◎今週は英語特集!!
授業で、次の九州大学の入試問題を読みました。英文の訳文は問題集に出ているものです。みなさんは、どんなふうに日本語に訳しますか?やっかいな問題は、ここに出てくるidentityです。
Beginning with two years in Potrero Yapepo, in Itapua, Paraguay, I lived a series of useful cultural dislocations. They were useful because they unsettled my sense of identity, which in my case seems to have been a good way to stimulate my imagination.
〔訳文〕 パラグアイのイタプア県ポトレロ・ヤポペでの2年を始めとして、私は有益であったさまざまな文化的混乱の生活を送った。それが有益だったのは、私のアイデンティティをぐらつかせ、そのことが私の場合は想像力を刺激するのによい方法となったようだからである。
この中に出てくるidentityという単語、英文和訳問題には結構出てくる単語です。毎年生徒は「身元、自己同一性、個性、独自性、身元保証」など、訳はできても、何を言っているのかがさっぱり分かりません。現場で使われている単語集を見ても、イマイチよく分かりません。identityがどのような気持ちで使われているのかが、一向に見えてこないからです。もや~としています。
◎『コーパス3000』(東京書籍) 身元
◎『英単語Stock3000』(文英堂) 身元、アイデンティティ
◎『VALUE1700』(チャート) ①身元、正体 ②独自性、アイデンテティー
◎『WORD-MEISTER4500』(第一学習社) ①同一性 ②一致 ③身元
④本人であること ⑤個性
◎『システム英単語』(駿台) 身元、正体;独自性
◎『WORD BOX Advanced』(美誠社) 身元、アイデンティティ
◎『エスト英単語』(エスト出版) ①自己同一性 ②身元
◎『英単語ターゲット1900』(旺文社) 身元、正体;自己同一性
◎『新ユメタン』(アルク) 本人であること;個性;同一であること
自分がどういう性格でどんな人間かを理解していること、要は、自分自身を表現できるもの、自分が自分に対して持っている考え方そのものが、identity(アイデンティティ)ということです。一言で言うと、アイデンティティとは【自分自身】あるいは【自分の考え】です。これを一番分かりやすくイメージできる質問が、「あなたは、どんな人間ですか?」というものです。これに対する答えこそが、あなたのアイデンティティに他なりません。
●美味しいものが大好きな人間
●自分に厳しい性格の人間
●人のために何ができるかを考える人間
●英語・プロレス・マジック・歌の上手な歌手が大好きな人間
●知的好奇心が旺盛な人間
●旅行が大好きな人間
●一財産のマジック用具の収集に没頭している人間
周りの人の評価ではなく、あなた自身があなたに対して持っている考え方。これこそが、identity(アイデンティティ)の意味するところなのです。
私が受験単語集として最も高い評価を与えている竹岡広信先生の『LEAP』(数研出版)には、上で挙げた単語集とは違って「アイデンティティ、身元(←自分が何者であるかということ)」と出ていました。さすがですね。この下線部分が本当に正確に英語を読んでいる人にしか書けない注記なんです。
私は、identityが授業に出てくる度に、「自分は一体何者か?」という説明を与えることにしています。上の英文では異文化を体験することで、「自分は一体何者でどんな人物か?」ということがぐらついて、固定されることなく、想像力を刺激するいい条件となった、と言っているのです。「自分がどのような人間であるのかという意識を不安定なものにした」とでも訳しておきましょう。簡単に言えば、identityとは「自分が一体どんな人間であるか?」ということです。♥♥♥