「早起きは三文の徳」

 私が子どもの頃、信仰心のあつかった母(毎年最上稲荷奥之院で修行)は毎朝、神様(日蓮宗)のお勤めを5時に始めていました。鐘がチーンと鳴ると、自然とパッと目が覚めたものです。そのおかげでか、子どもの頃から、朝は毎日5時起きという習慣が身についたようです。これは実に有り難い習慣形成でした。早起きが全く苦にならない習慣が身についたのです。大人になってもこれは変わりません。人よりも早く起きて、一仕事してから学校に向かうというルーティーンが定着しています。私が朝の6時半から学校に登校して、仕事をするのは、どの時間帯よりも仕事がはかどるということを、身をもって体験しているからです。勤務開始時間ギリギリに飛び込んでくる先生もおられますが、実にもったいないことだなあと感じています。今でも始業時までの静かな約2時間を、教材作成や生徒からの質問、添削に充てるのが、私の日課となっています。私がこれまでに作成した膨大な指導資料は、全部こうしてコツコツと積み上げてできあがったものなんです。まさに「チリも積もれば山となる」ですね。

 最初の軽量高速エンジンを発明したドイツ人のゴットリープ・ダイムラーは、ある日、一人の婦人に、「私の息子もあなたのような発明家にしたい。どうしたらなれるのか?」と質問されました。「授けられる秘密などないが、私は毎朝5時から働くことにしている。息子さんが発明家になりたいのであれば、私と同じようにすればいいだろう」と答えました。アメリカ上院議員だったある女性は、早朝の時間における仕事の能率に関して、こんな観察を述べています。「朝9時前にする仕事は、日中の仕事の二倍も能率が上がることを発見したのです。早朝のわずか半時間を、ありきたりの仕事ではなく、日課以外の特別の仕事に役立てるように利用することは、最も効果的に時間を活用する方法です」 成功した日本のビジネス・パーソンが、皆早起きであったことは有名ですね。「ミスター合理化」の異名をとった故・土光敏夫さん、船井総合研究所の故・船井幸雄さん、ダイエーの故・中内 功さん等々。私の尊敬する英語学者・故・渡部昇一先生や、地球物理学者・故・竹内 均先生も早起きでした。

 英語の諺では、このことを、The early bird catches the worm.(早起き鳥は虫を捕まえる=早起きは三文の徳)と言っています。 ヨーロッパには早起きの得を讃えた格言がいくつもあります。

「早起きする人には神の助けがある」(スペイン)
「朝の時間は口に黄金をくわえている」(イタリア)
「朝の時間は儲の時間」(フランス)
「朝こそすべて」(イギリス)
「大事なことは朝のうちに」(スペイン)
「明け方の光りはパンを新しくつくる」(ドイツ)
「朝の時間は黄金、私たちに報いる」(ロシア)
「朝は夕べよりも賢い」(スラブ)
「早起き鳥はクチバシをすすぎ、遅起き鳥はただ目をこする」(バルト海地方)

 私は週に3日、米子に電車通勤していますが、電車の時間よりもかなり早く松江駅に到着して、「ドトール」「スターバックス」に入って、1時間ばかり仕事をしてから電車に乗ります。こうして幾つもの資料が完成していくのです。電車の中では4つの新聞を読んで、気になる記事を破って鞄に突っ込んでおき、家に帰ってからスクラップ帳に整理しています。

 さて、今日取り上げるのは、この「早起きは三文の徳」ということわざの成り立ちです。「早起きは健康によく、良いことが起こる」というさわやかなイメージのことわざで、仕事や勉強が効率よく進む教訓として引用されることが多いものです。しかしこのことわざの成り立ちを調べてみるに、教訓とはほど遠いものであることが分かってきます。中国の古い散文がベースになった上に、日本オリジナルのエピソードが加味されたと言われています。

 江戸時代、奈良ではシカ「神様のお使い」として大切に守られてきました。江戸時代には幕府が手厚く保護し、殺生などを厳しく取り締まったといいます。シカの死体が家の前で見つかると、家主は放置した罰金として三文を払う決まりがありました。そこで、どの家も早く起きて、シカの死体があると隣の家の前などにひそかに移動させていました。死体を置かれた家もよその家に回すので、最後には、一番遅く起きた家の前に死んだシカが放置され、三文を払うはめになりました。しかし、早起きすれば三文を払わなくてよく、得だというわけです。古典落語「鹿政談」でも語られているこうした逸話が、ことわざの元になったと言われているのです。江戸時代の「三文」は、現在の貨幣価値に換算すると、100円程度だとされます。一度なら少額ですが、毎朝ならば結構な金額になります。

 他にも、江戸時代初期に、土佐藩(高知県)で治水対策として堤防工事をした際に、堤防の土を早く固めるために、早朝に堤防を歩いた者に三文のほうびを与えるおふれが出たのを由来とする説もあるようです。これも早起きの得ですね。♥♥♥

 早起きと言えば、私の尊敬する地球物理学者・故・竹内 均先生(東京大学の学生たちにはタケキンと呼ばれていました)で、忘れられないエピソードがあります。その昔、学生が大学を封鎖したり、警察とやりあったりした「大学紛争」をご存じない先生方が増えてきました。そりゃひどかったんですよ。私の大学ではヘルメットをかぶり、タオルで顔を巻いて、竹槍を持った学生達が警察とやりあっていました。その時の話です。ある日、竹内先生の東京大学の研究室のある建物が封鎖されました。しかし、学生たちが登校(?)してきたのは朝の9時でした。もちろん朝の早い竹内先生は、7時半には研究室に入っておられたので、セッセと仕事に打ち込んでおられました。竹内先生の秘書が9時頃来て、学生たちにつかまりました。そこで先生のことが大いに問題になりました。「タケキンを引っ張り出せ!」という強硬意見も出ました。しかしネコの首に鈴をつけるネズミが出てきません。結局「先生はしょうがない」というところに落ち着いたそうです。翌日、竹内先生は学生の代表を呼んで、こうお説教をしました。「建物の封鎖をやるならもっと真面目にやりなさい。私が7時半から来ているのに、君たちが9時では遅すぎるではないか!」 この奇妙なお説教を学生達は神妙な面持ちで聞いていたそうです〔笑〕。できる男は朝で差をつけるんです。♥♥♥

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