特急「丹後の海」再び

▲米子駅の引き込み線に停まっていた特急「丹後の海」

 米子東高校の「勝田ケ丘志学館」の授業を終えて、博労町駅から境線の「鬼太郎列車」でJR米子駅に到着して、エレベーターで3番ホームに急ぎます(股関節と左膝が痛くて階段の上り下りが超きついんです)。すると5番ホームの向こう側の引き込み線に、何だか見覚えのある特急列車が停まっているではありませんか!京都と丹後地方を走っている水戸岡鋭治(みとおかえいじ)先生がデザインした特急「丹後の海」(たんごのうみ)です。エ~!何でJRではなく「京都丹後鉄道」の列車がこんな所に停まっているんだ?!とビックリしました。私は水戸岡鋭治先生の大ファンで、先生のデザインされた列車は全部乗ってやろうと、この特急列車も、わざわざ乗りに京都まで出かけています。⇒当時の私の詳しい「丹後の海」乗車レポートはコチラです   JR米子駅の引き込み線で、2両編成のこの特急列車の姿を目の当たりにして、乗った当時の感動が蘇ってきました。先日も大阪~浜坂(鳥取)間を走っている特急「はまかぜ」や、観光列車の「あめつち」が、検査のために米子駅の同じ場所に停留していましたから、今回も車両検査を受けていたのかもしれませんね。実はこのレポートを書いている今日も、米子駅に「丹後の海」が停まっていました。これで五回目の遭遇です。そこで、当時書き忘れていたこの特急列車のポイントを、取り上げてみることにしました。前回のレポートと併せてお読みください。水戸岡列車への期待に、心弾ませて乗った当時のことがまざまざと思い出されます。

 特急「丹後の海」は、もともとは京都市内~京都府北部を結んで長く親しまれていた、「北近畿タンゴ鉄道」の「タンゴディスカバリー」のKTR8000形車両をリニューアルしたものです(2015年)。工業デザイナーの水戸岡鋭治先生(ドーンデザイン研究所)がデザインされました。「元々の車両は、大きなおでこ、丸い形で不細工に見えた。逆にそのおでこを活かすデザインをし、藍色のメタリックカラーにすることで空が映り込み、なかなか高級感を出せた」と水戸岡先生。気動車らしい轟音を響かせながら走ります。落ち着いた深い青色メタリックカラーの車体には、金色の帯を配し、高級感を演出しています。海原のように、日差しを受けてキラキラと光る調色になっています。客室の天井と壁は白樺、床はナラ材、座席には楓の木材を使用し、木の香り漂う温かみのある車内となっています。「心と身体で心地よいと感じる和のテイスト」を目指してデザインされました。天井には数種類の柄模様がドットのように描かれています。座席のモケットは色とりどりのものを使って座席ごとに色を変えており、柄はJR九州の車両で使用されているものと同一です。大ぶりな座面と背もたれには、たっぷりとクッションが使用されており、非常に柔らかな掛け心地です。肘掛けにも大・小の2種類が、体型に合わせて選んで座ってもらえるようになっています。客室の窓はもともとは一枚窓でしたが、座席ごとに木枠で区切って、まるで額縁のようです。視界は狭まりましたが、適度な包まれ感で居心地はいいんです。窓枠と窓枠の間にはちょっとした飾り絵も見られます。照明も温かみのある電球色で落ち着いた空間を演出しています。洗面台には暖簾がかかり、和風な雰囲気とともに簡易的な目隠しの役割を果たしています。洗面台にもデザイン画が掛けられ、鏡面に埋め込まれた照明もお洒落。1号車のフリースペースにはソファが並び、列車の中であることを忘れてしまいそうです。

▲のれんをくぐって共有空間に入っていく

▲運転席の窓にも格子があしらわれている

▲すだれで仕切られた洗面所。側面のガラスにも格子のデザインが

 車輌ボディの各所に配置された特急「丹後の海」のロゴマークのモチーフとなっているのは、丹後地方の「海」と「松」(すでに京都丹後鉄道で運行されている観光列車「あかまつ」「あおまつ」「くろまつ」で使われている「松」です)です。外観はネイビーブルー(藍色)メタリック仕上げに、金色のシンボルマークとロゴが配されていて、丹後の美しい海を想起する車両になっています。ボディのありとあらゆる場所にロゴマークが配置されているのは、乗客がどこを写真に撮っても、「丹後の海」であることが後になっても分かるようにという配慮からですが、これこそがデザイナー・水戸岡流哲学なんです。♥♥♥

 心地よい、贅沢な空間が移動している、というのが楽しいのではないだろうか。工業製品ではなく、人の手間暇が見える仕上がりが重要。今は利便性と経済性を追求する時代で、今回はいかに手間暇をかけるかという逆方向のやり方をした。しかし、これが、これからの日本を支えていく最も大事な考え方だと思っている。手間暇を惜しんでは楽しいことも、豊かなことも、うれしいことも感じさせられない。まずは、来て乗って、車内で話をして、食べて飲んで、豊かな時間を過ごす中で、この手触り感、本物感を知って欲しい。(水戸岡鋭治談)

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