小倉総合車両センター

 「八幡先生はよく九州に行かれますね」と声をかけていただきます。確かに休みがあると、博多、長崎、別府、由布院、大分、熊本などへよく出かけます。私の大好きな鉄道デザイナーの水戸岡鋭治(みとおかえいじ)先生の観光列車・特急列車がいっぱい走っているので、それに乗るためでもあるんです。観光列車だけでなく、JR九州は通勤列車や一般車両も、JR西日本と比べてもひと味もふた味も違います(例えば最近、私は「YC-1電車」に乗りました)。私は水戸岡先生デザインの列車を全て制覇したいという壮大な目論見を持っています。

 JR九州は、水戸岡先生に「いまだかつてないものを造れ」「水戸岡さん、見たこともないものを造ってくれ」と依頼し続けてきました。予算も少ないのに、そんな滅茶苦茶なことをここずっと続けてきたわけです。もっと面白いことをやってみようとか、もっと頑張ってみようとか、期待値を超えようとする意欲・情熱がすごいと思います。JR発足当時には、大赤字から到底脱出できないだろうと思われていたJR九州が、念願の上場を果たし、JR東日本と対等に闘えるような全国区の会社となりました。もちろん企業の規模では比べものになりませんが、存在感とか物語といったレベルでは十分対等に渡り合っていくだけの意識と情熱が存在しています。その集大成があの人気の観光列車「ななつ星」でした。

▲小倉総合車両センター

 何よりもJR九州はものづくりを重視しているのがすごいと思います。しかし一昔前までは、「小倉工場」も要らないんじゃないかという話が出るくらいに軽視していました。車両メーカーがあるのだから、鉄道会社が工場を持っている必要はないじゃないか、全部大きな車両メーカー(例えば、日立製作所・川崎重工業)に任せればいいじゃないかという雰囲気でした。水戸岡先生は「それまずいよね」と大反対しました。ローカル線をいっぱい抱えたJR九州が、東京と同じ電車を造ってもらって走らせても、お客さんには全然魅力がなく乗ってもらえません。九州のオリジナル車両を造るしかないから、工場は絶対に残して、職人を残しておかないとダメだと反論しました。幸い、当時のJR九州の唐池恒二社長(現会長)が、「小倉工場」を残すと決めました。この社長がいなかったら果たしてどうなっていたことやら。今は「小倉総合車両センター」と呼びます。ここであの豪華観光列車「ななつ星」の客車7両のうちの3両(1号車~3号車)が造られました(4号車から7号車までは日立製作所、機関車は川崎重工業)。その後も、あの人気列車「ゆふいんの森」の増結車の改造もここで行われました。

 「小倉総合車両センター」は、旧鉄道省・国鉄時代から続く車両工場の一つであり、各種車両検査、製造や改造、廃車となった車両の解体なども請け負っています。戦前、日本で最初に速度照査式ATS(自動列車停止装置)を試作し、また、蒸気機関車のデフレクタ(除煙板)の、独特の設計による小型化(これは工場の名をとり「小工デフ」(しょうこうデフ)、あるいは配置機関区の名を取り「門デフ」(もんデフ)と呼ばれる)を実現するなど、先進的な取り組みを行った工場としても知られています。構内にはC12形蒸気機関車と、485系電車(クハ481-256)が静態展示されています。

 このJR九州の「小倉総合車両センター」に、日本における鉄道開業150年を迎えたことを記念し、「小倉工場鉄道ランド」が昨年4月23日にオープンしました。私も早速訪問してきました(⇒詳しい紹介はコチラです)。ここでは、2022年に開所50年を迎えた「ドーンデザイン研究所」の主宰、水戸岡鋭治先生の作品を一堂に集めたミュージアムやショップ、小倉工場の歴史の展示、小倉総合車両センターの社員が使用する現役の「つばめ食堂」での昼食など楽しむことができます。200点以上のデザインパネルや試作した家具、ボールプール、ブランコ、新幹線用のシートが配置され、小さなこども向けのミニトレインと三輪車も用意されています。オリジナルグッズの販売もショップで行われていました。ここは現時点では、JRの限定ツアーでのみ公開されています。❤❤❤

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