「風見鶏の館」

 明治元年に開港した神戸の高台にある北野町には、明治~昭和初期にかけて、外国人たちが住むコロニアル様式の洋館(異人館)が一時は200棟を超えて建てられたそうです。今残っているのは30棟あまりですが、中でも「風見鶏の館」(かざみどりのやかた)は、一番人気の歴史的建造物です。北野異人館で一番有名な建物で、色鮮やかなレンガの外壁と、屋根に付いている尖塔の風見鶏が特徴的な建物です。1904年(明治37年)にドイツ人貿易商ゴットフリート・トーマス(Gottfried Thomas 1871―1871)の住宅として建てられた西洋館(異人館)で、重厚な煉瓦造りの外観と、屋根上の風見鶏を特徴とするネオ・バロック様式を基調とした建物です。屋根の風見鶏により「風見鶏の館」と呼ばれ、また当初の居住者の名から旧トーマス邸、旧トーマス住宅とも呼ばれています。国の重要文化財に指定されています。北野地区になる現存する数ある異人館の中で、レンガ外壁の建物としては唯一のもので、色鮮やかなれんがの色調、石積みの玄関ポーチ、2階部分の木骨構造、など他の異人館とは異なった重厚な雰囲気を持っています。まるで高貴なお屋敷にお邪魔する感じですね。また尖塔の上に立つ風見鶏はよく知られ(魔除けだとか)、今では北野町の象徴として欠かせない存在になっています。ドイツの伝統様式を取り入れた、内部の重厚な意匠の数々も見応えがあります。外国の技術力の高さには脱帽です。

 施主のトーマスは、この家を「ハウス・レナニア(ラインの館)」と呼び、ドイツ風の重厚なデザインの中に、内装には随所に世紀末のアール・ヌーヴォー様式を取り入れています(ドアノブにまで)。落ち着いた品のあるインテリアの数々です。 トーマス家では1914年(大正3年)、一人娘のエルゼ・トーマスをドイツ本国の上級学校に進学させるために、休暇を兼ねて一家三人でドイツへ一時帰国中に、突然勃発した、日独戦争により、日独が戦争状態に陥り、その結果、一家は神戸の自邸への帰還ができなくなるという悲劇が起きました。トーマス家では、館は敵性資産として没収されたと伝えられていたのですが、登記簿上では、戦争中に、売買された形にされていました。1977年10月から放送が始まったNHK連続テレビ小説「風見鶏」で全国的に知名度が上がり、北野町山本通周辺にある異人館群のシンボル的存在であるこの建物の文化財としての価値にも、注目が集まるに至りました。ただし、異人館風見鶏の館の住人だったトーマス家の歴史と、テレビドラマ「風見鶏」のストーリーは全く関係がなく、ドラマの時代設定自体が、トーマス家の在日時期とは異なるため、ドラマのモデルではありません。1978年1月に「旧トーマス住宅」の名称で国の重要文化財に指定されました。同年、神戸中華同文学校学生寮となっていたこの建物を、神戸市が文化事業の一環として買い上げ、整備した後に一般公開を行いました。平成7年1月17日に発生した「阪神・淡路大震災」では、ほぼ全壊するという甚大な被害を受けています。レンガにステンレス線でネットに結束させる技術を採用して修理、外壁のレンガの修理は36,000枚以上にわたったそうです。1年8か月かけて修復工事が行われました。元の建材を70%以上使用して再建されたことで、重要文化財指定は取り消されずに済みました。 歴史的にも重要な建物の修復には、相当の技術と費用がかかっています。

 建物東側、階段を上ったところに「玄関ポーチ」があり、角柱で支えられたポーチの上は「バルコニー」となっています。1階は中央北側をホール、南側をアルコーブ付きの「居間」とし、東側は玄関を挟んで北側が「書斎」、南側が「応接間」となっていました。居間東側のアルコーブと書斎の東側は床高が一段高くなっており、書斎東北側には八角形の張り出しを設けています。1階の西側は「食堂」、その南に「ベランダ」が。2階の間仕切りは1階と同様で、居間の上が「子供部屋」、「応接間」の上が「朝食の間」、書斎の上が「客用寝室」、食堂の上が「夫婦寝室」となっており、夫婦寝室の南にも1階と同様に「ベランダ」を設けています。建物の東南隅には「塔屋」を設け、この屋上に「風見鶏」があります。2011年の塗装塗り替えの際に、深緑色に戻すべきではないか?との指摘があったことが報じられていました。

 1階には、トーマス夫妻と14歳まで神戸で暮らしていた令嬢のエルザさんの当時の暮らしぶりが写真展示で紹介されていました。建設当時を再現した室内には洋家具、トーマス家の写真、西洋アンティークの人形などが展示されています。萌黄の館(もえぎのやかた)と2館セットで650円の割引入館料でした。高校生以下は無料です。ノスタルジックな世界へと誘われた気分でしたよ。♥♥♥

カテゴリー: 日々の日記 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中