大学の英語名

 再来年(令和4年)の4月に、大阪府立大学大阪市立大学が統合して「大阪公立大学」となることが決まっています。今、その新しい大学の英語名をめぐって大騒ぎが起こっています。新大学側は、University of Osakaとすることを発表しました。すると大阪大学が、自分たちが長く使って来た商標名Osaka Universityと酷似しており、非常に紛らわしいと強く反発、クレームをつけたのです。外国人にとっては同じ大学と受けとられかねませんからね。受験生や大阪大学の学生・卒業生、一般市民、海外の研究者・学生などに大きな混乱を招き、両大学の未来にとって大きな障害となることがが必至」だと訴えます。最近では、大阪大学の学長が、ホームページで四度にわたり抗議をして、ますます騒動が激化しています。⇒コチラの大阪大学のホームページでは、この英語名の問題点が詳細に綴られて再考を求めています    大阪大学側の主な反対の論点は、次の4つです。 ①「University of Osaka」は、大阪大学(Osaka University)と同義であるとすでに認知されており、これまでにも海外で広く使われてきた、②「University of Osaka」は学術論文や学術書においても、大阪大学の英語名として長期間使われてきた、③英語圏以外でも、「Osaka University」と「University of Osaka」を区別できない例がある、④一般市民が大学についての情報を得る際には、インターネットが極めて大きな役割を果たすが、ネット上では「Osaka University」、「University of Osaka」はリンクされ、常に相互参照可能となっている。

 この騒ぎに関連して、今日は、大学名の英語問題を考えてみようと思います。理屈として押さえておきたいのは、 University of XXX は、XXX が地名であれば問題ありませんが、例えば明治大学のように地名でないものに University of Meiji としてしまうと、英語としては間違いです(of は所有や直接的な関連を表すため)。一方 YYY University は地名であろうがなかろうが使える万能型です。結局、東京も京都も地名なので、University of XXX スタイルでも YYY University でもどちらでも正しいことになります。しかし慣例で、東京大学はthe University of Tokyo、京都大学はKyoto Universityと言っているようです。

 まず、ここに使われているof をどう理解すればよいかですが、「何かから出ると同時にその何かに帰属するという関係」を表すと考えるといいと思います(学生時代、恩師の安藤貞雄先生「意義素」と呼んでおられました。当時、これを入試問題と絡めながら解説した先生の『前置詞のポイント』(研究社)は画期的な受験参考書でした)。「帰属の部分」と「出所の部分」の双方が含まれるところにofの特徴があり、そのどちらに強調点が置かれるかによって、ofの異なった意味合いの用法が生まれているのです。具体例を見てみましょう。the top of the mountain (山の頂上)の頂上は山の一部ですが、the top of the mountain と表現することで、the top に話題としての注目が行きます。しかし、話題化された頂上は、山に帰属するという関係になることには変わりません。同様に、the bottom of a bottle(ビンの底)のように「部分-全体」の関係を表す場合にはofを使います。一方、「ビンのラベル」や「ドアの鍵」におけるラベルや鍵は、ビンやドアを構成する一部ではありませんからofは使わず、それぞれthe label on the bottle(ビンに貼ったラベル)、the key to the door (ドアの鍵)のように表現します。ここら辺は、高校生が英作文の時によく間違える点ですから、注意を喚起しておきたいところです。

 「オックスフォード大学」と「ハーバード大学」を英語で正式に表すと 、the University of Oxford と Harvard University となります。これは、オックスフォードが地名であることに関係します。地名だからそこに帰属する(代表的な)大学として the University of Oxford といえるのです(BBC放送では、Oxford UniversityとUniversity of Oxfordの両方を使っているようですが)。一方、ハーバードは地名でないので、the University of Harvard とは言いせん。シカゴ大学はthe University of Chicago で、ニューヨークのコロンビア大学は Columbia University というのも理解ができますね。

岩手大学 Iwate University 岩手県立大学 Iwate Prefectural University

秋田大学 Akita University 秋田県立大学 Akita Prefectural University

埼玉大学 Saitama University 埼玉県立大学 Saitama Prefectural University

東京大学 The University of Tokyo 東京都立大学 Tokyo Metropolitan University

新潟大学 Niigata University 新潟県立大学 UNIVERSITY OF NIIGATA PREFECTURE

富山大学 University of Toyama富山県立大学 Toyama Prefectural University

福井大学 University of Fukui 福井県立大学 Fukui Prefectural University

山梨大学 University of Yamanashi 山梨県立大学 Yamanashi Prefectural University

★静岡大学 Shizuoka University 静岡県立大学 University of Shizuoka

滋賀大学  Shiga University     滋賀県立大学 University of Shiga Prefecture

京都大学 Kyoto University 京都府立大学 Kyoto Prefectural University

★島根大学 Shimane University 島根県立大学 University of Shimane

岡山大学 Okayama University 岡山県立大学 Okayama Prefectural University

広島大学 Hiroshima University 県立広島大学 Prefectural University of Hiroshima

山口大学 Yamaguchi University 山口県立大学 Yamaguchi Prefectural University

★高知大学 Kochi University 高知県立大学 University of Kochi

★長崎大学 Nagasaki University 長崎県立大学 University of Nagasaki

熊本大学 Kumamoto University 熊本県立大学 Prefectural University of Kumamoto

 全国的に見た大学名は上記のようです。私の住んでいる島根県にも「島根大学」(Shimane University)と「島根県立大学」(University of Shimane)があって、上記同様の英語名問題が観察されますが(全国で4大学★)、島根大学の話によれば、年に数件間違えた照会が入ることがある程度だそうですよ。これはおそらく両大学の学部が全く異なっており、ダブりが見られないことにも起因するのだと推察されます。地名を冠した大学の場合は、英語表記はどうしても似てしまう避けられない問題を抱えているのです。現状でも、大阪経済大学(Osaka University of Economics)、大阪商業大学(Osaka University of Commerce)、大阪体育大学(Osaka University of Health and Sport Sciences)などの私立大学とも混同しそうですね。文科省はあたりさわりのないコメントを発しています。♥♥♥

大阪公立大学の設置を認可するか議論する審議会でも英語の名称は議論の対象にはなる。あくまでも両大学で話し合っていただきたく、経緯を注視したい。双方が納得する形での決着を期待している。

【追記】 大学名に関して、こんな騒動も起こっています。「京都造形芸術大学」が来年の開学30年を前に、今年4月に校名を「京都芸術大学」に変更しました。これに「京都市立芸術大学」が、類似し混乱を招くとして提訴しました。「京都芸術大」や「京都芸大」「京芸」「市芸」は市立芸大の略称として親しまれ定着していると主張し、類似した名称の大学が存在することは、関係者の誤認や混乱を招く、として提訴していました。8月27日、大阪地裁は、「名称は『市立』の有無で明らかに異なり、類似するとはいえない」などとして訴えを棄却、新名称の使用を認めました。しかし、市立芸大側は、郵便物の混同なども起き、混乱が続いているとして、「一審判決は承服しかねる」と控訴を決断しました。この問題はまだまだ続きそうです。♠♠♠

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