ばけばけ

 来年秋から始まるNHK連続テレビ小説が、松江市ゆかりの文豪・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻、小泉セツ(1868~1932)を主人公とする「ばけばけ」に決まりました。「ばけばけ」は、急速に西洋化が進む明治時代の日本で、「怪談」を愛した小泉セツと八雲の夫婦の物語になるといいます。松江はセツが生まれ育ち、後に外国人教師として赴任した八雲と出会う運命の街。「ばけばけ」のヒロインは、怪談が好きな松江の没落士族の娘で、父の事業が失敗して極貧生活を強いられて育ちます。この世を恨めしいと思い成長した娘が、松江で外国人教師と心を通わせるうち、世界がかけがえのないものに化けていく、という物語になるといいます。2人が松江で過ごした期間は1年余りと短いものの、市内の関係者は「八雲夫妻や松江の魅力を世界に広める機会に」と、口をそろえて喜びと期待を口にしました。NHKでは、島根を主な舞台にした朝ドラは、離ればなれで育った双子の姉妹の絆を描いた「だんだん」(2008年度)、漫画家水木しげるさんの妻・武良布枝さんをモデルにした「ゲゲゲの女房」(2010年度)に続く3作目となります。

 私には、以前のNHK朝ドラ「だんだん」(2008年~2009年)には思い出があります(「だんだん」というのは出雲弁で「ありがとう」の意味です)。双子姉妹三倉茉奈・三倉佳奈さんが出演して大ヒットしたドラマでした。島根と京都で別々に、それぞれ相手の存在を知らずに育った双子のめぐみとのぞみがある日出会い、そして2人は、それぞれ医療と祇園の女将への道を進んでいくという筋書きでした。当時二人はまだ可愛らしいお嬢さんで、人気抜群でしたね。実は、松江市でテレビ・ロケが行われた時に(2008年6月)、NHKから、松江北高にも協力要請が来て、ロケ現場となったんです。当時総務部長を務めていた私は、教頭先生・生徒部長と一緒に、このドラマの撮影に協力をさせていただきました。30人ほどの松江北高生がエキストラとして出演しています。北高校舎への坂道での自転車登校場面の撮影、グランドで戯れる場面の撮影、等々いろいろと思い出はありますが、一番思い出に残っているのは、北高4階の社会科教室(当時)で、担任の先生が通信簿を返却する場面・昼休みの昼食場面の撮影でした。この教室の窓からは、真正面に国宝・松江城を見渡すことのできる絶好の撮影現場でした。北高生エキストラの諸君は、朝早くから登校し(誰一人遅刻する者なく!)、見事に大役をこなし、NHKの関係者からはずいぶんお褒めの言葉をいただきました。私は撮影終了後、「松江東急イン」で行われたドラマ出演者・制作者・関係者の打ち上げにも呼んでいただき、楽しいひとときを過ごしました。余興のジャンケン大会で、勝てば豪華景品がいただけるというイベントでは、1回戦負けでしたが〔笑〕……。懐かしい想い出です。

 夫婦のひ孫で、小泉八雲記念館長の小泉 凡さん(62歳)はこの発表を受け、「大変うれしい気持ちでいっぱい。約40年ぶりに先祖がテレビドラマで描かれる。ドキドキ、ワクワクしている」と声を弾ませました。「セツは没落士族の出身で赤貧の暮らしも経験し、波瀾(はらん)万丈な人生だった。それでも、心が開かれている人だったからこそ、困難に陥るといつも誰かが手を差し伸べてくれた」と語り、「視聴者にはセツの開かれた心と前向きな生き方に触れてほしい」と期待を寄せました。小泉館長はセツとの面識はありませんが、「父いわく、時々会いに行くと、おもちゃをこっそり買ってくれる優しいおばあちゃん」だったと説明。「当時は珍しいリプトンの紅茶を楽しむハイカラな人だった」と明かしました。作品については「2人が歩み寄る姿をドラマとして見てもらい、異文化理解に思いをはせるのと同時に、セツのオープンマインドと前向きな生き方を感じてほしい」と笑顔を見せています。

 教え子の上定昭仁・松江市長も「市民みんなで小泉セツの物語をドラマ化してほしいと要望していた。それが実を結んだのかなあ」と喜びました。また、ドラマ化によって「松江の魅力を観光面でも発信する非常に良い機会になる。市全体で、このプロジェクトを応援していくような機運を高め、ドラマを一つのキーポイントとして今後の観光振興を図っていきたい」と歓迎しました。今年は小泉八雲の没後120年という節目でもあり、イベントなどでさらに盛り上げていきたいとしています。観光効果、経済効果はきっと莫大なものになりそうです。 

 怪談「小豆とぎ橋」ゆかりの普門院(松江市)の谷村常順住職は、「全国のみなさんに八雲を知ってもらう機会になってほしい。境内には八雲が茶の手ほどきを受けたと伝わる茶室もある。訪れた人には八雲の文学と松江のお茶の歴史を味わってほしい」と声を弾ませた。八雲の作品で「月照寺の大亀」として紹介される月照寺の高梨博昭住職も、「大亀が夜な夜な町を 徘徊(はいかい) する話は地元の人には知られているが、ドラマをきっかけに、より多くの人に月照寺や松江の魅力を知ってもらいたい」と期待を込めました。♥♥♥

▲月照寺の大亀

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