「勝田ケ丘志学館」創設時の目標

▲米子東高校の同窓会館内にある「勝田ケ丘志学館」

 鳥取県立米子東高等学校には、1960年から「専攻科」という浪人生のクラスがあったのですが、「官から民へ」の流れの中で、2012年度末に廃止されていました。浪人者数は、横ばい状態であるにもかかわらず、同校では、県外の予備校や自宅浪人を選択する生徒が年々増加していたといいます。これらの生徒たちを支援し、保護者の経済的な負担を軽減し、高い学びへの志を持って大学進学へ立ち向かうことができる環境を整備しよう、という目的で準備・計画されたのが、NPO法人「勝田ケ丘志学館」(かんだがおかしがくかん)です。元米子東高校の校長・山根孝正(やまねたかまさ)館長が、私財を投じて、さらには1,700人にものぼる米子東高OBの方々の温かい寄付金・協力を仰ぎながら、2019年に創立されたのでした。設立当時「日本海新聞」の取材に応えて、「高校と同じリズムで通え、地域の仲間と支え合いながら目標に向かって進める環境が整う。質の高い授業も提供できる」と、設立の主旨を話されました。私も設立当初からお手伝いをさせていただいています。山根館長が設立時に考えておられた目的は次の通りです。

▲勝田ケ丘志学館・山根孝正館長

1.県外予備校に比較して授業料、生活費等が低額で、家計の経済的負担が減少する。

2.高校時代と同じリズムで生活、学習できるため、規則正しい生活を送り安心して学習に打ち込むことができる。

3.現役時代と同様に複数の模擬試験を受験することができる。

4.高校在学中に指導を受けた先生にも気軽に相談できやすい。(米子東校出身者)

5.鳥取県西部地区出身者同士が切磋琢磨することで、連帯感や地域への感謝の気持ちが育まれる。

6.現役時に、部活動や探究的な学習、ボランティア活動その他様々な活動に取り組むとともに、より高い目標に向けてのチャレンジが可能となりうる。

7.現役生が、受験に向けて真摯に取り組む補習科生の姿勢から多くを学ぶことができる。

8.自宅浪人生の模擬試験受験が補習科において可能となる。

9.単位制を活用しての授業の受講が可能であることから、在校生、補習科生ともに刺激し合うことができる。

10.高校教員が補習科で行われる高いレベルの講義を参観することができ、これにより教員の力量の向上が図られる。

11.鳥取県西部地区出身者が、浪人生活という人生の中で苦しい一時期を、仲間とともに支え合いながら苦楽を共にし、また切磋琢磨しながら、地域や同窓生、家族のもとで学ぶことにより、進学後ふるさとを離れても感謝の念を持ち続けてくれることが期待できる。

 かつて、代々木ゼミナールの小論文のカリスマ・藤井健志(ふじいたけし)先生が、2018年の鳥取大学の後期の小論文入試問題「現代社会では、経済的格差や社会的孤立の広がりの中で、様々な形で社会的に排除された人々が生み出されている。そこで、地域社会において実際に生じている社会的排除の事例をひとつ取り上げるとともに、その問題の克服に向けて求められる社会的包摂のあり方について論じなさい。(800字以内)」に対する「模範解答・解説」を、『代ゼミ新小論文ノート2020』(代々木ゼミナール、2019年7月)に書いておられます。その中でこの「勝田ケ丘志学館」を取り上げていただきました。

(中略) このような問題の克服のヒントになるのがこの春から鳥取県に開学した「校内予備校」だ。自分の財を原資にしてでもという情熱を持った元教員を中心に協力者や寄付金を募り、県立米子東高校敷地内の同窓会館を利用して、地域の高卒生ならば誰でも学べる、画期的な学びの場を創り出したという事例だ。隣県島根県の教員OBの方々も協力することになったらしい。一つの高校の同窓会やPTAが主体になりながらもその枠組みに縛られず、都道府県の境さえも越えて連帯するかたちは行政に押し付けられるのとは違う新しい公共の姿である。官・民といった区別を越えて地域の人間が共に主体となって考え、行動するところにこそ、特定の人間を排除することのない重層的で懐の深い社会的包摂が実現するのだと私は考える。

 地元紙でも大きく取り上げてくださっています。♥♥♥

▲「日本海新聞」2022年11月10日付

▲「山陰中央新報」2023年3月15日付

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