「副詞」の難しさ

 私の尊敬するデイビッド・セイン(David A. Thayne)先生が、英語で一番難しいのは副詞ではないか、と書いておられました。辞書の編集に携わっている私も全く同感で、各所でそのことをお話してきました。「英語の副詞って難しい!」(⇒コチラです)と題してこのブログでも述べていますし、今までにも数々の具体例を取り上げてきました(例えば、lazily, lamely, religiously, technically, basically, periodicallyなど多数)。

 英語の使い方でいちばんむずかしいのは、副詞ではないかと時々思います。副詞は修飾する形容詞や動詞との関係、文全体ではたす役割が特に複雑で、英語を読む際にも書く際にもいろいろなことを考える必要に迫られるからです。特に英語を書く際、「ここで副詞を使うのが効果的だろうか、むしろ形容詞や動詞を使って意味をわかりやすくするのがいいのでは?」と考えたりします。わたしもアメリカの小学校や中学校の作文の授業で、「なるべく副詞を使わずに、同じ意味の形容詞や動詞で表現してみよう。そのほうが効果的に伝えられることもあるし、くだけた言い方を避けることもできる」とアドバイスされたことがあります。確かに英語初級者が英語を書くときは、副詞を使わないほうがすっきり意味の通ることはあります。  ――『ネイティブが教える英語の副詞の使い方』(研究社出版、2020年)

▲この本なめるように読みました。いっぱい教えられるところがある名著です。

 例えば、一例を挙げてみましょう。

A.He suddenly became famous.

B.  He became famous suddenly.

「彼は突然有名になった」と訳して、AもBも同じ意味だと考えていませんか?ことはそんなに単純ではありません。副詞の位置によってその意味合いが変わってくる代表例です。さらに、熟語のout of the bluesuddenlyの言い換え表現として覚えた人が多いと思いますが、ここでout of the blueを使うと不自然に響くという語感が分かりますか?(私は大学生時代から読書の際にずっとout of the blueの用例を集めてきており、これについては後日詳しく書く予定です)事ほどさように、英語の副詞は難しいんです。

 英語の副詞を、形容詞に単に-lyがついたものと考えている人も多いようです。伝統的な学習英和辞典の中にも、意味を一つ挙げるだけ、あるいは追い込みに-lyとするだけで、軽視しているものもずいぶんあります。実は、副詞はバカにならないんですよ。もう一つだけ例を挙げてみましょう。habituallyという副詞を、hibitualという形容詞の追い込みにして意味も載せない辞典もあります。意味を挙げたとしても「習慣的に、いつも、いつものとおりに、常習的に」とあるだけです。しかしこの副詞の使い方をよく観察していると、よくない意味で使われることが多いことが見えてきます。She habitually gets angry when people don’t do everything she asks them to do.(彼女は自分が言った通りにしてもらえないとよく怒る)[セイン]のように、悪い習慣に対して使うことが多いのです。英米の辞典の用例もそのことを示しています。となれば、一番最初に挙げる訳語は「常習的に」が適当です。♥♥♥

men who are habitually violent  [LDCE]

His mother had a patient who habitually flew into rages. [CCALD, CCAAED]

There is something wrong with anyone who is so habitually rude. [CALD]

He was habitually late. [MWALED]

 

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