなもので、「社会に貢献して、雇用を増やして……」というような立派な動機で始まったわけではなかったことを正直に告白しておられます。会社を作ったら作ったで、お金がないので、毎日毎日資金繰りに追われて、会社の理念や経営方針などについては考える余裕もなかったと言います。人生観とか理念というものは、一挙に出来上がるものではないということで、最低でも10年はかかる、と断言されます。

 永守さんは、体力をつけるために、休みになると山登りをやっておられた時期があります。もともと人に負けるのが大嫌いな方ですから、「こんな山を登るのに何をもたもたしているんだ!」という感じで、パーッと人を追い抜いていきます。しかしあまりにもスピードを出すものだから、8合目くらいで体力を使い切ってしまい、バタンと倒れてしまったことがありました。仕方がないので、身体を休ませるために横になっていると、ずいぶん前に追い抜いた人たちがゆっくりゆっくり登ってきて、リーダーの人がこう言いました。「みなさん、あそこで今寝ておられる方は、ずいぶん前に私たちをパーッと追い抜いていかれましたね。なぜ、倒れてしまったかわかりますか。あの方は体力を温存できていないんですよ。自分の山登りの実力をわかっていないんだ。山登りにおいては、ああいうことをやると失敗しますから、気をつけてくださいね」永守さんがへたって休んでおられる横で、わざわざ足を止めてそうやって説明されたのです。その時、永守さんは「ああ、なるほどな。それはそうだな」と思いました。最初は体力があるし、相手もゆっくり登っているから、簡単に追い抜ける。「なぜ、こんなところを、こんなにゆっくり歩いているのか。もうパーッと登って、上で飯を食って早く帰ろう」と思いながら、「お先!お先!お先!」と追い抜いていくことができます。「これくらいならアッという間に登れる」という感じがするのですが、実際にはそうはなりません。8合目くらいになったら、急に足が動かなくなってしまって、最後にはバタンと倒れてしまうのです。「これではいかん」と思って、次に登った時には、体力を温存しながら登ったら、頂上にたどり着いてもまだ体力が残っていました。「ああ、これだな」とそこで学ぶことになった、と回想しておられます。ここで永守さんは気がつきます。あまり慌て過ぎるのはよくないという点は、会社経営も一緒だと。山登りでも会社経営でも、自分の実力が目標に見合っているかどうかを見極めることが大切だということです。♥♥♥

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