藤田 田復刊!

 アメリカから日本に初めてマクドナルドを持って来たのは、松江北高校の大先輩である藤田 田(ふじたでん)さんでした。そんな関係もあって、私は藤田さんのことを興味を持って調べているんです。⇒コチラです  そんな中、藤田さんがお亡くなりになってから15年が経とうとする時、『ユダヤの商法』『勝てば官軍』『頭のいい奴のマネをしよう』『金持ちだけが持つ超発想』『ビジネス脳のつくりかた』『クレージーな戦略論』、かつての名著6冊が、新装版として復刊(KKベストセラーズ)されました。ユダヤの商法』などは、出版当時超ベストセラーになった本ですが(累計105万部と増刷を重ねた空前のベストセラー本です)、もう手に入らなくなった最近では、古書市場で2万円もの値がついていました。上記の本は全て私も買って持っていましたが、復刊されたこともあり、もう一度丁寧に読み返してみようと思い、全冊購入しました。

▲再刊された藤田本

 ユダヤ商法には法則があり、その法則を支えているものは宇宙の大法則なのだと言います。人間がどうあがいても曲げることのできないのが宇宙の大法則であり、ユダヤ商法がその大法則に支えられている限り、彼らは決して損をしません。それはユダヤ5000年の歴史が証明している公理だと藤田さんは述べます。「78:22の宇宙法則」「女を狙え」「口を狙え」「今日のケンカは明日に持ち越さない」「不意の客は泥棒と思え」……ユダヤの商法』を開くと、Part1の項だけでも、ドギツイ見出しがずらーっと並んでいます。例えば、宇宙の大法則が支えているユダヤの商法の基礎となる「78対22の法則」。正方形の面積と100とすると、正方形に内接する円の面積は78.5。つまり正方形の残りの面積は約22。空気の成分も窒素78に対し、酸素22の割合です。また人体の組成も水分量とその他の物質が約78対22だとされます。売り上げの8割は2割の社員に依存するという「パレートの法則」も、この割合に近いものがありますね。儲けの法則も78対22だと、藤田さんはユダヤ人から教わります。金を貸したい人78に対し、借りたい人は22の割合で成り立っています。この78を相手に商売をすればよいのです。「ユダヤ商法に商品は二つしかない。それは女と口である」。「女と口を狙え」も、藤田さんの商法の根幹でした。「第一の商品」女性。女性相手に商売すれば必ず成功する。商品の選択からセールスまで「商才」を発揮して女性相手の商売はたやすいのです。そして「第二の商品」。口に入れるものを取り扱う商売は、必ずお金が入ってくるし、儲かる商売であるとします。なぜなら、口に入れられた“商品”は刻々と消費され、数時間後には次の“商品”が必要になってくるからです。こんな調子で本は進んでいきます。

 しかし、なぜ今このタイミングで藤田さんの著作が復刊されることになったのでしょうか?KKベストセラーズ書籍編集部で復刊プロジェクトチームの統括にあたった山崎 実さんは、こう語っておられました。


 「いまの時代は中小・大企業問わず『正社員としての終身雇用』が難しい時代で、特に就職氷河期の40代以下の若者は、自分の力で厳しいビジネス社会や人生を切り開いていかなければなりません。もちろん藤田さんが活躍された時代に比べれば、いまはモノが豊かにあって新しいビジネスのアイデアを持った賢い人たちもたくさんいますが、藤田さんのように常識を打ち破り、素早く行動に移すことのできる“突破力”を持ち合わせる人はそう多くありません。新しいビジネスで世界を変えたいとか、お金持ちへの夢を貪欲に描いている人は、藤田さんの著書の中から必ず“成功のヒント”を見つけ出せると思います。露悪的な表現も多々ありますが、藤田さんには大阪生まれのユーモアや人情味もありました。その愛情溢れる言葉やノウハウの数々は、現代のビジネスマンや起業を志す若者の心にもきっと刺さると信じています」(山崎氏)


 藤田さんが2004年4月にお亡くなりになって、今年でちょうど18年になります。日本最大の外食チェーンと、巨万の富を築いた伝説の経営者の“金儲け術”に心酔して、第二の藤田 田さんの出現が待たれます。

