at the risk of~

◎今週は英語語法特集!!  

     He helped her at the risk of his life.(彼は命を賭けて彼女を助けた)〔ライトハウス英和〕

     He saved her at the risk of (losing) his own life.(彼は自分の命を賭けて彼女を救った)〔ジーニアス英和〕

      He invested all his savings in the stock market at the risk of losing everything.(すべてを失う危険を冒して、彼はすべての貯金を株式市場に投資した)〔英熟語最前線1515〕

 at the risk of…は「~の危険を冒して」と全ての辞典・熟語集には出ています。『ジーニアス英和』には「Oはしばしばone’s own life」とあります。しかし実際には、「失礼に当たるかもしれないことや、バカみたいに思われるかもしれないことを言う時の前置き」として使われることが多いのです。そのことは、Longman Dictionary of Contemporary English (6th edition)の定義にもちゃんと書いてあります:“used when you think that what you are going to say or do may have a bad result, may offend or annoy people etc.” 最新刊の山田 茂『辞書的英語学習法』(研究社、2026年9月)もそのことを鋭く指摘しておられました。英語圏で日常的に使われる典型的なクッション言葉のニュアンスです。直訳すると「~の危険を冒してでも」「~になるのを覚悟のうえで」という意味ですが、会話や文章では「自分がどう思われるか、あるいは相手を不快にさせないか」に対する予防線(言い訳・配慮)としてよく置かれます。実際の英語では「危険」の中身が物理的危険であることはむしろ少なく、社会的・心理的なリスクであることが非常に多いのです。次のような「危険性」です。

・相手を不快にする危険性
・無知だと思われる危険性
・愚かな人だと思われる危険性
・古臭い人だと思われる危険性
・しつこい人だと思われる危険性

  単に事実をズバッと言うと角が立つ場合に、このフレーズをワンクッション挟むことで、「自分もこれがリスクのある言い方(不躾・無知)だと自覚していますよ」という謙虚さや配慮を示すことができます。「相手から何らかの否定的評価を受ける可能性を承知で、あえて言う」という前置きと理解することができます。

・失礼だと思われるかもしれないが
・無知だと思われるかもしれないが
・ばかげた質問だと思われるかもしれないが
・反感を買うかもしれないが

 英米の学習辞典に挙げられた用例もそのことをはっきりと物語っています。

At the risk of sounding stupid, can I ask a question? [LDCE]

Will they go ahead with these plans, even at the risk of offending the Americans? [LDCE]

At the risk of showing my ignorance, how exactly does the internet work? [OALD]

At the risk of seeming boring, I don’t think we should try it. [MED]

At the risk of sounding repetitive, I want to say again that your basic problem is a lack of effective leadership. [NWALED]

At the risk of being repetitive, I will say again that statistics are only a guide. [COBUILD]

Merriam-Webster’s Advanced Learner’s English Dictionary(2017)の用例もそのことを注釈つきで紹介しています。

At the risk of being/ sounding rude, I have to ask you how old you are. [=I have to ask how old you are even though you may consider me rude for asking]

1. 「失礼かもしれないことを言う」という用法

at the risk of offending you, …= 「失礼に当たるかもしれませんが……」

at the risk of sounding rude/ offensive/ disrespectful, …= 「失礼に聞こえるかもしれませんが……」

のように、これから言うことによって相手に悪い印象を与える可能性を承知の上で発言する、という前置きに使えます。ここで話し手は、「これから言うことは問題を起こす可能性があると自分でも分かっていますが」という姿勢を示しています。例えば、

At the risk of sounding rude, I don’t think this design fits our brand at all.(失礼を承知で申し上げますが、このデザインは当社のブランドに全く合っていないと思います)

という感じです。

2. 「バカみたいに思われるかもしれない」という場合

At the risk of sounding stupid, where are we supposed to submit this form?(バカみたいな質問で恐縮なんですが、この書類はどこに提出すればいいんですか?)

ここでのriskは文字通りの「危険」というより、「~という印象を与えてしまうリスク」です。したがって、at the risk of sounding stupid/ foolish/ dumb =「バカみたいに聞こえてしまうかもしれないというリスクを冒して」という構造です。

At the risk of sounding stupid, how does this machine work?

日本語として自然なのは、「的外れな質問だったらすみませんが、この機械はどう使うのですか」「初歩的なことで恐縮ですが、この機械はどう使うのですか」です。

3. 「差し出がましい/しつこいかもしれないけれど」という場合

 ただし、本来はもっと広い表現です。at the risk of ~ingは、「~する危険(可能性)を冒して」という一般的な表現です。例えば、

At the risk of repeating myself, let me make one more point.(繰り返しになるかもしれませんが、もう一点言わせてください)

At the risk of stating the obvious, we need to save money.(当たり前のことを言うようですが、私たちはお金を節約する必要があります)

At the risk of sounding pushy, have you had a chance to look over my email?(催促するようで恐縮ですが、メールをご確認いただけますでしょうか?)

このように、必ずしも「失礼」や「ばかげている」という意味ではありません。特に、at the risk of sounding rude、at the risk of offending you、 at the risk of sounding stupid、at the risk of stating the obvious、at the risk of repeating myself などは、発言の前置きとして非常に使いやすい定型表現です。これらを見ると、「失礼」や「バカ」に限定されず、「ネガティブに受け取られる可能性全般」を表す表現だと分かります。

 ポイントは、後ろに何が来るかです。

at the risk of offending you
あなたを怒らせるかもしれないことを承知で

at the risk of sounding rude
失礼に聞こえるかもしれないが

at the risk of sounding like a fool
愚か者のように聞こえるかもしれないが

という形になります。したがって、「失礼かもしれないことや、バカみたいに思われるかもしれないことを言う時の前置き」という説明は、at the risk of+動名詞の一つの典型的な用法を、学習者向けに分かりやすく説明したものと考えるとよいでしょう。

 なお、英語学習上はat the risk of sounding…はかなり覚えておく価値のある表現です。at the risk of~を単に「~する危険を冒して」とだけ覚えるより、「あえて言わせてもらえば……/失礼かもしれませんが……」という談話上の機能まで押さえておくと、実際の英文が理解しやすくなるでしょう。

 冒頭の山田先生の記述は、「危険」の中身は、現実には相手からの否定的評価であることが非常に多いという、重要な語用論上の特徴を指摘しておられます。語用論的には、I’m afraid~、 With all due respect,~、 I may be wrong, but~、 Correct me if I’m wrong, but~などと同じ仲間の「クッション表現」と考えることができます。❤❤❤

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