hold your horses

  “I’m trying to think, hold your horses a minute, willya?”
The detective waited.   (「今考えようとしているんだ。ちょっと待ってくれないか」 刑事は待った。)   ―Ed McBain, Snow White & Rose Red.

 上のようなhold your horsesというイディオムを知ったのは、大学の一回生の時だったと思います。毎日読んでいた、アメリカの有名な悩み相談コーナーの、故・アン・ランダーズさんのコラムに出てきたと記憶しています。元々、馬車の御者に対して「馬が走り出さないように手綱をしっかりと持っていて」という意味で使われていた成句です。最新の佐藤尚孝(編)『詳説英語イディオム由来辞典』(三省堂、2018年)には、「繋駕(けいが)競争で、未熟な御者の中にはレースの前に馬を疾走させてしまう者がいて、観衆がこれをやめさせようと「馬を抑えろ」と叫んだことから。holdは「手綱を抑え(て馬を抑制す)る」の意味」とあります。これは、Robert Hendrickson, Encyclopedia of Word and Phrase Origins. Revised and Expanded edition, (Facts On File, 1997)の記述を参考にしたものと思われます。今では「慌てて何かをやり始めずに落ち着いて待つ」「早まるな」「ちょっと待て」といった意味で使われています。故・安藤貞雄先生が、故・大塚高信先生の命で編まれた名著『新クラウン英語熟語辞典』(三省堂)(大学時代はボロボロになるまで引いたものです)の全面改訂版である、安藤貞雄『三省堂英語イディオム・句動詞大辞典』(三省堂、2011年)には(三省堂の創立100周年を記念した刊行事業)、次のような用例と共に出ていました。

He asked us to hold our horses until he had finished. 彼は我々に自分の仕事がすむまでがまんしてくれと言った。

Now hold your horeses, Jerry. さあ、落ち着くんだよ、ジェリー。

Hold your horse. I’m looking for my purse. ちょっと待って。ハンドバッグを探しているから。

 最後三番目の用例で、hold your horse単数形で出ており、安藤先生は《方》とマークしておられますが(『クラウン熟語』でもそうでした)、現代英語ではこれは普通ではないでしょう。主に命令文で》という注も、一番目のような準命令文の用法を意識されたものと思われます。私たちの『ライトハウス英和』『コンパスローズ英和』では、これらを「命令形で」と注記しています。

 私が大学二回生の時に、故・Dwight Bolinger先生の名著 Aspects of Language (Second edition, Harcourt, 1975) をなめるように読んでいると、その100ページに、この成句が取り上げられており、興味深く思いました。そこでは、この成句は必ずHold your horsesの形で使うので、実質上要素を交換することができないとして、次のような非文を挙げておられました。語感の鋭いボリンジャー先生ならではの観察です。

*They hold their horses.   [主語を勝手に換えることは出来ない]

*He was holding his horses. [動詞の時制も換えることは出来ない]

*Hold your horse. [目的語を単数形に換えることは出来ない] ※ここからも上の三省堂の用例が認められないことが分かります。

 そこら辺の実態を踏まえて、英米の学習辞典は、Hold your horses!という命令形で収録しています。選択制限が他のイディオムと比べて、極めて厳しいと言うことができます。♠♠♠

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