『頭をよくする私の方法』

 若い頃、故・竹内均(たけうちひとし)先生(東京大学名誉教授)の本をむさぼり読んでいました。先生は、かつてNHK教育テレビの科学番組をにぎわした地球惑星物理学者です。科学雑誌「Newton」を創刊し、編集長でもあった人です。加えて代々木ゼミナールの校長も務められました。そんな多忙な中で、本を数百冊も書いておられます。まさにスーパーマンです!

 竹内先生の著作の中の一冊に、『頭をよくする私の方法~人の何倍も「頭」と「体」をつかいこなす秘訣』(三笠書房、1987年)があります。この本の中で「頭の使い方に王道あり」と主張しておられます。効率的な本の読み方から、語学をマスターする秘訣、賢い情報収集・整理術、そして人生の目的を見つけるヒントまで、頭の効率を上げるため生活術に関して、数々のアドバイスが参考になります。以下の文章はそのカバーにあった巻頭言です。竹内先生の「人生哲学」がにじみ出たような文章ですね。私はどれだけ竹内先生の教えに感化されたことでしょう。若い時にこういう先生に巡り会うことがいかに大切かを、私は日頃から生徒達に力説しているんです。

 私の考えでは、人生の理想は「自己実現」にある。自己実現とは、①好きなことをやり、②それで食うことができ、③しかもそれが他人によって高く評価されることである。自己実現のための「自分の好きなこと」を「大きい夢」と呼ぶとすれば、今すぐ「小さい一歩」を踏み出すことが重要である。私は凡人だから、「一を聞いて十を知る」というような、器用なことはできない。だから「うまずたゆまず」一つずつやって、現在に至っている。小さい一歩を「うまずたゆまず」続けると、最初考えたよりはずっと早く「大きい夢」が実現してしまうものである。

 何事も楽して成せるわけがない。「大変だ」と悲鳴をあげるくらいのことをやってちょうどいい。それがいい意味での「緊張」をもたらし、私たちの頭にもハリを与えるのである。毎日毎日が快い緊張の連続であれば、最高であろう。

 常に好奇心が刺激され、頭が自然に活性化されるような「毎日」をどう作り出すかについては、その人その人によってやり方が違うだろう。私の体験から生まれた知恵をぜひ役立ててほしい。   ―竹内 均

 「まとまった時間を探すな、時間をまとめろ」「本を書くときに、一度に書くのではなく、まず断片を書いて集めることから始める。あとはそれを組み立てて、本を作るのです」「人間の頭に上下などはない。要点をつかむ能力と不要不急のものを切り捨てる大胆さだけが問題なのである」など、たくさんのことを先生から学びました。

 その竹内先生が、松江市に講演に来られると聞き、島根県立松江南高等学校で3年生担任をしていた理系クラス全員に、どうしても先生の話を聞かせてやりたいと思い、講演チケットの手配に走りました。当時、あのふちの厚いメガネがトレードマークの先生は「メガネの三城」(みき)のCMキャラクターでテレビに出ておられ、この講演会も三城」の後援だったんです。偶然、私のクラスに、松江・三城支店と親しくしておられるめのう店の息子さんがいました。彼に何とかならないかと無理を言って頼みこみ、クラス全員分の入場券をゲットしてもらいました。その彼も、今では従業員700名を抱えるグループ企業の社長さんです。当日はクラス全員で、「くにびきメッセ」会場の前の席を陣取り、先生の講演に聞き入りました。その頃、先生は80歳が近かったと思うのですが、生徒たちはみな「信じられない!」「若い!」「あの元気はどこから来るの?」「話に引き込まれた!」といった感想を寄せてくれました。講演後、生徒諸君の感動記録を竹内先生にお送りしたのもとてもいい思い出です。♥♥♥

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