週休3日制

 パナソニック楠見雄規社長は、多様な働き方の実現に向けて、社員が希望すれば週に3日休むことのできる「選択的週休3日制」の導入、原則在宅でいいフルリモートでの勤務、他社に雇われる形での副業、を目指すことを明らかにしました。週末に加えて、月曜日や金曜日など好きな日を選んで休むことができます。多様な働き方の実現に向けて、社員が希望すれば週3日休める「選択的週休3日制」の導入を目指すとしたうえで、増やした分の休日は、副業や自己学習などの時間に充ててもらうことを想定しているとのことです。全面的な週休3日制への移行ではなく、あくまでも選択的です。2022年度内に予定する週休3日制の試験導入について、選択できる従業員は、約5,000人になると明らかにしました。パナソニックグループの日本国内の従業員は約6万人で、今回の試行対象となる5,000人は8%強に相当します。ただ、全員が週休3日を選ぶわけではなく、具体的な人数の目標も未定だといいます。今回のパナソニック「週休3日制」は、賃金をそのままに休みを増やすのではなく、休んだ分だけは賃金が減る形だと見られています。10月から試験的に導入を始めており、令和5年2月に本格導入します。

週休3日、4日・・・週休3日は間接部門の社員などの場合、勤務日の働く時間を増やして給与の維持可能。

フルリモートでの勤務・・・通勤圏外で可能に。親の介護や家族の転勤でも続けて働いてもらう。

他社に雇われる形での社会副業・・・週休3日で増えた休日なんどの副業で知見を広げてもらう。

法律で定めた期間を超える育児休業・・・子育てを支援し、ワーク・ライフ・バランスの実現を後押しする。

 そもそも、1965年、日本で初めて週休2日制を導入したのが、松下電器産業パナソニックの当時の社名)でした(ご存じない方もおられるので、詳しい事情を下に調べてみました)。それをきっかけに、日本人のライフスタイルが大きく変化したのでした。当時の松下幸之助さんは、松下の社員に「一日休養・一日教養」と呼びかけ、生涯学習を提案したのでした。今回のパナソニックは、「一日休養・一日教養・一日副業」を求めています。最近の『朝日新聞』の主要100社の調査によれば、副業OKという会社は、約8割にのぼります。

 2021年の厚生労働省の調査によれば、企業の休み制度の現在の状況は、週休3日制(8.5%)、完全週休2日制(48.4%)、1ヶ月のうち一部が週休2日制(35.0%)、週休1日制または週休1日半制(8.0%)と、週休3日制を選べる企業の割合は少しずつ増えてはいますが、まだ少数派です。企業によっては毎週1日しか休めないところもあるんですね。休みたくても休めない人もたくさんいるんです。飲食業界では、週末も営業しているお店も目立ちます。医療や介護の世界では、深刻な人手不足のために、交代で休むことも難しいとも聞きます。

 コロナ禍で働き方を見直す動きに伴って、週休を3日以上とする企業は増えていて、政府も去年決定した「骨太の方針」「選択的週休3日制」の導入を促す考えを盛り込んでいます。人事院も国家公務員の「週休3日制」を今夏勧告する予定と言います。現在、週休3日を選べる企業の中では、パナソニックと同じように「選択的週休3日制」の制度を設けている企業が多くあります。塩野義製薬(従業員の学び直しを後押し)、みずほフィナンシャルグループ、ヤフーなどが代表例です。これらの企業は、総労働時間を減らすのに比例して、給与も減らして対応しています。日立製作所(本社などの約1万5千人が対象)のように「給与を変えず、他の日に多く働く」ことで「週休3日」を選べる制度を導入した企業には、佐川急便や、ファーストリテイリング傘下のユニクロがあります。佐川急便はドライバーが対象、ユニクロは転勤のない「地域正社員」が対象と、どちらも職種を限定し、その中での希望者のみに適用する形で実施しているようです。

 パナソニックの試みは、日立製作所の制度と比べると、メリットを享受できる人はそう多くはないでしょう。給与や評価・昇進などへの影響がなくならない限り、「選択的週休3日制」という、他の社員よりも総労働時間が減るコースを選ぶ人は、限定的だと考えられます。「週休3日制」とはいえ、課題もあります。労働時間が減れば、当然給料も下がってしまいます。時間を維持しようとすれば、1日あたりの働く時間が延びてしまいます。なかなかな難しい問題です。

<◎メリット> 会社

・社員のモチベーションと生産性の向上  ・離職の防止  ・優秀な人材の確保・人手不足の解消  ・光熱費・コストの削減  ・残業時間の削減  ・感染症対策

<◎メリット> 従業員

・私生活の充実によるモチベーションアップ  ・働き方の選択肢の増加     ・通勤ストレス・コストの削減  ・感染症対策

<×デメリット> 会社

・労働時間の減少による業績量をこなせない  ・勤怠管理・給与体系が複雑化  ・取引先との対応・コミュニケーション不足

<×デメリット> 従業員

・1日あたりの業務量の増加  ・残業の増加

 なお、労働者の理想の週休3日は、言わずもがな「給与は維持し、総労働時間は減る」形式でしょう。ベンチャー企業などではこの形式を採用している企業もありますが、全社員がその分パフォーマンスを向上して仕事に取り組むとは想定しづらく、人件費当たりの生産性の低下が懸念されるため、大手企業での導入は難しいと考えられています。週休3日の制度の詳細には、企業ごとの働き方改革の方向性が表れていると言ってよいでしょう。週休3日により、日立パナソニックはどう変わるのか、これからどのような制度の企業が増え、どのような成果をもたらすのか──今後の動向を注視したいと思います。まさに新しい時代が来ようとしています。♥♥♥

◎そもそも「週5日制」は松下から始まった!

 松下幸之助さんは、昭和35年度の経営方針発表会で、5年後の昭和40年から画期的な「週5日制」を始めることを発表しました。「今後、自由競争で海外メーカーとの競争に勝つためには、能率を飛躍的に向上させなければならない。そのためには、休日は週2日にして、十分な休養で心身の疲労を回復し、一方では文化生活を楽しむことが必要になってきます。これで、給与も他の同業メーカーより多くても少なくならないようにもっていくところに経営の方針をもたなければならない」というのが、その趣旨で、この方針策定によって、福利厚生、健康保健対策も新しい観点から検討を加えることになってだけでなく、松下電器のすべての部門が、この週5日制の実現を、一つの大きな目標として努力することになったのでした。

 昭和40年4月16日、松下電器は5年前からの目標であった「週5日制」を実施。アメリカ並みに毎週2日の休日、週40時間の勤務体制に移行しました。従業員が休日を単なる遊びに終わらせることのないようにと、経済人、社会人として向上するために役立たせることを要望しました。松下さんは言います。「何の進歩なしに、ただ週2日休めば、それだけコストが上がり、コストが上がれば物価も上がる。これでは、会社の成績は上がらないし、世の模範ともならない。会社のためにも、個人のためにも、世の模範にもならないものは、断固として排することが大事だと思う。しかし5日制は、決してそんなものではない。一番早く5日制に踏み切ったアメリカが繁栄していることを考えると、週2日休みというものは、基本的に間違っていないと思う」

 この週5日制に対する従業員の誇りと責任感は、勤労意欲と能率の向上となって現れ、新販売体制の成功とともに、週5日制は順調に軌道に乗りました。週2日の休日を、従業員の心身の向上に役立てる面では、社員研究所で、休日に従業員のために趣味や教養の催しを始めたのでした。♥♥♥

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