 ソフトバンクを創業し巨万の富を築いた、孫 正義(そんまさよし)さん。その資産は2兆円を超すと言われる、誰もがうらやむ日本を代表する経営者です。その孫氏に大きな影響を与えたとされるのが藤田 田さんです。氏は高校時代、藤田田の著書『ユダヤの商法』を読んで感動して、著者に会いたいという気持ちが湧きます。高校生だった孫少年は、何度も断られながらも、執念深く連絡を続け、強引に面会の機会をとりつけます。今回KKベストセラーズが復刊した『勝てば官軍』の中で、当時のやりとりが、藤田さんの言葉で語られています。


 九州から16歳の少年がわたしに会いたいと上京してきた。わたしは、忙しくて時間がないと断ったのだが、彼は一週間、毎日会社を訪ねてきた。その熱意にほだされてわたしは彼に会った。彼は、「わたしは九州鳥栖の出身で、これからアメリカに行って勉強したいのですが、なにを勉強したらいいでしょうか。自動車とか飛行機とか石油とか、学びたいことはいろいろあるのですが」といった。わたしは「今はこの部屋くらい大きなコンピュータを使っているが、遠からずハンディなものになるだろう。アメリカに行って勉強するならコンピュータしかない。コンピュータだけ勉強してらっしゃい」とアドバイスした。「わかりました」といって少年は、アメリカでコンピュータを勉強して帰国、日本ソフトバンクという会社を創った。ソフトバンクは94年に上場して50円の株が一挙に1万9,000~2万円になるほど急成長した。少年の名は孫正義―といえば、「ああ、あのひとか」と思い当たることだろう。(『新装版 勝てば官軍』より)


 「コンピュータだけ勉強してらっしゃい」 決定的な言葉が、高校生だった少年に突き刺さりました。さんはその後カリフォルニア大学で、ネットワークコンピューティングに触れます。それが“原体験”であると、YAHOO JAPANでのインタビューでも語っています。藤田さんのアドバイスこそが“原体験”を生んだのでした。帰国するや、1981年コンピュータ卸売事業の「ユニソン・ワールド」を設立、日本ソフトバンク創業につなげていきます。その後の大活躍は誰もが知る所ですが、さんは一貫して“コンピュータ”、そして“テクノロジー”の未来を信じて事業を進めました。「ヤフー株式会社」を設立し、日本人にコンピュータでのネットサーフィンの習慣を植え付けたのです。「ボーダフォン」を買収して、携帯電話事業に乗り出してからは「iPhone」を初めて日本に持ち込み、“小さなコンピュータ”を爆発的に普及させました。数々の事業での成功。日本人の行動習慣を変えたインパクトは、すさまじいものがあります。そのすべてのきっかけとなったのは、1974年に藤田 田さんにかけた言葉だったのではないでしょうか。

 そんな一冊、『ユダヤの商法』(KKベストセラーズ)は、1972年(昭和47年)5月が初版です。創業者で担当編集者だった岩瀬順三さんが、1986年(昭和61年)に亡くなってからは、版を重ねることなく、「古本」市場で2万円近くの高値で取引をされるほどになっていました。ゆえに「幻のベストセラー」と言われ、復刊待望リクエストを多くの読者からいただいていた本です。初版1万2,000部。ネットを中心に「あのユダヤが復刊!」の噂がまたたく間に口コミで広がり、果たして発売解禁後に、アマゾンでは在庫3,000部部が一瞬でなくなり、総合1位となるとともに、リアル書店でも大都市部での売り上げがうなぎ登り、即日「重版決定」となったものです。それにしても、「昭和」に活躍した藤田さんの『ユダヤの商法』が、この「令和」の時代に、なぜこれほど売れているのでしょうか?いくつかの理由があるように思われます。

1.『ユダヤの商法』がすでに「伝説」だった!

