優先席

 私の自宅のすぐ近くに小学校があり、朝夕私の家の前を通って、小学生達が集団で登下校していきます。誰一人挨拶をする子どもはいません。無言で通り過ぎていきます。ある日、一人だけ女の子が元気よく「おはようございます」と言って学校へ向かっていきました。思わず抱きしめてあげたくなるぐらいに嬉しかったのを覚えています。「知らない人には口を聞くな」という指導がこの小学校では行われているそうです。

 今日バス停に向かって杖を着きながら歩いていると、信じられない光景を目にしました。この小学校の校門前に、校長先生らしき年輩の先生と若い先生が二人立って、登校してくる小学生に大きな声で「おはようございます」と頭を下げておられます。生徒たちは無視して無言でそのまま校門の中へと入っていきました。次々と生徒達がやって来ますが、同じ光景が繰り返されます。いったいこの学校はどういう教育をしているのか?現在の松江北高は、ほとんどの生徒が先生に対しても、お客さんの姿を見てもあいさつ一つしません。知らん顔です。どうやら根はこういった小学校の教育にあるのかなと思いました。

 電車やバスには「優先席」というものが設けられていますね。米子に通うために、朝一番の市営バスに乗って松江駅まで行きます。私が乗り込むバス停ではすでに満員で、多くの人が立っています。お年寄りの方も立っておられます。優先席には、全て附属小学校の子どもたちが陣取りはしゃいでいます。確か「優先席」というのは、お年寄りや妊婦さんや障がいを持った人たちのために設けられた席だと思っていました。お年寄りが立っていようが、私も今日は杖をついて立っていましたが、子どもたちは全く意に介しません。優先席は子どものための席ということなんでしょう。私の尊敬する名文筆家の故・外山滋比古先生がこんなことを言っておられました。なるほど。

 僕は日本人の他者への労わりを壊したのは、電車の優先席だと思っているんです。あれができてから、人々の普通の席を他人に譲るという感覚が薄れていきましたよ。暗に「年寄りは優先席の方へいってくれ」という人たちが増えたようにも感じます。優先席のせいで、我々の道徳観は多少低下したんじゃないですかね。僕たちは戦争を知っている世代だから、年上に対して礼儀が厳しかった時代を良く知っています。その後、敗戦を境に大人や年上の権威が崩れ去るのも見た。

 「勉強」を教える前に、「人間」を教える必要がありそうです。♥♥♥

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