「老人のつぶやき」

 オフコースのアルバム『ワインの匂い』(1975年)の中に「老人のつぶやき」という歌があります。マニアックなファンなら大好きな曲です。小田和正さん(現在76歳!)が27歳の時です。あの若さで「老い」をこんな風にリアルに歌っています。私も若い頃はよく理解できなかった曲ですが、今歳を重ね、空を見上げ、若かりし頃を思い出しては「あー、わかるなあ」と共感できるようになってきました。

   老人のつぶやき     作詩・作曲 小田和正

大空へ 海へ 故郷へ
私はもうすぐ 帰ってゆく
大空へ 海へ 故郷へ
私はもうすぐ 帰ってゆく
いつまでも空を見上げて
老人はあの頃を 思い出すのだろう
私の好きだった あのひとも今では
もう死んでしまったかしら

大空へ 海へ 故郷へ
私はもうすぐ 帰ってゆく
私の短い人生は
私の生き方で 生きたから
もういちど 若い頃に
戻りたいと思うこともない
ただあの人に 私の愛が伝えられなかった
それがこころ残りです

私の好きだったあのひとも今では
もう死んでしまったかしら

 この曲は小田和正ファンにとっては、ちょっとした因縁のある歌なんです。1975年のことなんですが、NHKの「みんなのうた」の番組サイドから小田さんに、曲を作ってくれという依頼があって、この「老人のつぶやき」を作ったんですが、なんと見事にボツ(不採用)になってしまいました。NHKは子どもにこんな詞は聞かせられないと言うんです。

 27歳の若さでどうしてこんな風に「老い」を歌うことができたのか?という疑問が残りますね。実は、小田さんが58歳の時に、こんなことを回想しておられました。小学校5年生の時のちょっとした出来事です。小学校の校庭で生徒たちが縄跳びをしていた時、卒業生らしき人がやって来て、小田さんの担任の先生と立ち話をしていました。その様子を見て小田少年はこんな風に思ったという感想です。

 あ、この人、卒業生なんだな。俺もあっという間にこの人になるんだなって、そう想ったのをとってもよく覚えている。だからどうということはないんだ。ただその光景と、そう想ったことはよく覚えている。そしてそれはいつも、俺に取ってのテーマになっている。いまだに70や80くらいのおっさんをみると、あ、振り返る時は一瞬にして訪れるなと思うんだな。だから詞も、そういう過去と未来の両方から見えるような、行ったり来たりするような、そういうものを俺は書いていると思うんだ。

 「時の流れ」に対する特別なこだわりを感じられる言葉です。27歳の自分を未来の自分はどう見るだろうか?という想いに、「私の短い人生は 私の生き方で生きたから もういちど 若い頃に戻りたいと思うこともない」と返答をした、そんな感じの曲です。♥♥♥

 

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