鉄道トイレ事情

 私は、高所恐怖症飛行機嫌いで通っており、どこへ行くにも鉄道を利用していました(最近は飛行機の便利さに、たまらず飛行機に乗っていますが)。全国各地でいろいろな電車に乗り、必ずチェックして写真に残すのは、トイレ」です。最近の特急列車のトイレはずいぶんと綺麗になりましたね。今日の話題は「電車のトイレ事情」です。まずは、ざっーと、その歴史を見ておきましょうか。

 私がまだ子供の頃は、垂れ流し式」!でした。つまり和式トイレからそのままポットン、排泄物を線路上に落としながら走っていたのです。当然のことながら、駅に停車中や市街地では、トイレは使用禁止でした。線路には多くの排泄物が落ちていたものです。このことを、大好きな推理作家の西村京太郎先生が、インタビューでこんな回想をしておられました。

 そうそう、トイレも感動したんですよ。昔は停車中、使えなかった。水洗じゃなくて、みんな線路にポトンと落っこちていく。だって下を覗き込むと、線路が見えるんだもの(笑)。そういう古い列車、機関車とか客車を見ると、やっぱり感動するんです。   ―西村京太郎スペシャルインタビュー『十津川警部 日本縦断長篇ベスト選集 西伊豆 美しき殺意』(徳間書店、2012年) 

 さすがにこれでは不衛生だということになり、やがて「粉砕式」が導入されます。これは排泄物と処理液を処理機で混合して粉砕し、タンクで殺菌・脱臭してから車外へ捨てるというものでした。衛生面はずいぶん改善されたものの、沿線の人たちが迷惑することには変わりはありません。そこで登場したのが、循環式汚物処理」のト

▲旧国鉄系電車特急「やくも」は循環式

イレです。排泄物は汚水タンクの中に貯蔵されるようになったのです。排泄物は、消毒液と水の混合液によって流され、フィルターを通されて汚水タンクの中へと運ばれます。水に限りがあるので、消毒液は循環し、再利用されるという仕組みでした。列車のトイレで青い水が流れるのは、この消毒液の色でした。これによってずいぶん衛生面での改善は図られたものの、臭いを完全に消すことはできませんでした。そこで新たに導入されたのが「真空吸引方式」です。ボタンを押すとシュポッという音とともに、排泄物が一気に消え去ります。あれは、圧縮空気が排泄物を一気に汚水タンクへと吸引してくれているのです。1回の使用で使われる水の量はわずか200ミリリットル程度で、コップ一杯の水よりも少ない量で、排泄物を見事に流し去ってくれるのです。この臭気対策に効果がある「真空吸引方式」を初めて取り入れたのは、JR九州で、水戸岡鋭治(みとおかえいじ)先生がデザインされた787系交流電車でした(その後「リレーつばめ」に運用され、現在は特急「かもめ」「にちりん」「みどり」「きりしま」などで運用されていますね)。臭いが少なく、水の量もわずかで済み、衛生面もクリアしているので、その後全国の在来線に広がりました。

 さて、それでは汚水タンクに貯まった排泄物はどう処理されるかというと、まず、「抜き取り」という作業が行われます。大口径のホースを車両床下のタンク取り付け部に連結して、コックを開きます。そうすると、タンクの中の汚物が自然流下します。それだけではタンク内の汚れがきれいにはならないので、高圧水のホースをジョイントして、水を循環させて中を洗浄します。これで汚物は簡易下水処理場へ行き処理が行われます。そしてコックを閉め、ある程度水がたまったら、高圧水も止め、完了です。あとはトイレの便器から、青色の粉の処理剤を投入して終わりです。パイプを外すとき、残りの汚物がジャーと流れ出て、かかることもあるそうですよ〔笑〕。お客さんが、トイレに何か落としたと申告があった場合どうするのでしょうか?その場合は「生ぬき」です。つまりホースをつながずに、床に垂れ流し、網ですくうのです。「くせー!」「ぎゃー!」という声が飛び交うほど大変だそうですよ。

 私たちは、電車に乗ってトイレに行きたくなったら、トイレに駆け込めばいいんですが(かつて私もトイレのない電車に乗って冷や汗をかいたことも)、新幹線などの長距離を運転する運転士さんが、急にトイレに行きたくなったらどうするんでしょうね?素朴な疑問です。高速運転ですから連続して乗務できるのは4時間まで、最長距離は535キロまでと決められているそうです。車掌さんは、まだトイレに行くことが出来ますが、運転士さんは、椅子に座ってブレーキハンドルを握っています。姿勢を勝手に変えることすらできませんし、お腹をさすることもできません。ただひたすら脂汗を流しながら我慢するだけですね。本当にひどくなってくると体が震えだし、ここまでくると少し油断すれば出てしまう危険性も。会社的には、列車無線で腹痛がひどいので、次の駅でトイレへ行くと報告し、列車を待たせたままトイレへ駈け込めと言われてはいます。この場合にはペナルティを科すこともないそうです。でも電車をほったらかしにしてトイレに駆け込むって、なかなかできないものですよ。それに実際に、運転指令所へその旨を報告すると、「次の駅ではなく〇〇駅まで行けませんか?」と必ず返されるのです。運転指令所の指示で、乗務区から代わりの運転士を派遣するのですが、どこの駅で代わりの運転士を、その腹痛列車に乗せられるかを計算するためです。運転士を退職なさった人たちが、今でもとりあえずトイレへ行っておこう、という運転士時代のクセが抜けないのは、こういった悲惨な経験をされているからなんでしょうね。以上今日は、電車のトイレ事情について考えてみました。この項、日本全国「鉄道」の謎』(光文社知恵の森文庫、2010年)を参考にしました。★★★

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