◎「一太郎」の方向性、間違ってないか?!
ワープロソフト、私は長年の熱狂的な「一太郎」ファンです。教育現場では今どき珍しい人種だと思いますが、どんな込み入った文書でも、このソフトで作ることができます。私が「一太郎」にこだわる理由は、①日本語の文書作成に最適化ソフトであること、②ATOK辞書や文章校正ツールが便利であること、③PDF編集ソフトや読み上げソフト詠太が付いていること、④「花子」が使え、罫線機能が充実していること、⑤利用者が少ないので、差別化した美しい書類が作成できること、⑥種々の美しいフォントが利用できる、などが挙げられます。「WORD」との互換性が弱くレイアウトが崩れてしまう、図形作成機能は「WORD」に劣る(「花子」を使えばOK)、ファイル交換に不便、などの欠点はありますが、私にとってはメリットの方が大きいのです。
純国産アプリの日本語ワープロソフト「一太郎」シリーズ。もう長年にわたって、毎年冬の2月に新バージョンをリリースしてきましたが、今年も2月10日に「一太郎2022[ATOK40周年記念版]」が発売され、届けてもらいました。新作のテーマは「オンラインも、リアルもハイブリッド一太郎」です。「(コロナ禍のもとで)利用形態が多様化した」ことを理由に、自宅やオフィスに加えて、出先などのリモートワーク利用を想定した機能強化を図ったとしています。 出先で文書を作成していると、ディスプレイに映った情報を隣席の不特定多数が目にすることで、情報漏えいにつながります。ノートPCの画面に、のぞき見を防ぐプライバシー・フィルターを貼っているユーザーも多いことでしょう。この環境を「一太郎2022」側で再現するのが、新機能の「プロテクトモード」「プライバシーモード」です。 「プロテクトモード」は、「一太郎2022」で編集した文章ファイルの編集履歴や検索履歴、ATOKの推測候補などを非表示にします。推測候補[自動表示]/ファイル履歴/検索履歴/コピー履歴/文書情報/添削情報/付箋・注釈マークの表示を抑制することができます。「プライバシーモード」は、編集画面にマスクをかけて半透明にし、編集行のみを表示する機能。「プロテクトモード」と同様に各種履歴やタイトルバーの文書名、各種プレビューも半透明になるため、のぞき見による情報漏えいを未然に防ぎます。なお、「プロテクトモード」も「プライバシーモード」も、非表示およびマスクの対象はユーザーがカスタマイズすることも可能です。情報機密をたくさん扱う現代らしい機能です。でもこれらが、普通のユーザーに必要な機能かどうか?は、はなはだ疑問です。
「 一太郎2022」内で文章の表現や誤字・脱字を指摘する「文書校正」も機能強化を図っています。新たに加わった確認要素は「回りくどい表現」「命令的表現」の2項目。ほか文書作成機能としては、縦組み時の脚注で括弧を縦中横(たてちゅうよこ)で表示する機能や、別章などの連番を挿入するときに連番の後に続く文字列を自動的挿入する機能、以前のバージョンでは行をまたいでいた小説用三点リーダーや小説用ダッシュ、「くの字点」のような踊り字の行またぎを抑止する機能を強化した。 加えて、冊子作成時のノンブル(ページ番号)を非表示にしたい場合にノド側(閉じ側)隠しノンブルを挿入する機能や、A4用紙で三つ折りリーフレットを作成する機能を用意しています。しおりやフリーペーパーなどテンプレートの種類は30種に及びます。「一太郎2022」で、書くことに専念するためのベストの環境が整います。主立った作業がキーボードで完結するファンクションキーセットや、文書作成をスムーズに進められる「きまるスタイル」など、便利な機能も後押しします。文芸作品、研究論文、ビジネス文書など、書くことのプロフェッショナルにも愛用者が多い一太郎で、アイデアや想いを、しっかり伝えることができます。オンライン画面共有やプレゼンテーションに適した「きまるスタイル:スライド」30点を用意。オンライン画面共有に最適な16:9の比率で、手早くスライドを仕上げることが出来ます。オンライン会議などで相手に正確に伝えたいときに使えます。また、用途に適して使い分けできる30点の「スライド専用背景」も用意しています。新たな特徴をご紹介してきましたが、残念ながら私にはどうでもいい機能ばかりで、あまり魅力的に感じません。一般ユーザーが本当に必要としている機能なのかどうか、はなはだ疑問に思います。
