characterとpersonality

   日本語の「性格」を英語で言うとき、 character personalityという二つの英単語があります。この二つの単語はいったいどこがどう違うのでしょうか?

 「character」は、ギリシア語の charakter「刻みつけられた印」から英語に入りました。「印刻」から「記号」となりさらに「性格」の意味になったものです。それに対して、「personality」は、ラテン語の personalis 「個人の」から英語に入りました。personality の -ity は「性質、状態、程度」などを表す語尾です。personality は、「個人の性質や状態」から「個性、性格、人格」という意味になりました。

 「character」は、その人の持つ特徴や人格、品位など道徳的な性格を表す語。一緒に使われる語には、 bad, good, great, noble などの形容詞があります。必ずしも、個人について用いられるとは限らず、集団・国民性・動物・非生物に関しても用いられます。一方「personality」は、他人への振る舞い方や印象を表す人柄、性質を表す語で、一緒に使われる語には、pleasant, warm, lively, violent, quiet などの形容詞があります。

 「character」は基本的に「変わらない」部分で、あなたの内面そのものを表す単語です。それに対して「personality」は、態度や振る舞いとして現れる部分の性格です。状況や判断される人々によって変わりうるものです。周囲に与える影響や関係をかもし出す「性格」です。

 私はこの両者の違いに関して、若い頃にいろいろと調べて、次のような【類義語】解説を『ライトハウス英和辞典』(研究社)に書きました(この辞典の【類義語】欄は故・竹林 滋教授の命で私が全部執筆したものです)。特にその用例が参考になるでしょう:

【類義語】 character  道徳的・倫理的な観点からみた人格・特性  personality 人柄・個性といった意味での特性:Professor Smith has character but no personality. スミス教授は立派な人だが、おもしろ味がない。 

 このような両者の違いを、尊敬する故・渡部昇一先生と故・谷沢永一先生のお二人が、歌人の石川啄木(いしかわたくぼく)を例に出して語っておられました(『人生行路は人間学』(PHP研究所、1997年))。金田一春彦先生石川啄木のことを、あんな嘘つきはいない、と言って激怒しておられたというのです。啄木の破廉恥のために両親がどれだけ困らされたことか、啄木がどれほど親不孝であったかを、さんざん見ておられます。父・金田一京助先生石川啄木は、同じ岩手県渋民村出身で、小中学校の先輩と後輩関係になり、唯一無二の親友同士でした。実は、伝記を読むと、啄木という男は、お金にルーズで、女性にもルーズなダメ男でした。あれだけ立派な歌を作った啄木がです。最も有名なところでは、「たはむれに 母を背負いてそのあまり 軽きに泣きて 三歩あゆまず」「東海の 小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる」などの感動的な歌がありますね。彼は親不孝をしながら、自分は親不孝だと思っていました。本物の親不孝には、反省がないので歌は作れません。彼は友人の金田一京助先生をだまして、なけなしのお金をとっては吉原に直行します。心の中では悪いと思いながらも、次にまた同じことを繰り返します。そんな破廉恥な行動を起こすエネルギーがあって、それを反省するセンサーもあって、表現力があって、はじめてあの感動的な作品ができるわけです。啄木には、このような二重人格のようなところがあったというのです。お金を貸してくれと言われれば、自分の蔵書を売ってお金を工面します。奥さんの嫁入り道具の着物まで質屋に入れて、啄木のためのお金を作っています。住むところがないと言えば、下宿に一緒に住もうと言い出したりもしました。characterというのは、修養してだんだん固めていく形、つまり能面のようなものです。対してpersonalityは、固まらない状態のまま、豊かに湧き出てくるものです。啄木は友人の金田一京助夫妻から金を借りる時は、これで生活を建て直そうと思うのでしょうが、人格が固まっていないわけですから、金を手にした途端にフニャフニャとなって、遊郭の方へ行ってしまうのです。金田一家に金を借りに行っている瞬間には、その金で吉原へ遊びに行こうという計画はなかったと思います。そこまでの悪ではありません。ところがいったん金を握ってしまうと、前後の見境がなくなって人格が変わってしまうのです。せっかく金があるのに、これをむざむざ生活費になし崩しに使ってなるものか、一発パーッとやろう!ということになるのです。わがままで見栄っ張りな借金王なのですが、その実、明るく素直でさっぱりとした性格でもありました。両親の苦労をさんざん見ていた金田一春彦さんが、今もって啄木を許せないのは当然かもしれません。♥♥♥

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