「勝てば官軍」

 ハンバーガー・ショップマクドナルド」をアメリカから日本に持って来たのは、松江北高の大先輩である伝説の起業家・藤田 田(ふじたでん)さんでした。私は藤田さんの生き方をその数ある著書で詳しく調べてみて、たくさんのことを学びました。とってもいいことをいっぱい言っておられ、ずいぶんと勉強になる生き方です。あのソフトバンクの孫 正義(そんまさよし)さんが、高校生の時に、電話で何度も断られたにもかかわらず、佐賀県からはるばる東京の会社まで出向き、藤田さんにアドバイスを受け(「これからはコンピューターの時代だ!」)、アメリカ留学に向かったことは有名な話ですね。

 しかしただ一つだけ、私には同意できない点がありました。それが「勝てば官軍」という哲学です。これは「勝てば官軍 負ければ賊軍」という言葉から来ていて、何事も強い者や最終的に勝ったものが正義とされることのたとえです。藤田さんは、ビジネスの世界には「勝てば官軍」の論理しかない、「勝てば官軍、負ければ倒産」食うか食われるかの修羅場なのだとして、「人生はすべて金だ、金だ」と主張しました。ただし、その儲けたお金を自分のためだけにため込むのではなく、社員たちの給料や福祉・医療に還元しておられたことは名誉のために言っておかねばなりませんが。

▲藤田 田『勝てば官軍』

 この哲学に従い、日本全国で「価格破壊」を引き起こすなど、経済感覚、会社経営に長けたカリスマ的人物でしたが、晩年は、日本マクドナルド」の業績が迷走するなど、それらに翳りが見え始めます。2000年(平成12年)2月からは「平日半額セール」などの大胆な新戦略を展開。適正利益を度外視するようなコストすれすれの、競合他社が悲鳴を上げお手上げになるほどの超低価格路線を実践しました。デフレ下でも業績を一段と伸ばして、2001(平成13)年7月26日にはジャスダック市場に上場を果たし、日本マクドナルドは「デフレ時代の勝ち組」、社長の藤田さん

▲藤田 田さん

「ハンバーガー王」と謳われました。しかし、インフレ時代が来ると、半額セールの打ち切りで、客数が減り、再び値下げするなど価格政策の迷走で、経営が悪化したことや、悪夢であったBSE(狂牛病)の影響により客離れを引き起こし、同2001年(平成13年)に創業以来初の赤字に転落します。2002年(平成14年)7月、日本マクドナルドの不振や、自らの体調不良などにより社長を辞任せざるを得なくなります。2002年3月、会長兼CEOに就任しますが、連結決算で創業以来の最終赤字になったことから、2003年3月28日の株式総会後、会長の退任を余儀なくされました。日本マクドナルドの経営から退いた後は、公の場に出る事は少なくなり、2004年(平成16年)4月21日、心不全のため東京都内の病院で死去されました。78歳でした。桜の花が散るように静かに退きたい」というご本人の思いとは裏腹に、毀誉褒貶の相半ばする人生でした。いわば晩節を汚し、失意のうちにお亡くなりになり、一時は成功したように見えましたが、結局は自滅してしまった印象です。マクドナルドは今ではV字回復を遂げて、大人気を博していますけどね。

 松下幸之助さんの薫陶を受けた私の尊敬する江口克彦(元PHP社長)さんは、ここら辺の藤田さんの姿勢を手厳しく批判しておられました。私も同感です。

 私自身の思い出を振り返っても、あるとき一世を風靡した経営者が「勝てば官軍」という言葉をタイトルにつけて単行本を発刊したことがあります。私は非常な違和感を感じ、そのような考え方は間違っていると私は自らの著書でしばしば批判してきました。すると、やはり、数年後にその経営者の会社は、赤字転落してしまったのです。マスコミがよく持て囃した経営者でしたが、私の考えからすれば、その経営者の凋落は至極とうぜんのこと、私の予想通りになりました。そして、「勝てば官軍」と表明していただけに、まさに自らの経営人生の晩節を自ら汚してしまったという無念を、この経営者は死に際に後悔したことだろうと思います。     ―江口克彦『ほんとうの生き方』(PHP出版)

 さて、ここからは私の考えです。法律に触れなければ何をしてもよい、という姿勢で経営して莫大な利益をあげていくというのは、明らかに間違っています。人間的に正しい道というものを歩んでこその成果であって、法律に触れなければ何をしてもよいではなくて、あの松下幸之助さんが重視したように、勝ち方に美しさがなくてはいけません。藤田さんが唯一道を間違えた点がそこだったと思います。結果さえよければそれでよいというのではなく、よりよい成果をあげることが大事であると同時に、そのプロセスも大事にする、という姿勢が大切だと思うのです。結果を大事にする以上に、それを生むまでの過程も大切にしたいというのが、私の哲学です。損得」ではなく、尊徳」で生きるということですね。私は英語の指導も、そんな思いで40年間以上やってきました。点さえ取ればそれでいい」ではダメなんです。人間力に裏打ちされた本物の英語の力をつけないといけない。賢者は歴史に学ぶ」(ビスマルク、私の好きな言葉です。彼は実際には「余は歴史に学ぶ」と言ったそうですがの姿勢で、藤田さんの失敗例を心に刻んでおきたいですね。♥♥♥

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