私の買い求めたのは最上位版「一太郎2022プラチナ」です。私はジャストシステムの統合グラフィックソフト「花子」のファンですので、もう長年ずーっと最上位版を買い求めてきました。まず、フォントとして「凸版文久体 5書体」「フォントワークスデザイン書体7書体」の全12書体をバンドルしています。これはユーザーには嬉しい特典です!電子辞典「デジタル大辞泉 for ATOK」は、2012年発行の大辞泉 第二版(25万7,000語を収録)をベースにデータを更新し続け、2021年10月時点で約30万語を収録。もちろん「一太郎2022」だけでなく、ATOKの連携電子辞典としても使えます。 ほかにも、日本語4話者による括弧の読み分けに対応した読み上げソフト「詠太12」、新型コロナウイルス感染症対策など時事的な注意喚起部品を追加し、2022年で35周年を迎えるグラフィックソフト「花子2022」、画面キャプチャ・加工アプリの「画面カッター Neo」、電子印鑑機能を強化してマイナンバーカードの取り込みなど電子署名の付与と検証に対応した「JUST PDF 5」、表計算ソフト「JUST Calc 4 /R.2」、プレゼンテーションソフト「JUST Foucs 4 /R.2」 などが含まれます。
ここまで、「ATOK for 一太郎」の名前が出てこなかったことを不思議に思った人もいるでしょう。ATOKは非常に優れた日本語変換システムですが、かゆい所に手が届きすぎて、アホみたいな変換をすることもよくあるのは事実です。今回の「一太郎2022・一太郎2022プラチナ」に付属するATOKは、40周年を記念して「ATOK Passport プレミアム(1年更新制)」へと変更されました。 従来の一太郎シリーズは、パッケージをいったん購入すれば付属のATOKを永続的に利用することができましたが、今回はATOKに関してのみ、「部分的なサブスクリプション」を導入した形です。入力ソフトだけは毎年お金を払いなさいということになります。ジャストシステムの説明によれば、「ATOK Passportプレミアム」の契約が終了すると、「一太郎2022」上でもATOKが使えなくなります(サブスクリプションを更新すれば使用可能)。旧版の所有が前提となりますが、「一太郎2021」の「ATOK for 一太郎」などを使用することになります。もう何年も前から「一太郎」シリーズは劣勢です(ジャストシステムの経営状況も悪化)。今回の無謀なサブスクリプションの導入では、ますます「一太郎」離れが加速するのではないか、というのが私の見立てです。
あ、そうそう、昨年、政府内で相次ぐ法案のミスなどを受けて、「一太郎」禁止令が出たことが思い起こされます(⇒コチラです)。中央省庁ではワープロソフトとして「ワード」を使うのが主流となっていますが、一部では「一太郎」が使われています。互換性の問題から、相次ぐ法案のミスの理由とされたり、民間企業とのやり取りで不便が生じているとして、「一太郎」の使用を問題視する声が上がりました。まさに「とばっちり」のような事件でした。
今回の機能改訂については、否定的な思いが強い私です。高い値段を払った割には不満が高まります。必要最小限の機能を充実させてもらえば、私などは十分なんです。余計なものが多すぎます。「一太郎」や「花子」の重宝している部品(今回は案内図ピクトグラム・注意喚起部品が追加、これは嬉しい!)をさらに充実したり、画像機能を拡充してもらえば有り難いんですが……。♥♥♥
【追記】 予約特典として「ナノブロック干支寅 一太郎衝立付き」が付いてきましたが、こんなものはちっとも嬉しくありません。ユーザーの希望が分かっていない好例です。
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