丹羽宇一郎さん

リーダは泥をかぶれ!

 北風に身をさらす経験をすれば人は鍛えられます。だから配属部署は、儲かっている部署よりも、儲かっていない部署の方がいい。貧乏な部署で、「なんで俺はこんなに努力しても恵まれないんだ」と悔しい思いをしながら、それでも人や環境のせいにせず、必死に乗り越えようとしている人は間違いなく成長します。逆に、大儲けをしている部署に入って恵まれた仕事をしていたら、よっぽど高い意識を持たないと強くなれません。だから、「逆境はチャンス、順境はピンチ」なんです。

DSCN2913 前中国大使の丹羽宇一郎(にわうちろう、74歳)さんの言葉です。最近マスコミへの露出が多くなっている注目の人物です。中国大使時代には、なにかと物議をかもした人ですが、このほど『負けてたまるか!リーダーのための仕事論』(朝日新書)を出版されました。

 伊藤忠商事社長時代には、多額の負債を抱えていた業績を、わずか三年で、過去最高の黒字を計上するまでに一気に回復させた手腕の持ち主です。社長就任中には、社長の給料を5割カット、同社の関連会社であるファミマや吉野家の弁当を自ら購入し昼食を済ませ、出勤には、運転手つきの社用車を廃止して電車通勤し、愛車は国産大衆車カローラです。「単なるパーフォーマンスだ」と批判する周囲の声には、耳を貸しませんでした。かつて「頑張ります」といった社員に対して、「君、頑張らなくてもいいから仕事しなさい」と答えたというのは有名なエピソードです。本書の「負けてたまるか!」は、伊藤忠時代の口癖だったそうです。自らは泥をかぶり、周りの事を考えれば、やがてその恩恵が自分へと戻ってくる、利己的な考え方は最終的には自分の胸に突き刺さる剣となる、という信念で仕事をされました。自分の利益よりも、まずはまわりの幸福を考える。それがリーダーの条件だ」

 本書では、「二割の優秀な人と六割の並の人の差は何か」「人間力」「失敗事例集を作っても役に立たない」「上司は背中で語れ」「賛成三割、反対七割という経験則」「第六感の上を行くナナカン」「何でも反吐が出るまでやりつくす」などのリーダー哲学が参考になりました。「継続の重要性」を語った、次の箇所なども勉強になります。

 私は毎日読書を続けています。夜寝る前の30分は必ず読書をしているのです。三十代の頃から続けていますのから、もう四十年近くなるでしょうか。(中略)多くの人は、三十分の読書を毎日続けようと思ってもどこかで挫折してしまいます。確かに飲んで帰ると、本を開くのが億劫になるものです。しかしそれでも「負けてたまるか!」と続けるのです。私は新入社員に「一日三十分の読書を続けてみなさい、一年間続いたらたいしたものだ」と何度か言ってきましたが、一ヵ月経ったら続けているのは五、六人になり、一年後にはゼロになっていくのが普通です。大事なことは「継続」です。「習慣」にすることです。また単に本を開いていればいいかというと、そういうわけでもありません。読書の仕方というのもあります。一冊の本の中で、一つでも心に刻んでおくべきことがあったら、それをどこかにメモしておくことです。人間は忘れる生き物ですから、どこかに書きだしておくことをお勧めします。

 昨年、10月19日のBS朝日「トップインタビュー」に出演した丹羽さんの言葉で、印象に残ったのは、「汗出せ、知恵出せ」「真面目に働け」「ウソをつかない」「改革は社員の支持」などでした。『朝日新聞』でも、最近三週にわたって特集されました。今、注目される実業家です。僕はもう年だし、お金も地位も名誉もいらない。残りの人生は、社会のお役に立つことをするだけ」と語ります。官僚から「大使になったから、叙勲の際にプラス評価になりますよ」と言われたときも、そんな話には興味がない。そういう思いで仕事をする人間だと思われること自体が、僕にとっては恥ずべきことだ」と答える「自分の心に忠実に生きる」フランスの文豪ロマン・ロランの著作に学んだ、自らの行動原理だそうです。

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