「松本清張記念館」

 私は作家の故・松本清張(まつもとせいちょう)さん(北九州市出身)はあまり好きではありませんが(その理由に関しては⇒コチラをご覧ください)、小倉を訪れる度に、小倉城とその中にある「北九州市立松本清張記念館」だけは訪れるようにしています。生前の功績を称え、後世にその業績を語り継ぐことを目的として、郷里である小倉北区に建設されました。今日はその「松本清張記念館」を取り上げます。記念館はお城の敷地の角っこにあります。二方を瓦葺きの屋根が囲んでいて、一見和風の趣がありますが、中央部はドーム型で、灰色の屋根が陽光を反射しています。日常の喧騒の中にあって、静寂で穏やかな低層の日本瓦葺きの大屋根が連なり、平明かつ端正な容姿と力量溢れる大空間を、素材の持つディテールが生み出す対比によって、清張さんの『理』『気』を来館者に感じてもらいたいと願った建築だそうです。建物の背後が「唐造り」と呼ばれた小倉城で、緑の樹木に囲まれています。この記念館は、松本清張さんの7回忌にあたる平成10年(1998)の6月に竣工し、命日の8月4日に開館しました。地上二階と地下一階の規模と内容は桁外れにすごいんですよ。

 私の大好きだった神奈川県の湯河原「西村京太郎記念館」(⇒コチラ、現在は閉館中)と違って、館内は一切撮影禁止ですので、中の施設はHPの施設案内をご覧ください(⇒コチラです)。私の訪問当時を思い出しながら紹介してみますね。

 記念館の入り口は石垣で、茶色の石に「松本清張記念館」と横書きに彫ってありました。中に入ると生涯に出版した著作約700冊の全てのハードカバーがパネルになっています。推理小説、時代・歴史小説、現代史、古代史研究と、広範に渡った創作活動が、ジャンル別に一目瞭然で分かるようになっていました。圧巻なのは長さ22メートルあまりの巨大な年表「松本清張とその時代」です。当時のニュースが映像などで構成されています。

 二階に上がると、東京・浜田山にあった清張さんの自宅を遺族から寄贈を受け忠実に再現した家屋が圧巻です。玄関がそっくりそのままに造られていました。書斎、書庫(約2万3千冊)、応接間が再現されており、執筆の資料にしたと思われる膨大な書籍が迫力充分です。ここは「調べて書く」という清張さんの創作の根源を感じさせてくれるスペースです。宅内の家具や書物、インテリアの小物に至るまで、全て清張さんが使っておられた実物が、皆在りし日のままの状態で置かれていました。これは「この本はこの場所にこういう角度でこう開いて置かれていた」といった事細かな点にまで配慮された展示なんです。これにはさすがに啞然とするしかなく、館内の至る所に清張さんへの愛情が感じられる施設です。執筆を続けていたデスクや椅子は意外なほど簡素でした。独りでこの「お城」に閉じこもり、昼夜を分かたず思索と創作に没頭したんでしょう。

 地下一階、地上二階建ての館内には、企画展示室、映像ホール、休憩コーナーなどがあり、情報ライブラリーでは、記念館が収集した清張情報をパソコンで簡単に検索できるようになっています。ミュージアムショップでは、記念刊行物や書籍の他、しおりやポストカードなど、ここでしか手に入らないオリジナルグッズを販売していました。読書室では、清張の著作や関係資料が自由に閲覧できます。著者の数々の写真や著書の展示が、まるで博物館のようです。

 開館10周年にあたる2008年には、「第56回菊池寬賞」を受賞しました。地方財政が厳しい折、水準の高い研究誌を刊行しつつ、多彩な企画展を催すなど、健闘しながら開館10周年を迎えたことによるものです。♥♥♥

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