very delightedは誤りか?

 デイビッド・セイン先生の新刊書『英語ライティングルールブック(改訂新版)』(学研、2024年5月)はとても勉強になるライティングの参考書です。現場では疎かにされている数多くの気づきに満ちあふれています。ただその中の「うれしい、喜んで」の類義語の使い分けに関する記述の中に、「very delgihtedとは言えない」(p.135)とありました。果たしてそうでしょうか?確かに、Longman Dictionary of Contemporary English(2014、第6版、LDCE)にも「delightedはveryと一緒には使われない。×I’m very delighted.ではなくてI’m absolutely delighted.と言う」という注記があります。LDCEでは以前の版からこれと同様の注記が見られました。delighted という形容詞自体がすでに強意であり(意味は“very pleased and happy”)、十分な強調を含んでいるため、“very delighted” という表現はやや冗長(redundant)に感じられるからでしょう。

 やはり以前に、私たちのライトハウス英和辞典』(研究社、第2版)のdelightedの用例に対して疑義を唱えて来られた先生がいらっしゃいました。その例文は次のようなものでした。故・竹林 滋先生から夜中に電話がかかってきます。この投書に対する解答を用意するようにとのご指示です。夜、先生の声を電話口で聞く度に気合いが入って、我を忘れて徹夜作業したものでした。

             He was very [much]  delighted with [by] my gift. [ライトハウス英和]

その根拠とされたのは、Heaton & Turton(1987)に挙がっている次のような用例の容認度判断でした。very delightedがオカシイのではないか、というのです。

*When they knew that they had won, they were very delighted.
When they knew that they had won, they were absolutely delighted.

 Nigel D.TurtonのABC of Common Grammatical Errors (Macmillan, 1995)でも、×I was very delighted to see my name on the list.は誤りで、I was (absolutely) delighted to see my name on the list.と訂正するようにとあります。

 さあ、ここからが私の出番です。近くのアメリカ人、イギリス人、オーストラリア人数人に聞いてみても、何らオカシクはないとのことでした。早速調査を開始します。次の表は、私たちの編集顧問のロバート・イルソン博士(ロンドン大学)に確認を取った時のイギリス英語での判断です。表に示すように、very delightedはOKとの判断でした。

                     crowded     delighted      surprised      amazed       appalled
very           〇       〇           〇         ?           ?
very much  ×   
    formal                〇            formal         ?
much                  ×               ×                    ×               
formal        ?
extremely    〇        ?              〇           ?            〇
absolutely    ×       〇                ?         〇            〇

 Ngram Viewerによれば、very delightedはvery much delightedよりも普通であり、absolutely delightedの約半分の使用頻度だと読み取れます(⇒興味のある方はコチラをご覧ください) 。“How delighted are you?”―“Very delighted.”というやり取りは全然オカシクは聞こえないというネイティブの判断もあります。つまり、delightedには「段階性」が認められるのです。

 今度はアメリカ英語の立場から、現代英語法・文法の専門家・ジョン・アルジオ博士(ジョージア大学)にお尋ねしても、何ら問題はないとのことでした。ただ、アンケート調査に協力してくれた60名のジョージア大学教授・大学院生・大学生のうち、23%のインフォーマントが、このvery delightedに対して疑義を唱えていたという情報を踏まえて、『ライトハウス英和』の上の用例では無難なabsolutelyに差し替えておいたのでした。ただ現在、このHeaton & Turton やLDCEの記述は、現代英語においては規範的に過ぎると言えるでしょう。一つの資料だけを盲信すると危険であることを示す好例です。♥♥♥

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