Blackは大文字で

 あまりどこにも書いてないことなんですが、最近の英字新聞を読んでいて、「黒人」を指す英語のBlackが、ほとんど大文字で書かれていることに注目しています。1文字目を小文字のblackではなく、大文字のBlackとしているのです。2020年5月25日、米国ミネアポリス近郊で、白人警官が黒人男性のジョージ・フロイドさんを、暴行し死なせた事件を機に、米国で広がった人種差別を見直す動き(暴動?)の一環で(「Black Lives Matter」(黒人の命は大切)という人種差別撤廃運動が高揚)、黒人を歴史や文化を共有するグループと認め、敬意を示す意味があります。大文字を使う動きは、この事件以降加速しました。

 AP通信は2020年6月19日、「スタイルブック」の補遺で、「人種や民族、文化的意味合いで用いる場合、大文字のBlackを使う」という用語指針を発表しました。「アフリカ系ディアスポラやアフリカに住む人々を含む黒人と特定する人々が共有する歴史、アイデンティティー、コミュニティーの本質的な感覚を伝えるため」とし、AP通信のジャーナリスト、外部の団体や有識者が、二年以上にわたり研究と議論を重ねてきた、とも明かしました。「小文字のbで始まる黒は人ではなく色」としました。全国紙のUSA Todayは系列の地方紙約260紙とともに、大文字を使うと発表しています。多くのメディアに記事を配信し、米国で広く使われる用語手引も発行するAP通信が続いたことで、さらに大きな影響があると見られています。ニューヨーク・タイムズ紙も、大文字にすることを決めました(2020年6月30日)。大文字のBlackは確固たる文化としての形容詞であり、小文字のblackのように単なる肌の色を表すにとどまりません。

 小文字から大文字に変わると、どのような違いがあるのでしょうか?2014年に『ニューヨーク・タイムズ』への寄稿で、大文字使用を訴えたテンプル大のロリ・サープス准教授は、「単純な変更だが、大きな意義がある」とします。小文字だと「黒色」を意味する形容詞だが、大文字なら固有名詞となるためです。「黒人はアフリカから奴隷として強制的に米国に連れてこられ、ルーツを断ち切られました。その代わり、この地で言語や料理、ファッションなど新しい文化を育みました。」と語るサープス氏は、Blackと大文字にすることで、こうした文化を認める意味があると言います。「事件後、気づかない間に人種差別や不平等に寄与するようなことをしていないか、見つめ直す動きが社会全体で起きている」と評価しました。黒人を歴史や文化を共有するグループと認め、敬意を表する意味が出るということです。「Bが大文字で書かれていないと、失礼な感じを受ける。アフリカ系アメリカ人には文化的なアイデンティティが共有されており、それは我々が共有してきた経験を経て生まれたものだ。また、奴隷制度の結果としての地理的な歴史が消え失せることになる」と語る識者もいます。したがって、これは単なる表記の問題ではなく、文化的アイデンティティーの問題なのです。もちろん、こうした動きに対しても、「大文字にすべきではない」とする黒人もいて、コンセンサスが取れているというわけではありません。

 一方、黒人を大文字にするなら、白人もWhiteと大文字表記にすべきだ、という声もあるにはあります。しかし大勢は、white(白人)に関しては大文字にはしないとしています。

私たちはwhiteの小文字での表記を維持する。類似性の問題は明らかだ、”white”の新たなスタイルの普及を求める同様の運動はこれまでなく、”white”が共有された文化や歴史を表しているという意識は希薄だ。さらに、ヘイトグループや白人至上主義者たちが大文字の表記を長い間支持しており、そのこと自体がこの表記を避ける理由となっている。

 ここらへんの事情に関しては、最新刊杉田 敏『英語の新常識』(インターナショナル新書、2022年2月)にも詳しく出ていますので参考にしてください。この本みなさんにお薦めの一冊です。♥♥♥

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