「アトア」

 2021年10月29日に、神戸ベイエリア・新港突堤西地区(神戸市中央区)に都市型アクアリウム「átoa(アトア)」が誕生しました。すでに関西圏にはいくつもの水族館施設がありますが(例えば、「海遊館」「京都水族館」「城崎マリンワールド」)、「átoa(アトア)」は、それらとは一線を画した「劇場型アクアリウム」を基本コンセプトにした、独創的なアート空間と生物展示が融合した新感覚の水族館です。東京の講演の帰りに途中下車して、立ち寄ってみました。

 「アトア」のロゴマーク(写真右)は、アクアリウム(a-)アート(a-)の融合を表現しており、頭文字のá」には、水中を漂う気泡をイメージしたアクセント記号が記され、柔らかな音の響きは、アクアリウムの癒やしの時間をイメージしています。施設に隣接した神戸港の穏やかに揺れている波もイメージしており、遠くになるほど色が薄くなっていくグラデーションで海のきらめきと広がりを表現しています。施設名「átoa(アトア)」というのは、Aquariumu(水族館)× to(と)× Art(アート)が掛け合わさった造語です。その名のとおり、デジタルアートや舞台芸術を駆使したアート空間の中に、約60の水槽に魚類の他、無脊椎動物や両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類など、約100種類3,000点ものいきものたちが共存します。

 神戸市が位置する六甲の地は、100万年前以上の遥か昔、大地の隆起と水の浸食により形成されたと言われています。「átoa(アトア)」が収容される施設・「神戸ポートミュージアム(KPM)」は、そんな神戸の地の成り立ちを体現したアート作品のような外観となっており、訪れる人の目を惹きつけます(写真下)。

現代アート美術館のような外観の神戸ポートミュージアム

 “隆起した大地と浸食する水”を表現するために、実際の施工には六甲山と瀬戸内海で採取した土砂が壁面のコンクリートに使用されています。さらに約4,000m²の壁面を約300万ℓの高圧化した水を使い壁面を削ることで骨材を露出させ、まるで地層のような独特の風合いを表わしています。

 「átoa(アトア)」の館内は、計8つのゾーンにわかれており、光、音、映像、香りなどの演出により、各ゾーンのテーマに沿った展示と空間演出がなされています。

 まず入場口を入り来館者を待っているのが、「CAVE-はじまりの洞窟」です。鏡面加工を施された壁面と床面に魚の群のような虹色の照明が乱反射し、万華鏡の洞窟を歩いているかのような錯覚に陥りながら奥へ奥へと入っていきます。いきなり幻想的な世界に入り込んだような気分です。

 幻想的な洞窟を抜けると海中世界を体現した「MARIN NOTE-生命のゆらぎ」が広がっています。空間全体を覆うウェーブ照明と潮の香が漂う香りの演出、さらには円柱型の水槽にトラフザメやチンアナゴなどの海のいきものが展示され、まるで光が差し込む海中を浮遊しているかのような感覚を楽しむことができます。

海中世界を体現した「MARIN NOTE-生命のゆらぎ」

 2階の展示の目玉のもう一つが、「EREMENTS-精霊の森」です。霧が立ち込める樹海の森、まるでおとぎ話の世界に入り込んだかのような世界で、淡水魚やアルダブラゾウガメなどのは虫類、さらには水族館では珍しいウッドチャックなどの可愛いいきものたちとも出会うことができます。「átoa(アトア)」ではこうした従来の水族館施設では出会うことのないユニークないきものが展示されていることも大きな特徴です。運がいいと、餌を求めてエリア内を歩き回るアルダブラゾウガメにも出会えます。私は運がいいらしく、遭遇することができました。

 3階では、“劇場型アクアリウム”を存分に楽しむことのできる代用的な2つのゾーン「MIYABI」「PLANETS」に注目です。日本の風光明媚な和の世界を表現するゾーン「MIYABI」では、光の切り絵作家 酒井敦美氏による光のオリジナルプログラムを楽しむことができるほか、足元ではガラスで覆われた床のすぐ下に錦鯉などの魚が泳ぎ、まるで水面上を歩いているかのような不思議な感覚を味うことができるガラス床水槽(「MINAMO」)に注目です。舞台美術やデジタルアートを融合させたアトアのエンターテインメント存分に体験できる人気ゾーンです。

切り絵作家 酒井敦美氏による光の切り絵のショー

 「PLANETS」では、宇宙空間や深海の世界を体現しています。ゾーンの中央に鎮座する直径3メートル・日本最大級かつ世界屈指の規模を誇る球体水槽「AQUA TERRA」、床に埋め込まれた光ファイバーと天井から降り注ぐレーザーとミストにより、空間全体が無数の星と光のベールに包まれた宇宙空間を表現しています。アートに注目されがちですが、もちろん主役はいきものたち。それぞれのいきものたちの造形美を引き立てる演出が施されています。

