母の教え

 雑誌『ゆうゆう』5月号(主婦の友社)には、シンガーソングライターのさだまさしさんと女優・山村紅葉さんが、「母が教えてくれたこと」と題してエッセイを寄せておられます。これは面白かった。中学生になり、本格的なバイオリンレッスンを受けるために単身上京して下宿生活を始めたさだ少年に、週に一度長崎のお母さんから手紙が届きます。最後に一行「お前を信頼しています 母より」と毎回この言葉が必ず書いてありました。これが結構重たかったと振り返っておられます。山村紅葉さんのお母さん山村美紗さんの言葉で一番思い出されるのは、「死んでも約束は守る」だそうです。その他に「金儲けに楽はない」「一流のものに触れなさい」「英語はちゃんと勉強しておきなさい」がよく言われた言葉だそうです。

 私の場合、亡くなった母から教わったことで印象に残っているのは、一度も「勉強しろ」と言われなかったことです。生前母の口から「勉強しなさい」という言葉は一度も聞いたことがありませんでした。夜机に向かって勉強していると、「テレビの水戸黄門を見よう」と言って誘いに来るのでした(母は勧善懲悪のドラマ「水戸黄門」が大好きでした)。私がそれでも動かないと、机の蛍光灯のスイッチを切って「電気代がもったいない!」とか言って〔笑〕、手をひっぱってテレビのところまで連れて行くのでした。仕方なしに一緒にテレビを見て、すぐに机に戻ったものです。そんな母親でした。教員になって以来、保護者のみなさんには、子どもに「勉強しなさい」と言ってもムダです。自分でその気になれば放っておいても勉強しますから、と言ってきましたが、母親になると分かってはいても、やはりこれは至難の業のようです。「だまされても、だます人間には絶対になるな!」も母の教えでした。正直に正直に生きることを教えこまれました。

 私の母の祖父の遺言は、「絶対に保証人になるな!」でした。なんでも保証人になったばかりに自分までひどい目にあったことが原因で、そのような遺言を遺した、と母から聞きました。母は私にも、「絶対に保証人にだけはならないように、お金の貸し借りは一切するな」と言い残しました。どうしても人にお金を貸すときには、あげたものと思って貸しなさいと言われました。日本の林業の父と謳われる本多静六博士も、そのことをこんこんと戒めておられました。


なお金を貸したり、儲け口に出資したりする以上に気をつけなければならぬことは、金融上の保証人となり、連帯の印を押したり、裏書の判を引き受けたりすることである。親戚知友などの懇意な間柄では、よく、ちょっと君が一ト判請け負ってくれさえすれば僕の事業も助かり、数日内に金も返せるから君にも決して迷惑はかけないと持ち掛けられることがあるが、うっかり請け判をしたためにとんだ目にあい、ついに一生涯それで苦しめられる人が少なくない。私の友人である知名の大学教授(W博士)のごときは、この手にかかり僅か数百円の借用証文に保証人の判を捺したばかりに、その証書が高利貸しの手に渡って転々とし、僅か五年そこそこのうちに数万円の巨額となり、その利息を払うだけに、生涯月給の差し押さえを食いつづけていたが、恐るべきは正にこの請け判である。だから、たとえ事情やむを得ず、自分の持ち物を売り払って金を出すことがあっても、決して他人の借用証書などに判を捺すべきではない。


 私は今まで母の教えを忠実に守って、お金の貸し借りは一切せず、保証人にもならずにこれまでやってきました。正解でした。♥♥♥

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