総体の思い出

 私は日頃は地元紙の『山陰中央新報』を買うことはないのですが、年に一度だけ、6月の「県総体」明けの月曜日の新聞だけは買うんです。この日の紙面には、県総体学校対抗別得点順位が掲載されるんです。今日6月3日(月)もコンビニで買って紙面を広げてみました。どこにも松江北高の名前はありません。あー、またダメだったか、と失望感だけが漂います。一体どれぐらいの順位だったのだろうと、島根県高体連のHPを開いてみると、こんなことになっていました。何というていたらく!昨年も14位でした。

■男女総合学校別得点
1位  大社    195点
2位  松江南   127点
3位  松江東   122点
4位  松江商業  121.5点
5位  出雲    117点
5位  開星    117点
7位  浜田    111点
8位  松江工業  99点
9位  平田    93点
10位 出雲北陵  83点
11位 出雲西   77点
12位 松江北   76点  ※男子総合16位 女子総合6位
13位 出雲工業  69点
14位 安来    66点
15位 明誠    57点   

 私が現役で勤めていた頃の松江北高は、県総体では常に男女総合優勝を目指し、何回も連覇を重ね、常に上位を占める「文武両道」の学校でした。これにはいろいろと思い出がありますので、振り返ってみたいと思います。

 当時北高では、総体の一週間前になると「総体応援激励週間」と称して、各クラスの終礼が終わると、部活動のない生徒達は、クラスメートたちが活動している体育館・グランド・練習場に出かけて応援をします。こうして本番まで毎日違う部の応援をして、学校全体が総体一色に染まっていくのです。本番前日には、授業を1時間カットして、「総体激励集会」が行われます。県総体に参加する全ての部員が体育館の壇上に上がり、各キャプテンが意気込みを述べます。私が赴任した頃は、どの部もどの部も「○○日に○○会場で○○競技が行われます。練習の成果を十分に発揮して頑張ってきます。応援よろしくお願いします」の繰り返しばかりで全然面白くない!総務部長を務めていた私は、職員会議で「紋切り型の挨拶ではなく、もっと部員の総体にかける思い、意気込み、今までの苦労や辛さを語って全校生にアピールを!」と提案して、そのような形でキャプテンたちが応えてくれ盛り上がって嬉しかったのを覚えています。本番当日の2日間は、全日授業をカットして、学校に居残った生徒たちは全員が市内の各会場に応援に出かけます。全教員もこの週ばかりは仕事を置いて、各会場に足を運びました。全校で一丸となって各部の応援をするのです。そして月曜日になると、新聞紙面には「松江北高総合優勝!」の文字が躍っていたものでした。各部とも優勝するチームは少ないのですが、ベスト4、ベスト8に必ず北高が入っていて、総合すると男女総合優勝していた、という年が多かったと記憶しています。そして明けた月曜日には体育館に朝イチで集まり「総体報告会」が行われ、各キャプテンが試合結果や思いを述べ合います。総合優勝した時には、高体連会長が来られて総合優勝旗の伝達式も行われました。そしてこの日の最後の時間に、3年生は体育館に集合して「さあ総体も終わった!今日から切り替えて受験勉強に打ち込もう!」という「学年集会」を催すのでした。生徒たちはここら辺のメリハリを常に意識していたように思います。

 定年退職して常勤講師として復帰して一人でやった仕事が、この総体の全校応援態勢を計画立案する仕事でした。実に緻密さを必要とする骨の折れる仕事です。1週間前の「応援激励週間」の体制計画、壮行式の計画、報告集会の計画といろいろなものが含まれています。中でも一番大変だったのは、本番当日二日間の全校生徒応援態勢の立案です。これが結構気を遣う大変な仕事なんです。まず居残った全校生徒たちに当日はどこの会場に応援に行きたいか?を第3希望までアンケート調査をして、各会場に振り分けます。500人以上の生徒を競技会場のキャパを勘案しながら、上手に振り分けていきます。それぞれの会場の応援場所や駐輪場地図、集合時間、応援する際の注意事項などを詳細に書き入れて、各生徒たちに連絡をします。当日残って引率・点呼をしていただく先生方の応援計画も作成します。点呼名簿を作るだけでも一苦労です。駐輪場の手配に松江市役所に届けを出しに行ったり、実際にこの目で駐輪場所や応援会場の観覧席を確認に出向いたりして、当日混乱することのないように配慮しました。当日朝生徒から欠席連絡が入ると、会場におられる点呼担当の先生に電話連絡をします。点呼に来ていない生徒がいると連絡が入れば、自宅に確認を入れます。困ったのは自宅も出ている、しかし会場には来ていない、という行方不明の生徒が出た場合です。途中で自転車事故に逢っていた生徒もいました。各会場から解散点呼無事終了の電話が入るとホッと胸をなで下ろしたものです。こうやって総体二日間を無事乗り切って大仕事が終わったものでした。このように総体を学校全体(組織)で応援する態勢が組まれていたのでした。そしてその応援に応えて各部が頑張ってくれました。コロナ禍で数年は全校で応援に出かけることが困難な時期もありました。昨年私が頭にきたのは、本番当日応援に行きたい生徒は行け、残って自習したい者は学校で過ごす、などという中途半端な全校指示が出たことでした。誰もこれに声を上げる者がいない、ということにも失望しました。北高の伝統であった「組織の力」はどこへ行ったんでしょう?私は弱体化の兆しが始まりかけていた現役時代に、職員会議で何度も北高の強みは「組織の力」だということを申し上げてきました。これがなくなってしまいました。伝統として引き継がれてきた「文武両道」は口先ばかりの学校になってしまいました。今年の高校入試では約1クラスが定員割れしています。以前は住所を移してでも(以前の松江市は住んでいる場所で入学する高校が決まっていた)、北高に行きたい中学生が多くいた学校です。淋しいことです。♥♥♥

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