まずはウラを取れ!
ネイティブがこう言っているからと、それを鵜吞みにして信じてしまうと危険なことがある、というのは私たちが銘記しなければいけないことです。本に書いてあることでも同様です。必ず複数の資料にあたり裏付けを取ることが必要です。こういうことは、『ライトハウス英和辞典』(研究社)の編集でも、山ほど経験してきました。一例をご覧にいれましょう。
あるアメリカ人教授が次のようなbe easy of access(近い)の用法を、イギリス用法だとしています。
(a) That old castle is easy of access.
(b) The place is easy of access.
この教授によればこのような用法はイギリス英語であり、アメリカ英語では次のように言わねばならない、とおっしゃいます。
(c) That old castle is easy to get to.
That old castle is easy to find.
果たして本当でしょうか?私たちの編集委員のアルトハウス先生(津田塾大学)によれば、(a)も(b)も、アメリカ英語で何ら問題はないとおっしゃいます。念のために、編集顧問の故ボリンジャー博士にもうかがってみました。博士もアルトハウス先生の判定に同意され、アメリカ英語でも何ら問題はない完全な英語である、との判断でした。ただし、(c) よりも“more formal”であるけれど、との付記をされました。一人の判定を鵜吞みにしてしまうと、非常に危険な場合が多々あります。注意したいところですね。意見はきっかけにして、自分で必ず裏を取る習慣をつけると、意外な発見につながることもあります。
私は教員になりたての頃、慶応大学の三浦新市教授と、forget + V-ingの語法に関して、『英語教育』誌(大修館)で大論争をしたことがあります。この語法は、三浦先生が書いておられるような単純な問題ではない、ということがいろいろと調べていくうちに分かってきたのです。あのまま三浦先生が本に書いておられることを盲目的に信じていたら、あのような問題点は明らかにならなかったと思います。八幡成人「FORGET+V-ingの語法とその問題点」『英語教育』10(1980)、「再びFORGET+V-ingの語法とその問題点」『英語教育』3(1982)の詳細な調査をご覧ください。故竹林 滋先生(東京外国語大学名誉教授)からは、東京のタクシーの中で、あれはいい問題提起だった、とお褒めの言葉をいただいたのも懐かしい思い出です。

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