草間彌生の赤かぼちゃと南瓜

 現代アートの聖地として、世界中から注目を集める瀬戸内海の小さな島・直島(なおしま)。フェリーで直島宮浦港に着くと、まず目に飛び込んでくる草間彌生(くさまやよい)さんの「赤いかぼちゃ」(1994年)の鑑賞からアート巡りのスタートです。港で来島者を出迎えるアートな島のシンボル的存在ですね。「Open Air “94 “Out of Bounds” —海景の中の現代美術展—」は1992年に開館した「ベネッセハウス」が、常設展で館内が充実し始めた頃に、新しい企画として打ち出したものです。館外の「自然」を生かすことを意識した、当時国内では珍しかった野外展で、この展覧会のために作られた作品を、美術館の中に置くのではなく、周囲の自然と調和させる形で設置することに挑戦した企画展でした。その中でのコンセプトが、「どこにでもある瀬戸内の風景を、ここにしかない風景に変える」というものであったために、この場所に置かれています。

 「太陽の「赤い光」を宇宙の果てまで探してきて、それは直島の海の中で赤カボチャに変身してしまった」と、草間さん自身が語っている作品です。かぼちゃをモチーフとした作品は草間作品の中で数多く登場しますが、作品が作られ始めたのは1980年代初めの頃からです。初めての出会いは祖父の畑のかぼちゃで、それを抱きしめると遠い子ども時代にかぼちゃに救われたことを思い出すといいます。幻覚と幻聴に悩まされていた少女時代に草間さんを慰めてくれたのが、畑で育てていたかぼちゃだったのです。太っ腹で無骨で飾らぬ形、そのたくましい造形に魅せられたとのことです。以来、主要な題材としてかぼちゃの作品が多く生み出されています。この作品は太陽の力強さ、存在感が伝わってくるような作品で、恐怖や怒り、それらを乗り越えることが創作の源泉でしたが、かぼちゃをモチーフにすることで初めて愛情を表現することができました。作品の象徴でもあるかぼちゃの表面の水玉は、一部がくり抜かれていて内部に入って楽しむこともできます。昼に真っ青の空の下で見るのも美しい作品ですが、ライトアップされた夜にも鑑賞しに行きたい作品です。

 一方、「南瓜」は1994年に直島で開催された「Open Air ’94 “Out of Bounds” ―海景の中の現代美術展―」で公開されました。それまでに制作された「南瓜」直島「南瓜」が異なるのは、場所の特徴を強く意識して作られたことです。海に突き出た古い桟橋に設置された「南瓜」は、海の青や木々の緑のなか、黄色に彩色され、一際目をひきます。サイズはそれまでに制作された「南瓜」のなかでも最大級で、初めて野外での展示を意識して作られました。公開から25年以上たった今も、黒いドットをまとった黄色い「南瓜」は、独特の存在感で瀬戸内の自然と拮抗し、ここにしかない風景を見せ続けてくれています。

● 水に浮いているような唐突感を出したい

● できるだけ突端の部分に作品を置いてみたい

という狙いで、海の青や木々の緑に囲まれた風景の中で、より人々の目を引くよう黄色に彩色されているのも特徴です。この場所に設置されているということに、「在るものを活かし、無いものを創る」「無名の場所を特別な場所へ作り替えていく」という大きなメッセージが隠れているんですね。

 この黄色の「南瓜:かぼちゃ」のオブジェは、2021年8月の台風9号により破損しています。台風による高波のせいで海の中に落ち、桟橋に何度も打ち付けられて大きく破損してしまいました。ですが、2022年10月4日に旧作とほぼ同じ大きさで復元されて、現在でも人気の観光スポット、直島のかぼちゃです。海に突き出た古い桟橋に設置された「南瓜」は、海の青や樹々の緑の中、一際目を引くとともに、あらためて直島にしかない風景を見せてくれています(写真右)。「ベネッセアートサイト直島」のシンボルと言える作品となった「南瓜」です。この作品は、草間さんが感じる「無限の可能性」「自然との調和」を象徴しているとされています。♥♥♥

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