『英語は決まり文句が8割 今日から役立つ「定型表現」学習法』

 2022年に出版された語彙学習に関する専門書によれば、定型表現に関する研究の約半数が過去10年間に行われている、といいます。定型表現というのは、いわゆるイディオムやコロケーション、句動詞、構文などをまとめて言う言葉です。英語母語話者の言葉は5~8割が定型表現だというデータもあり、これらに注目した学習が重要となってきます。言語研究の世界では、長い間片隅に追いやられていました。長い不遇の時代が終わり、定型表現は脇役から主役へ躍り出た、と指摘する研究者もいます。 近年ではphraseologyという分野でも定型表現に関する研究が盛んに行われています。phraseologyはその名の通り、フレーズ(phrase)に関する学問(logy)のことです。定型表現が言語使用において重要な役割を果たすことが認識されるにつれて、定型表現に関する多くの研究が行われるようになっています。特に、2000年代以降にその傾向は顕著になり、定型表現に関するすぐれた研究書籍も多数出版されています。このように、学問(=理論)においてはようやくその地位を確立した定型表現ですが、英語教育(=実践)においては、その有用性が十分に浸透しているとはまだ言い難いのが現実です。

 筆者の中田達也(なかだたつや)先生は言語学、特に第二言語習得(second language acquisition)を専門としておられます。「第二言語習得」とは、母語以外の言語(外国語)の学習プロセス解明を目指す研究領域です。筆者は特に、外国語における語彙習得に関して多くの研究を行い、国際的な学術専門誌(ジャーナル)や書籍に論文を多数発表しておられます。勤務先の大学では、第二言語習得や英語教育に関する講義やゼミを担当し、大学院でも第二言語習得に関する研究指導を行っておられる研究者です。2019年には『英単語学習の科学』(研究社)、2022年には『英語学習の科学』(研究社)という書籍を出版されました。定型表現に関する近年の研究からめざましい成果が生まれていることを考えた上で、定型表現の役割・分類・学習法をわかりやすく解説したのがこの本『英語は決まり文句が8割 今日から役立つ「定型表現」学習法』(講談社現代新書、2022年)です。確かに、単語だけを覚えていても、連語になると意味が取りづらくなったり、いざ使おうとしたときに言葉がつながらなかったりする経験は私にもあるので、定型表現として丸ごと覚えてしまうというのは、かなり効果的だと思います。

 What a shame!という定型表現があります。「何てひどいことだ、全くかわいそうだ、とても残念だ」という意味の同情表現です。しかし、「shame=恥」という知識しかないと、「何ていう恥だ」「恥さらしだ」と非難されている、と勘違いしてしまうかもしれません。単語の意味だけ知っていても、コミュニケーションは成立しないのです。

 この本が画期的なのは、実際にインターネットなどを活用して、定型表現を学習・検索する方法を、非常に詳細に記述している点です。例えば、IDIOM searchというサイトを使うと、文章中に出てきた定型表現を教えてくれて、これをもとにその定型表現がどんな文脈で使われているかを知ることができます。その他にも、具体的なサイト名や教材名を多く挙げて、有用な学習法を示してくれているのはとても心強いですね。これまでの学び方とは異なる方法に触れることで、新たな英語学習の一歩を見つけたいものです。⇒中田先生のウェブサイトはコチラです。

 定型表現を用いる利点は、言語使用の正確性や流暢性が上がる、単語の知識が深まる、文法知識の習得が促進される、など多数を指摘しています。例えば、以下の表現を英語にしてみてください(下線部注意)。♥♥♥

⑴ 私の上司は私のことをいつもフォローしてくれます

⑵ 今晩、遊びに出かけようよ。

⑶ 私の母は切手を収集するのが好きです。

⑷ 劇場内では携帯電話はマナーモードに設定するか、電源をお切りください。

⑸ 昨晩あなたの夢を見ました。

⑹ 電車がとても寒かったので、自分の息が白かった

⑺(相手の言うことが信じられず)うそでしょ

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