Die-Namic

 ダイスを使った傑作奇術で、用具の原理はクラシカルなものですが、あの奇才マーチン・ルイス(Martin Lewis)氏が、独自のハンドリングで現代に蘇らせたものです。ポケット・トリックとして重宝する実用的なマジックです。現象はこうです。

Die-Namic 空の透明なガラスのコップを示し、横向き(水平)に構えます。その上に、1ドル紙幣を敷いて1個のダイスを載せます。グラスの側面にダイスがバランスを保って置かれている状態です。このまま、このグラスを観客に左右から押さえて持ってもらいます。マジシャンは、ダイスの下に敷かれている紙幣をサッと引き抜きます。例の、テーブルクロスの抜き取りと一緒です。すると、その瞬間、ダイスはコップの側面を貫通して、中に入ってしまうのです。その他にも、「コースターを貫通するダイス」など、数手順・見せ方・演出のアイデアが紹介・解説されています。

Martin Lewis 現象が起こる瞬間、コップの口は観客の手で塞がれている点が不可能設定となっています。特にコップを持っている観客にとっては、現象がまさに目の前で起こるため大変なインパクトがあります。しばし呆然と、グラスの中のダイスをまじまじと見つめて絶句するほどの驚きです。まさしくそれは「ありえないものを見た」時の表情ですね。ちょっとしたミニ・イリュージョンという風格が醸し出されています。さすが大御所マーチン・ルイスです。彼の作品にまずハズレはありません。数々の傑作に私は魅了されています。

 この作品は、元をただせばケン・アレン氏のトリックで、今回の商品でも、原題は正式には (Martin Lewis presents) DIE-NAMIC by Ken Allen となっており、マーチン・ルイス氏が、ケン・アレン氏のマジックを復刻販売している形となっています。添付されている解説冊子(英文)は、そもそものオリジナル版の説明書にあるケン・アレン氏の文章を、 そのまま記念として収録したものです。マーチン・ルイス氏によれば、ケン・アレン氏は 「チャイナタウン・ハーフ」「モンキー・バー」「ロボット・コインズ」「ジャンピング・ダイヤ」などを含む数々の名作の考案者です。残念なことにアレン氏は、自らの商業権を1965年にBob Follmer氏に譲り渡して、静かに引退し、そして、2009年に81歳で亡くなっています。そもそも、この商品を大御所のマーチン・ルイス氏が売り出すことになった経緯は、以下の通りです(eMLマジックの情報による)。

 氏は、40数年前にマイク・スキナー氏からオリジナル版の用具をもらったそうで、以降、 気に入って、いろいろとハンドリングを考えて楽しみ、ペットトリックとして演じ続けてきたのですが、 あまりにも使いすぎて、ダイスが磨耗してしまったそうなのです。 (ご本人いわく「ダイスをすり減らせるとは信じがたいかもしれないが、本当のことです」)そこで新しいものを入手しようと探したけれども、もはや、どこにも売っていない… 幸い、権利を持つ82歳のBob Follmer氏と連絡が取れ、氏自身はもう生産する気がないことから、マーチン・ルイス氏が直接、製作・販売する許可をもらった、ということ(2014年・記)。氏の、このトリックに対する愛情・情熱が、失われた名作を1つ、現代に蘇らせたわけです。しかも、独自の優れたハンドリングを伴って。まさに「マジック・ちょこっといい話」ですね。

 クラシックなだけに、シンプルでダイレクトなトリックです。ダイスをサッとポケットから取り出して、手軽に演じられます(ダイスのサイズは約18ミリ角)。紙幣やグラスは日用品であり、ごく自然です。グラスはたいていのものが使用可能で、その場にあるものや借り物で演技することができます。少しも難しくはありません。技術は不要です。ハンドリングは大変クリーン、そして現象は極めてビジュアルです。証拠も一切残りません。上手く行うと、観客は実際に、ダイスがグラスの中に落下するまさにその瞬間を目撃できるのです。映像でよーくご覧ください。タネには全く気付きません。♠♣♥♦

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