「券売機左上の法則」

 最近行ったラーメン屋さんで、「券売機左上の法則」というのを教えてもらいました。これは、主にラーメン店などの券売機について使われる、ちょっとした経験則・グルメ用語です。簡単にいうと、券売機の最も左上のボタンに置かれているメニューは、その店の「一番のおすすめ」「看板商品」であることが多い、というマーケティング上の傾向、およびそれを指す言葉です。

 たとえば、下のような券売機だったとします。券売機の前に立った人の視線が、“まず左上に向かう”という心理的傾向があります。

特製醤油ラーメン 塩ラーメン
味噌ラーメン つけ麺
チャーシューメン 台湾ラーメン

初めて訪れた店で何を食べるか迷ったら、左上の「特製醤油ラーメン」を選べば、その店の自信作を食べられる可能性が高い――という考え方です。実際、ラーメン愛好家の間ではこの使い方がかなり見られます。

 大きな理由は、人間の視線が左上から始まりやすいと考えられているからです。広告やメニューなどでは、紙面を見たときの視線の動きについて、「Zの法則」(=人間は文字や情報を認識する時、無意識に「左上から右上へ、そして左下から右下へ(Z字)の軌道で視線を動かす習慣があります。そのため、券売機に向かった客が最初に目にするのが左上のボタンになります)、「Fの法則」(=左上を起点に横読みを繰り返す)などがマーケティングで語られています。そのため、店側からすれば、「一番見てもらいたい商品を左上に置く」という発想が生まれます。これが「券売機左上の法則」の背景の一つではないか、と説明されています。そのために左上にある商品は「店の自信作」「おすすめ」と認識されやすいのです。ただし絶対の法則ではありません。ここが面白いところです。

 最近では、「左上=店の自信作」ではなく「左上=一番売りたい高額商品」になっているケースもあります。例えば、

左上:特製ラーメン 1,500円
↓
チャーシューメン1,300円
↓
味玉ラーメン1,100円
↓
普通のラーメン 900円

という配置です。この場合、店が一番食べてほしいというより、客単価を上げるために高価格の商品を目立たせている可能性があります。実際に、こうした「左上=高額商品」への変化を指摘するラーメン店利用者もいます。したがって、「左上だから絶対においしい」ではなく、「初めての店で迷ったときの有力な目安」と考えるのがよいでしょう。

 さらに面白いのは、価格設定の心理学との関係です。例えば、

梅:900円

竹:1,100円

松:1,500円

と3段階にすると、「真ん中の竹」を選ぶ人が増える、という「松竹梅」の価格戦略があります。そこで券売機の左上に「特製○○」を置き、少し高めの価格にすることで、「せっかく来たのだから、普通よりちょっと豪華なものを」と思わせることもできます。つまり現在の「券売機左上」は、

① 店の看板商品を知らせる場所
+
② 視線を集める場所
+
③ 店が売りたい商品を置く場所

という三つの意味が混ざっていると考えると分かりやすいです。

 なお、この「左上の法則」の明確な発祥者・考案者は分かっていません。ネット上では少なくとも2010年代から使われていた形跡があり、現在ではラーメン好きの間でかなり定着した表現になっています。私なら初訪問のラーメン店では「左上」をまず確認します。ただし、左上が「特製・全部乗せ」だったら、通常メニューも確認します。これが「券売機左上の法則」の賢い使い方ですね。

 初めて訪れた飲食店で何にするか迷った時には、まず券売機の左上を確認してみると、そのお見えの「顔」がすぐに分かります。基本的には「左上=お店のイチオシ」が成り立ちますが、最近では戦略が変わることもあるみたいです。あえて一番高い「全部乗せ・特製メニュー」を左上に配置して客単価を上げようとするお店もあります。逆に、あまのじゃくな名店や、熱烈なファンが多い一部の店舗では、この法則をあえて無視して独自の配置にしているケースも見られます。ある調査では、左下が最も売れるとされ、視線の動きが券売機とは異なる可能性が指摘されています。❤❤❤

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