利他で動けば利自になる

 一ヶ月にわたる入院生活の中で、昼夜を問わず懸命に飛び回る医師や看護師のみなさんを間近で見ていて、「人のために尽くす」ということの大切さを改めて考えさせられたことでした。

 仏教の教えである「自利利他」を、ビジネスに最初に取り込んだのは、室町時代の近江商人だったと言われています。全国の近江商人は、僧から仏法を聞くようになり、「自利利他」の精神を商売に取り入れるようになります。その結果、近江商人の商売は「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)として評判になり、売り手も儲かり、買い手も満足し、世間も高い評価をするような商売に励んだそうです。このような商売を続けていくことで、彼らは遠隔地の行商先でも、次第に信用を集めていき、全国的に繁栄していきました。

故・稲盛和夫さん

 現代では、京セラ」の創始者である故・稲盛和夫(いなもりかずお)さん(昨年8月に90歳でお亡くなりになりました。⇒私の追悼記事はコチラです)が、「自利利他」をビジネスの世界に取り入れた成功者として有名ですね。稲盛さんは「経営の神様」と呼ばれ、「利他の心」を重要視しており、「自分を犠牲にしてでも他人を助けよう」、「利他の心を判断基準として行動することが大切」と述べて、「利他の心」を人生で一番大切なものとして挙げておられます(⇒私の詳しい解説はコチラです)。最近、月刊『致知』12月号と、『PRESIDENT』12月2日号稲盛さんの追悼特集を組んでおり、とても面白く読みました(写真下)。

▲お亡くなりになった後も影響力は甚大です

 「周りの人を幸せにするために働く」ことこそが目標です。「働く」は元来「傍楽」で、はたを楽にすることです。勝ちたい、儲けたい、そのような利己的な欲求ばかりで仕事をしていたら、決して成功することはないでしょう。短期的にうまくいったとしても、長続きはしません。「自分さえ良ければいい」という人は、周りから嫌われるからです。少なくとも好かれることはないでしょう。「お金を追うな、仕事を追え」というのも、私の好きな言葉で、仕事上の信念となっています。⇒詳しくはコチラをご覧ください

 この私も、数多くの先輩の先生方から教えてもらったことを、さまざまな形で教材に盛り込んで、みなさんに提供・還元してきました。「センター試験」の対策本を自費で第14版まで作成して、生徒達の勉強に多少なりとも貢献しました。今まで作成した数多くの資料を、このウェブサイト「チーム八ちゃん」のブログ情報の発信や、ブル具「ダウンロードサイト」(自腹)で自由にダウンロードして利用していただけるようにしているのも、まさにこの「利他の精神」によるものです。その他、最近では「共通テスト」対策の最新資料を、全国たくさんの先生方にご提供させていただいております。

 古今東西、大成功を極めた人ほど、「お客さまのため」「社会のために」という信念で仕事をしておられます。そんな人は周りから好かれるので、結果的には儲かるという仕組みです。松下幸之助さんや、稲盛和夫さん、スティーブ・ジョブズさんが好例でしょう。宅急便の世界において「サービスが先、利益は後」信条とした、「クロネコヤマト」の創業主・小倉昌男(おぐらまさお)さんも思い起こされます。私はこの話を聞いて以来、熱狂的な「クロネコヤマト」ファンになったぐらいです。こうした生き方は「先義後利」として知られています。

 サービスというものの本来は、相手を喜ばせるものであり、そしてまたこちらにも喜びが生まれてこなければならないものとし、そういう喜ばれ喜ぶ姿の中にこそ真のサービスがある。(松下幸之助)

 「お客さま第一」というフレーズを掲げている会社ほど、実は「お客さま第一」が実行できていないことが多いという印象ですね。口では「お客さま第一」と謳いながら、業績に結びつかないのは、金儲けの手段として「お客さま第一」を行っている会社です。「お客さま第一」の結果、売り上げが向上するのであって、売り上げのために「お客さま第一」を行ってもうまくはいきません。この順番が大切なのです。そのこと自体を目的にしなければなりません。お金を儲けるための手段ではないのです。ここを間違えないようにしたいものです。

 私が尊敬する経営コンサルタントの小宮一慶(こみやかずよし)さんによれば、「お客さま第一」の本来の意義は、一つには「お客さまに良い商品やサービスを適正な価格で提供すること」であり、二つ目には、「働く人に働きがいを与える」です。この二番目が大切です。「お客さま第一」を標榜しながら、働く人が働きがいを感じられず、疲弊しているということであるなら、それは「お客さま第一」とは名ばかりで、実は、「金儲け第一」「内部第一」が現実の姿のように思えます。先の稲盛さんが、京セラ経営の理念として、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」と掲げておられることに注目したいと思います。♥♥♥

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