松井稼頭央と茶髪

 昔、プロ野球のパリーグ・西武ライオンズが黄金時代でめっぽう強かった頃、松井稼頭央(まついかずお)という名ショートがいました。盗塁王にもなった、茶髪・金髪で奇抜な格好をしては、注目を集めていた選手です。日本人内野手として初のメジャー挑戦ということで、大リーグ(メッツ)に活躍の場を求め(3年総額約26億7,000万円で契約)ましたが、結局、芽が出ず期待ほどの活躍はできずに(それでも日本人内野手最長の7年間プレー、メッツ⇒ロッキーズ⇒アストロズ)、楽天に戻りプレーしていました。日米通算で2705安打で、MVP、トリプルスリーも達成したレジェンド選手です。

 その彼が、まだ西武時代に、突如として、トレードマークである茶髪をばっさりと切って黒髪にしてきたことがありました。大事件です!これは息子の非行に悩む、ある主婦からもらった一通の切実なファンレターがきっかけでした。

 髪を金髪に染めた松井さんの姿を見て、子供が不良になりました。卒業式に金髪、私服姿で出席するなど、もう親の手に負えません。もう少し松井さんが与える影響を考えていただけませんか。

 この言葉にはさすがの松井選手自身も、身につまされました。マスコミへの露出度増加による自らの社会的影響力の大きさを痛感させられると同時に、青少年たちへの間違ったイメージが伝わることへの罪悪感に思い悩んだそうです。そしてバッサリとカットして、黒髪に染めあげました。「髪が黒いぞ!」「あれれ、茶髪じゃない!」と、選手間・報道陣にどよめきが起こりました。「僕が黒くすれば、少しは青少年の役に立つかなと思って」松井選手。こうして改心したはずでだったんですが、またしばらくすると元の奇抜な格好に戻ってしまいました。人間、本性はそう変わらないということを如実に物語っている話ですね。

 私の尊敬する故・野村克也(のむらかつや)さんは、以前こんなことを書いておられます:

 評論家の草柳大蔵さんに聞いたところでは、「髪の毛は毛細血管であり、そこには人間の心理が表れる」という。髪型で自分を主張しようとするのは自己顕示欲の表れと言っていい。仕事に対する姿勢は、まず服装や態度に表れる。野球選手にかぎらず、ろくに仕事のできない者ほど外見で目立とうとする。仕事や生き方に自信が持てないから、外見で自分の存在を認めてもらおうとするわけだ。野球選手はプレーで目立てばよろしい。プレーで自分を主張できるようにならなければならないのだ。「心技体」とよく言われるが、よい仕事をするためには体力・技術・気力のバランスがとれていることが大切だ。自分では個性と思っているのか知らないが、奇抜な髪型をするのは「心」が乱れている証拠なのである。むろん、髪型やファッションに気を遣うこと自体は悪いことではない。しかし、それはきちんとTPOをわきまえた、人に不快感を与えない清潔なものでなければならない。プロ野球選手は、子どもが憧れる存在だ。スター選手がだらしない格好をしていれば、子どもたちが真似をしてしまう。  ―野村克也『強打者列伝』(角川oneテーマ、2014年)

 わたしは監督時代、選手に対して「茶髪や金髪のような意味のないことはするな」と身だしなみに対して口を酸っぱくしていった。「身だしなみまで監督が注意する筆よがあるのか?」と疑問に思う人もいるかもしれないが、わたしにいわさえれば大いにある。グラウンド上で「さすがプロだな」という感動を与えるのが野球選手ではないか。ファッショやスタイルが売り物の芸能人であれば、そうした身だしなみはいいだろうが、プロ野球選手に芸能員と同じスタイルなど必要ない。ある心理学者によると、茶髪や金髪にしたがる若者の心理は「自己顕示欲」なのだという。「これだ!」と自身を持って目立てるものがないから、服装や髪の毛でごまかしてしまう。野球以外の部分で目立とうとするのは、二流の証拠だ。 ―野村克也『野村克也全語録』(プレジデント社、2022年)

 松江北高でも、3学期の終業式後に行われる「離退任式」には、体育館会場に、二週間前に卒業したばかりの卒業生たちが沢山押しかけて参列してくれるのですが、この人たちの格好を見ると、情けない人たちがいかに多いことか!!大学の合格発表と同時に、髪を異様な色に染め上げ、奇抜な格好をしてやって来ます。はたから見ていて不快感を覚えます。「この人たちは本当に大学に勉強しに行くんだろうか?!」と疑念を抱いてしまいます。教育の何かが間違っているのでしょう。スタートをゴールと勘違いしているのかもしれません。私がサッカーが大嫌いなのは、こういう勘違いをしたちゃらちゃらした選手が多いからです。本当にすごい選手は、プレーそのもので魅了してくれます。「いや、外見と内面は無関係だ」と主張する人もいるでしょう。大好きなさだまさしさんが、ファンクラブ(「まさしんぐワールド」)会員に向けて、意見には個人差があります」というタオル(今治製)を販売されたんですが、この問題もそうなんでしょうね。でも私自身は、外見や格好ではなく、中身で目立ちたいと思っています。「仕事で勝負する」ということです。♥♥♥

【補足】 数年前に西武の二軍監督の松井稼頭央が次期監督になることが決定的、と報道がなされました(誤報でした)。西武球団内にあった「FAで出て行った人間には二度と敷居をまたがせない」という古い慣習が改められるきっかけとなったのが、松井二軍監督の帰還作業でした。2019年から、西武の2軍監督として指揮を執り、今年はヘッドコーチに就任していましたが、辻 発彦監督の退任(3年連続V逸)に伴い、来季からは監督を務めることが決まっています。ただ選手時代にレジェンドであった人たちが、ことごとく新人監督としては失敗していることを考え合わせると、前途多難であることが予想されます。「名選手、必ずしも名監督ならず」。巨人の高橋由伸監督しかり、広島の野村謙二郎監督、阪神の金本知憲監督など。

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