物語文は難しい!

 英文自体は物語文のほうが論説文よりも難しいのです。さらには、ここに挙げたような要因も絡み、物語文は難しいのです。

 受験生は「物語文」の読解が大の苦手です。2007年まではセンター試験の第6問が「物語文」でした。当時もこれを苦手とする生徒がずいぶんいました。設問ごとの正答率などを見ても、受験生が苦労していたことが歴然としています。昨年の「共通テストリーディング」の第5問が「伝記」から「物語文」に変わりました。昨年の「第5問」は、ある男子学生が転校先で卓球を始め、先生や兄のアドバイスをきっかけとして、教訓を得て自身の問題を克服するという、ちょっと心温まるいい話でした。大問得点率は61.3%(ベネッセ集計、全国平均はもっと低くなる)でした。また、昨年3年生7月進研模試の第3問の物語文(小説)、今年の7月進研模試の第4問の物語文でも、三年生・浪人生が四苦八苦しています。今年の「共通テスト」本試験の第5問「高校卒業から20年後に3人の友人が再会する物語」は、今までになく長く3頁分もあり、「魔の第5問」と呼ばれるほど大変な分量で受験生を苦しめました。さらには、6つの場面が現在から過去を振り返る形で、あっちへ行ったりこっちへ来たりしており、出来事や時間の流れを把握するのに大変苦労した難問でした。

 「評論文」と比べて、なぜ「物語文」が難しいのか?これにはいくつかの理由があるように感じています。そこら辺を詳しく見てみましょう。

▲2024年2月10日の私の講演資料より


①書き出し部分が分かりにくい。
②話の「流れ」がつめない(→「5W1Hの法則」)。
③時系列で混乱も。話の順番があっちに行ったりこっちに行ったり。
④「セリフ」の正体がつかめない(=誰のセリフ?)
⑤英語は同じ言葉の繰り返しを嫌う。「言い換え」表現が多出。


①書き出し部分が分かりにくい 情景が浮かばない

何を言っているかがよく分からなく、ストーリーに入っていけない。あさってのような書き出しで始まることがあります。いったい何の話だ?どんな視点からストーリーが語られるかを書き出しは語っています。ここはあまり気にせずに、次に読み進みましょう。

②話の「流れ」がつかめない(→5W1Hの法則)

主人公をめぐる一連の出来事がきちんとつかめないと物語の把握は難しいでしょうね。やはり5W1H(Who, When, Where, What, Why, How)に注意を払いながら読み進めるしかなさそうです。

③時系列で混乱も 話の順番があっちに行ったりこっちに行ったり

起こった出来事の順番通りに話しが出て来ないことがよくあります。いわゆる「あっちに行ったりこっちに行ったり」というアレです。提示される出来事の順序と実際に起きた順序が一致しないのです。話の順番を狂わされてしまうと、分かりにくくなるのは当然のことです。過去に行ったかと思うと現在へ、そしてまた過去に逆戻りして、未来へといった時系列で頭の中が混乱してしまうことが多いのです。まさに今年の「共通テスト」の第5問がそれで、分量の多さと共に「魔の第5問」と呼ばれました。そういうことを意識した上で読み進める必要があるのです。

④「セリフ」の正体がつかめない! (=誰のセリフ?)

文中に登場するセリフがいったい誰の発言なのかが分かりにくいことがあります。「省略」もひんぱんに登場します。これが話の展開を読み損ねる原因でもあります。人間関係のややこしい変化や感情の変化を捉えることができなくなってくるのです。

⑤英語は同じ言葉の繰り返しを嫌う 「言い換え」表現が多出

これは読解問題全体に共通して言えることですが、英語は「同語反復」を嫌います。したがって「言い換え」を多用します。特に物語文では感情表現も同じ言葉では出てきません。ここら辺の「言い換え」の雰囲気を過去問等で身につけて体感しておくことが重要です。

 模擬試験を受験して苦労した際に、なぜ物語文が読みづらいのか、あらかじめ生徒にタネ明かしをしておいてやるといいと思います。苦手で悶々としている生徒がいっぱいいますから。センター試験・共通テストの「物語文」の解き方には一つのパターンがあります。私は日頃の授業の中で、このことを徹底的に練習しています。

(1)まず設問文中にある「キーワード」を発見します。キーワードは圧倒的に名詞・動詞その他形容詞・副詞といった内容語です。⇒(2)本文中にそのキーワードが出てくる該当箇所を発見します。全く同じ表現の場合もあれば、「言い換え」られている場合もあります。⇒(3)その近辺に必ず正解のヒントあり!その発見したヒントを選択肢の内容と比較・対照して正解を発見するに至ります(「原文典拠の法則」)。選択肢も本文の巧妙な「言い換え」となっています(「同一内容異表現の法則」)。それともう一つ、1問解いたら、次の設問をチラ見してから本文に戻るといいと思います。次のような点がポイントです。

 ①主人公と周囲の人間関係を把握
 ②出来事・行動の理由の記述は見逃さない
 ③登場人物の思考・感情の表現は設問に直結
 ④場面展開を示す「キーワード」を見逃すな
 ⑤発言(セリフ)の意図を正確につかめ

 今年の「共通テストリーディング」の第5問もそうでしたが、過去のセンター試験の歴史を見ても、「物語文」はそのほとんどが温かみのある「いい話」です(教訓を含む)。ハッピーエンドで終わることが多いようですね。「愛」「友情」「親切」をテーマにしたほのぼのとした物語や「人間の成長」を描いた日常の苦労物語など、ハッピーエンドで終わるいい話が満載です。練習にぜひセンター試験の過去問を利用しましょう。センター試験の第6問や第5問に好材料が転がっていますので、利用するといいと思います。ちなみに私の一番のお気に入りは2000年の第6問です。

 今年の第5問に関して、新たに公表された「問題評価・分析委員会報告書」によれば、「英文自体が体温を感じるものであり、今後もこのような英文が扱われることを期待したい。幅広い読解力を育成する、という意味でも、このような文章を読む機会は受験者に是非持ってもらいたい。」と研究団体が評価したことに対して、問題作成部会は大喜びしています。第5問の「いい話」は2年連続で出題されていますが、間違いなく来年度もこの傾向は続くものと思われます。♥♥♥

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