 若い頃に、『ユダヤの商法』を経営の「バイブル」として読み、大きな影響を受けた経営者が多かったことが第一の理由です。特に、「ソフトバンク」創業者の孫正義さん、「ユニクロ」の柳井正さんなど、日本を代表する経営者が本書を若い時に読み、影響を受けたことを本人たちが告白しているのが大きいと思われます。『ユダヤの商法』に感化された当時、17歳の孫さんは、藤田さんに何度も面会を求め、断られながらも15分ほど面談したという「武勇伝」も残されています。そうした「伝説的名著」として噂が立っていたことが、追い風になっているのは間違いないと思われます。それはつまり、藤田さんの「言葉」が、“現役”の経営者の血肉として今なお「生きている」証拠でもあり、それが「口コミ」によって、特にウェブ上で広がったせいなのでしょう。

2.読んだ後、「元気が出る」「ワクワクする」

 『ユダヤの商法』の最大の魅力は、やはり、その「中身」にあることは紛れもない事実だと思われます。本書は、藤田さんが敗戦後、東大生の頃にバイトしたGHQで、進駐軍のユダヤ人下士官から「お金」に対する知恵を学んだ、どこまでも「藤田田の商売道」なのです。「商売人がやらなければならないことが全て書いてある」という「商法」に対する評価と、読んだ後に「元気が出る」、「ワクワク」するなど、読者を「何らかの行動」に誘う内容になっていることが、受けている理由ではないかと思われます。あのさん、柳井さんを「ワクワク」「ゾクゾク」させた本ですから、当然といえば当然のことなのですが。

3.商法の原理原則「仕事×時間=巨大な力」

 藤田さんの本は、今では「時代錯誤」なものも3分の1くらいはありますが、残る「3分の2」は未だに誰もが応用することのできるアイデアです。一言で言えば、「実行(仕事)し続ければいい」のです。別の言い方をすると、本人の努力次第、「継続する克己心」で何とかなるお話ばかり。で、それを「遵守」すれば、おおよそ成功できるような原理原則なのです。

 藤田さんの「商法」の原理原則の第一は、たった一つの方程式、「仕事×時間=巨大な力」に尽きると思われます。自身が40年間続けた10万円貯金(複利で2億円超!)も、1兆7千億円の資産も、藤田さんの「仕事×時間」、すなわち努力の延長上にあります。「女と口を狙え!」「金持ちから流行らせろ!」「必ずメモを取れ」などのアジテーションは、「地味な努力」を背景とした「金言」です。藤田さんの偽悪的で、露悪的な言葉の端々には、こうした「努力」が見え隠れするのです。誰もが「やれば出来る」のだけれど、なかなか「やれない」97個の成功法則が、常に開かれて「ある」ことが、本書の要諦なのでしょう。それを、やり通した人が、さんや柳井さんのような大経営者になれることを担保されている「約束の書」、そんなイメージが、この本にはあるように思われます。

4.仲間の戦死・敗戦・貧困ゆえの「人生カネやでーッ!」

 本書のタテ糸が「金儲けの法則」なのはもちろんですが、ヨコ糸としてあるのが、人生の痛みを盛り込んだ「義理人情の経営」です。本書が復刊を待たれた理由は、実はここにあるのではないかと思われます。「勝てば官軍」と徹底的に合理的な経営を行う藤田さんを動かすのは、実は極めて非合理な「人情」だと思えてくるのです。藤田さんは1926(大正15)年生まれ。最後の「大正世代」です。「7人に1人」が「戦死」した日本史上例を見ない世代。「ハンバーガーを和食にした」藤田さんの背景に、こうした敗戦、アメリカへの劣等感があることが、本書を読む読者に一種の「共感」を与えていると思います。たとえば、本書に登場するケネディ米大統領への直訴状のくだりは、自分の旧制松江高校時代の仲間が神風特攻隊で散華した話を盛り込み、「アメリカ悪徳商人」に対する日本人の真心が込められています。さらに、敗戦の原因、「持たざる国」の貧困と真摯に向き合った面も垣間見えます。

 藤田さんは、あるインタビューの中でこう語っています。♥♥♥


 「私はやはり、第二次世界大戦に日本が負けたというのは、米国の物量というかな。米国の経済力に負けたと。だからこれからは、やはり金が無かったら勝てないと。日本の精神、竹槍で米国に挑戦したって勝てないんでね。やはり経済力であり、物量であり、お金の力が無かったら勝てないと。「人生は金や」と。で、金も無いのに、いろんな事業を興すとか救国済民で、いろんな人を助けるとか、生意気なことを言ったって、金がなきゃ救国済民もならんですよね」  (1993年藤田田インタビュー録音記録 中村芳平取材)


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