 4階は屋外展示となっています。「SKYSHORE 空辺の庭」では開放的な空の下、フンボルトペンギンやコツメカワウソなどの可愛い海獣類たちとの出会いに心が癒されます。ガラスの近くまで来てくれるのは実に可愛らしい。また4階にはアートアカフェが併設され、思わず写真を撮りたくなるようなインスタ映え間違いなしのフードやドリンク類が提供されています。ただ屋根がないので、雨の日はびちゃびちゃになってしまい座るところはほとんどありません。

 さらに必見なのは、展望デッキ「ROOF TOP」から眺める神戸の絶景です。ハーバーランドメリケンパークが一つの構図の中に収まり、昼はもちろん夜には神戸ベイエリアの美しい夜景を楽しむことができます。神戸での私の定宿の「ホテルオークラ神戸」もそびえていました。この水族館の一番の売りは「最高の映えスポット」になるという点でしょう。さすが令和時代に誕生した水族館だけあって、SNS映えを意識したスポットがたくさん用意されています。

▲「ホテルオークラ」がそびえ立つ

 一階の出口は「ミュージアムショップ」になっています。可愛いいきものたちのぬいぐるみのほか、神戸らしい「átoa(アトア)」オリジナルの商品もたくさん販売されていました。

 「神戸ポートミュージアム」の1階には、「TOOTH TOOTH MART FOOD HALL &NIGHT Fes」というフードコートがあり、神戸ならではの食を楽しむことができます。TOOTH TOOTHというのは、もともと神戸発祥の小さな洋菓子屋さんの名前だそうですよ。

◎「アトア」の問題点

 コロナ禍の「átoa(アトア)」では、密を避けゆったり展示を楽しめるよう、日時指定入場制を採用しており、事前予約が必要です。入り口の受付では、事前決済済みの列と、現地決済の列に、二つの長い列ができていました。どっちが何の列なのかもよく分からないまま、私はカード決済を済ませていましたので、「エーッ、もうお金も払っているのに、なんで並んで発券機に並ばなくてはならないのか?」疑問に思いました。その肝心の発券機も予約番号を入力してもエラーが繰り返し出るというお粗末さ。「事前決済の意味が全然無いじゃん!」と、私の前のカップルは不満をぶちまけていました。近くのスタッフは窓口の人しかおらず、ひたすら順番に発券作業をしておられるので、順番抜かして窓口に聞くわけにもいかず、確認の取りようも無い状態でした。これにはとても困りました。案内役のスタッフを配置すべきでしょう。

 盛り上がりを見せる中、ネガティブな意見が広まっていることも事実です。「狭くてチカチカする水槽で魚が横向きに浮いてて、餌あげちゃいけない魚に子どもたちがバンバン餌投げてたけど注意するスタッフはおらず、大人はインスタ映えに夢中、死んだようにうつ伏せになるゾウガメだけ癒しだったけど悲しい」「カピバラを見にきたけど、屋上の飲食店の端に詰め込まれてて、夜だからかもしれんけど客層がクッソ悪いから、子どもがガラス蹴ったり、大人が上から唾吐いたりしてて、いかにカピバラをビビらせて写真撮るかみたいになっており、でも誰もスタッフとか立ってないから『あかん』と言うても繰り返される」等々。

 さまざまな意見が寄せられていますが、中でも展示スペースの改善を望む声が目立ちます。狭い展示スペースで窮屈に展示されている動物たちに、可哀想と感じる部分が確かにありました。屋上にいるゴマフアザラシは、かなり狭いプールの隅っこに沈み込んでいて可哀想だなと感じました。飼育環境の見直しを要望する声も上がっています。展示スペースが狭小ではないかとの指摘には「お客様の率直なご感想として真摯に受け止めさせて頂きたく存じます」としつつも、「弊社の飼育展示に係る経験等において、飼育生物ごとの生態に応じた環境確保に努めております」「当施設の規模から約100種3,000点の展示は多くはなく、水槽内での過密飼育のような事実もございません」との認識を示しました。いきものたちにとって、少し窮屈な環境の印象はぬぐえませんでした。♥♥♥

 オープン一ヶ月が経過し、部分的な改良は順次対応しております。また、通常運営において、段階的に進めるべき計画もございます。先ず、生物の健康を維持し福祉の向上に努めること、そして、ご来館いただいた皆様が安心して生きもの達をご覧いただけるよう、必要な対策を順次取り組む所存です。(アトア)

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