水戸岡鋭治先生の座席シート

 私が憧れる水戸岡鋭治(みとおかえいじ)先生の列車には、オンリーワンのさまざまな特徴があります。先生の車両デザインは、鉄道デザインの枠を超えて広く注目を集め、今までに菊池寛賞、毎日デザイン賞、ブルネル賞(鉄道デザインの世界的権威)、ブルーリボン賞、ローレル賞、日本鉄道賞、グッドデザイン商品選定、観光庁長官表彰、など、多数の賞を受賞しておられます。そんな水戸岡先生の列車を全部制覇することを目論んでいる私は今、先生の列車に一つずつ乗って、それらをこの目で直に確かめているところです(まだ学校に勤務しているのでなかなか遠出ができないのですが…)。今日はそんな一つ、「座席シートの柄が多い」ということを取り上げます。まず下の写真をご覧ください。これらは、最近私が乗った、水戸岡先生の京都丹後鉄道特急「丹後の海」(はしだて)の座席です。バラエティに富んだ座席シートがあることが分かりますね。チョット素敵でしょ?

 水戸岡先生の列車は、座席の張り地の柄が多いのが特徴です。隣り合う座席でも柄が違っている列車もありました。他の鉄道会社の列車では1編成でせいぜい2種類までが普通ですね。どうしてシートの柄が多いのか?それにはちゃんと理由があるんです(先生が家具屋の長男として生まれたことも大きく影響しています)。

 第1は、乗客のさまざまな好みに対応するためです。乗客はみんなさまざまな服装をしていますね。みんなそれぞれ楽しく自分の好みのファッションを楽しんでいるのに、座る座席の柄がたった1~2種類というのが、水戸岡先生には解せない!とおっしゃいます。切符を買うときにも、窓側・通路側だけの基準で選ぶのではなく、自分の好みの柄で座席を選んでもよいではないか、というのが先生の持論なんです。また、その日の気分でも、好きな色や柄が変わってくるはず。そんな微妙な心の変化に対応するためにも、座席のバリエーションは多い方がよいと思っておられるのです。

 第2に(これが重要なんですが)、車両間に自然界の豊かさを導入したいという思があります。これが先生の哲学でもあります。先生が生まれたのは岡山市郊外の吉備津(きびつ)というところでした。身体が弱かったことと、実家の家具屋が忙しかったこともあり、幼い頃は週末や夏休みになると祖母の家に行っては、野原や山で遊びながら、自然の中で得た感動や知識が、今のデザイナーの基盤を形成しています。樹木や花、昆虫などの生き物を観察すると、その種類の豊富さに驚きますね。森の中では、木々それぞれがまったく違う枝ぶりです。信じられないくらいの豊穣なバリエーションがそこにはあります。その枝についている一枚一枚の葉にも、無数の緑色系のパターンが存在しています。こうした子ども時代に田舎でたっぷり遊んだことで、自然の豊かなバリエーションに目を開かされました。先生は鉄道の世界にも、この自然の豊かさを導入したいと思われたのでした。シートの柄なら、一つや二つではなく、なるべく多くして、自然の豊穣さに少しでも近づこうとしておられるのです。先生が、小さいころひたすら描いていた絵は「木」だそうです。今も木や葉っぱを描くのが一番好きなんです。自然界はデザインの塊。どれだけがんばっても、人間はかなわない。ぼくはテキスタイル、布のデザインをするのが一番好きなんだよね。ぼくが作ったパターンは200~300種類ありますよ。同じパターンは一つもない」と。確かに、リニューアルされた岡山の「おかでんミュージアム(⇒私の詳しいレポートはコチラです)の展示でも、乗った水戸岡列車のそこかしこにさりげなく飾られた絵画にも、そのことは感じたことでした。

 デザイナーの仕事は通常、シートの柄のデザイン・イメージを織物メーカーにプレゼンするところまでです。後はメーカーが発注した他のデザイナーが、デザイン・イメージを基に最終的な版下を作り、織機にかける。こうやってサンプルを作り、そこからプレゼンをする、という行程です。柄の種類を多くするということは、当然コストに反映してきますね。通常シートの柄が多くなると、仕事は分担される形になり、数人のデザイナーが関わることになります。すると折半されたデザイン料はわずかなものとなってしまい、どうしても片手間の仕事になりやすいのです。水戸岡先生の事務所(ドーンデザイン研究所」)では、最終サンプルのデザインデータ作成まで全~部行っています。そうするとメーカーのデザイン料金がカットされて安くなります。制作費が浮くので、柄の種類をもう1種類増やしたり、普通は2色でしかできないところが、6色の柄が可能になったりするのです。柄のデザインから色校正、版下製作の工程まで、一括して行っておられます。こうした「一貫性」が、水戸岡列車のシートの多様性と質の高さを支えているのです(シートの柄のみならず、すべてのデザインにおいて、この「一貫性」を見ることができます)。

 水戸岡先生の究極の望みは「曼荼羅列車」(まんだら)で、気の遠くなるような色彩と柄のバリエーションに溢れた列車だそうです。自然は究極の曼荼羅。極彩色の壁や由佳、そして何百種類というシートの柄が必要となってくることでしょう。ぜひ実現してもらいたいものです。❤❤❤

▲特急「ハウステンボス」新型の座席シート 以下同様

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