学生時代・教員なりたての時代にアーサー・ヘイリー(Arthur Hailey)にのぼせていた時期があります。“page-turner”(この言葉、当時の流行新語でした)の売れる本を書く作家でした。『大空港』『ホテル』『自動車』『ストロング・メディスン』『権力者たち』『マネー・チェンジャーズ』『エネルギー』『ニュースキャスター』『殺人課刑事』などのベストセラー作品で知られる作家のアーサー・ヘイリーさんは、2004年11月4日に心臓発作でお亡くなりになりました。彼は1920年、イギリス・ルートン生まれ。労働者階級の家庭に育ち、両親から上級学校への進学が許されず、14歳で働き始め、1939年、イギリス空軍に志願入隊し、詩作を始めます。戦後は空軍機関誌の編集に従事し、1947年カナダに移住しました。1955年に書いたサスペンス・ドラマの脚本が成功をおさめ、1959年に処女長編『最後の診断』を発表。以後、徹底した取材を武器に、巨大組織を描いた作品を次々に生み出し、1965年の『ホテル』はベストセラーとなり、数々の作品が映画化されました。同年アメリカ・カリフォルニア州に居を移すも、1969年からはバハマに居住しました。他の作品に、『大空港』『ホテル』『自動車』『マネーチェンジャーズ』『殺人課刑事』『エネルギー』などの企業の内幕小説で、「次回はどんな企業をとりあげるんだろう?」と楽しみにしたものです。『最後の診断』では大病院内部の人間模様を、『ホテル』では経営の傾いた老舗のホテルを、『エネルギー』では電力会社の組織内部を描きました。業界を緻密に徹底して取材し、そこに絶妙な人間関係を仕込んで読者を楽しませ、同時にほろりとさせてくれる作品で知られました。奥さんがそこら辺の事情を詳しくレポートしておられ、私はますます好きになり引き込まれていきました(シーラ・ヘイリー『私はベストセラーと結婚した』(サンケイ出版、1981年))。懐かしい想い出です。
大ベストセラー作家のこのアーサー・ヘイリーは、毎日丹念に新聞・雑誌を読んでいました。新聞や雑誌を穴の開くほど読むことで、次の作品のアイデアを練るのだそうです。朝刊を開けば、本を書く題材(ネタ)が五つや六つは見つかると言っておられました。私も毎日、たくさんの新聞をじっくりと穴の開くほど読んでいますから、このことは実感として本当によく分かります。♥♥♥
- 『0-8滑走路』 Runway Zero-Eight (1958年)
- 『最後の診断』 The Final Diagnosis (1959年)
- 『権力者たち』 In High Places (1962年)
- 『ホテル』 Hotel(1965年)
- 『大空港』 Airport (1968年)
- 『自動車』 Wheels (1971年)
- 『マネーチェンジャーズ』 The Money Changers (1975年)
- 『エネルギー』 Overload (1979年)
- 『ストロング・メディスン』 Strong Medicine (1984年)
- 『ニュースキャスター』 The Evening News (1990年)
- 『殺人課刑事』 Detective(1997年)